東鳩王マルマイマー第15話「狙われたMMM(エピローグ)」  投稿者:ARM


【承前】

 超龍姫がアズエルになす術もなく敗れ去ったその頃、Cブロックでは、MMMの武装隊の援護射撃をバックに、しのぶがモスマンたち相手に奮戦していた。

「――超分身殺法!シルバークロス!」

 しのぶが投げ放った、銀色の巨大十字手裏剣が次々とモスマンたちを分断する。シルバークロスの一閃の免れた者たちは、追うように飛びかかってきた翼丸と狼王に次々と切り刻まれていった。

「ミスタがセキュリティシステムの回復を行っている今、ここを落とさせるわけには行きません!――むっ」

 しのぶは、モスマンの群れが突然引いたコトに気付いた。

「どうやらあの女が来たようです。――武装隊の皆さんはお下がり下さい!あの女のスピードは常人では対応できません!――狼王、翼丸、三位一体、霧風丸!」

 しのぶは武装隊を下がらせ、霧風丸にシステムチェンジを行った。最強武装でなければ立ち向かえないあの強敵が現れたのだ。

「…………ふっ、ここにいたか機械人形」

 エディフェルが、通路の向こうからゆっくりと現れてきた。白いセーラー服と紺色のキュロットを着たその身は、凄まじい殺戮を繰り広げてきた証拠に、おびただしい返り血を浴び、凄絶な姿をしていた。

「とりあえず目的のひとつは果たさないとね。――壊れなさい、機械人形」

 にぃ、と笑ってみせたエディフェルが手刀を繰り出す。その先から生じた次元刀の空間断層は霧風丸を目指していた。

「その手は食いません――メルティハウリング!」

 すかさず霧風丸は狼王の頭部が変形した左手を突き出す。その口から発せられたソリタリーウェーブは周囲の空間を構成する量子に干渉し、不可視のさざ波を発生させた。すると、エディフェルの放った次元刀がもたらす空間断層が中和され、対峙する二人のほぼ中間で止まってしまった。

「ほう、やるわね」
「既にあなたの次元刀は見切らせていただきました。同じ手は何度も食いません!」

 そう言って霧風丸は、背中に手を回し、クサナギブレードを引き抜いた。

「『クサナギブレード二刀流回転剣舞・百花繚乱』!!」

 クサナギブレードを両手に持ち、瞬時にメタルコーティングで包んだ身体を回転させて剥離させた超展性ハイメタル粒子の雨をエディフェルに浴びせる。かつてEI−01のコピーを斃したその技で、霧風丸はエディフェルに雪辱戦を挑んできたのである。

「あはははははっ!そうきたか!」

 だがエディフェルは交わすどころか、霧風丸のほうへ突進し始めた。そして両手を上げてそれを胸の前で十字に組んだ。

「次元刀には、こういう使い方がある――見よ!」

 エディフェルは宙でとんぼを切り、組んでいた両腕を一気に振り上げた。すると、その腕の軌道に亀裂が奔り、虚空に巨大な黒い口が開いた。そしてその口は周囲の空気を吸い始め、霧風丸が放った超展性ハイメタル粒子がすべてその中へ吸い込まれてしまったのである。

「これは、亜空間!?」
「あとは、その剣だ!」

 驚く霧風丸の真下に飛び込んでいたエディフェルは、回し蹴りで霧風丸の両手を蹴り、クサナギブレードをはじき飛ばした。

「しまった!」
「もらった――――なにっ!」

 隙をついて霧風丸の胸に拳を放ったエディフェルであったが、霧風丸は咄嗟に分身しそれを交わす。初めてエディフェルと対戦して敗北したその反省は生かされていた。

「やるわねっ!」

 エディフェルは驚くも直ぐに飛び離れた三つの影を追い、頭上を越えた一番大きい影に蹴りを放った。素早い反応にしのぶは交わしきれず、エディフェルの蹴りを受けて吹き飛ばされる。ゆっくり閉ざされた亜空間を背に、しのぶは床に叩き付けられた。

「くっ!」
「まだまだあたしのスピードには叶わないわね。――さて、どう調理してくれようか」
「させません!」

 すぐさましのぶは立ち上がり、破甲手裏剣を引き出して構える。そして超スピードでエディフェルに飛びかかるが、エディフェルは苦もなく交わし、それどころかカウンターでしのぶの背に拳を叩き付け、叩き落とした。

「ぬっおっ!」
「甘い!」

 俯せに倒れたしのぶの背を、エディフェルは思いっきり踏みしめた。アズエルと違ってその背を踏み抜けなかったのは、エディフェルはアズエルほどのパワーを持ち合わせていないためである。しかし背中を踏みつけられ動きを封じられてしまったのには変わりない。

「少しはやるようになったわね。でも、ここまで。――覚悟」
「くっ!」

 しのぶが何とかその場から逃げ出そうとしたその時であった。

「…………しのぶ。貴女らしくないわね」

 その声を聞いて、しのぶは、はっ、とした。聞き覚えのある声であった。

「――まさか」

 しのぶを踏みつけているエディフェルは、声が聞こえてきた方向へ向いた。その向こうにいたモスマンが、次々と粉砕されているコトにようやく気付いた。
 疾風が、通路の中で荒れ狂っていた。狭い通路の中で竜巻が荒れ狂い、次々とモスマンたちを粉砕していたのである。やがてそれが収まると、しのぶたちを苦戦させていたモスマンの群れはせん滅されていた。

「これは…………圧縮空気」

 かつん、と堅いものが床を打つ音が聞こえてきた。

「……ほう、見覚えがあるぞ、その顔」

 エディフェルは、通路の奥から現れた人影を見て感心したふうに言う。

「…………Bブロックも制圧しました。大人しくしなさい、エルクゥの女」

 警告する、腰まである長い黒髪の主は、腕を前で持て余して、エディフェルたちのほうを見た。

「私の名は、風姫。MMM特戦隊に所属する者。エルクゥの女、ここまでです」
「面白い。まだ、こんなヤツが居たとはな」

 そう言ってエディフェルはしのぶの背中から足を放し、風姫のほうに向いた。

「まさか――まさか!」

 しのぶは俯せになったまま、風姫の顔を見て唖然としていた。
 何故ならこの場にいるはずもない人物であったからだ。

「風姫とは、貴女だったのですか――――EI−04、いえ、テキィ」

(画面フェードアウト。ED:「あたらしい予感」が流れ出す)

          第15話 了

【次回予告】

 君たちに最新情報を公開しよう!

 霧風丸の危機に現れたのは、あのEI−04テキィであった!MMMの勇者ロボとして生まれ変わったそのパワーは、雷虎とフュージョンして最強形態、撃獣姫となる!一方、アズエルによってボロボロになった超龍姫を見て笑う観月の本心とは何か?バリアリーフ基地に入ったマルチたちを襲う敵を討つあの白い戦士はまさかっ!?

 東鳩王マルマイマー!ネクスト!

  第16話「その名は撃獣姫」!

 次回も、ファイナル・フュージョン承認!

 勝利の鍵は、これだ!

 「MMM−SPT99・撃獣姫が放つ風虎牙(フォン・フー・ガォ)」
http://www.kt.rim.or.jp/~arm/