バッチ売りの少女 投稿者:ARM
○この創作小説は『こみっくパーティ』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを悪用しています、うhehe

 雪は降るが、あなたは来ない。別に誰も待ってないけど。
 降り積もった雪は、膝にまで達している。これが雪じゃなくって由綺だったらすげーイヤ。
 この寒い雪の降る夜、塚本千紗は、街角でCD−ROMを配っていた。

「こみぱの修正バッチ入りディスクでーす!修正バッチファイルはいかがですかぁ?」

 しかし誰も受け取ろうとしない。

「3MBだぜ?Leafのサイトからダウンロードしたほうが早いよな」
「それに週刊ペースで最新の修正バッチが出るジャン。様子見様子見」
「だいたい、修正バッチ売るなよ(笑)」
「お、お嬢ちゃん、いくら?」

 最後のヤツはCDROMが目当てではなかったので琴音ちんにお願いして滅殺。

「ふにゃああああ……!一枚も売れない……これではおうちに帰れないですぅ……」

 千紗の家には、怖い継母が居ました。

「――HAHAHA!まいガール千紗!全部売ってこないと家には入れないデス!」

 どこから見ても久品仏大志だが、何となく似ている女性と思いねぇ。千紗は継母にいじめられ、無理難題を命じたのです。

「……どうすればいいのでしょう……寒っ」

 途方に暮れている千紗に、冬の雪風が容赦なく千紗を見舞う。愛用のにゃんまげスーツがあれば何とかしのげたモノを、それすら取り上げられてエプロン着で冬の街角に立たされていたのです。

「……段々、寒くなってくる……こんな時は、身体が暖まる…………ギャグを。えーと、お得意さまの千堂和樹さんが、こんなコトもあろうかと用意してくれたネタ帳が懐にあったっけ…………」


『隣の家に囲いが出来たってね』
『そう?』


 途端に風雪の勢いが増しました。冬の神を怒らせてしまったようです。それ以前に千紗の心の中もサムくなりました。生きて帰れたら絶対殺してやると決意したのもその時です。

「うううっ(泣)そ、そうだ、もうひとつ、昨日、お客さんの長谷部彩さんが印刷をお願いしてきたのが」

 そこで取り出した彩の本。地味な話のうえに、登場人物が次々と死んでいくとてつもなくダークな内容の本であった。終わりのほうで和樹がつまんないギャグ漫画を寄稿していたのが致命的だった。千紗のHP、激減。

「……まだ死んでいないけど天国のお父様、千紗、もうダメです…………千堂和樹というバカの所為で心の底まで冷え冷えですぅぅぅぅぅ…………?」

 街灯の光を受けて、手にしていたCDROMがきらりと光ったのは、そんな時であった。

「…………CDROMって、『焼く』ってゆいますよね、そういえば。…………そうだ、焼けるなら、コレに火を点け暖まろう」

 そういって千紗は、以前ニュー新橋ビル地下のゲーセンでゲットした、Leafおよびアクアプラスの(C)が入っていない非常にヤバイ代物である「マルチライター」を取り出し、持っていたCDROMに火をつけた。

 良い子のみんなは、CDROMに火をつけると有害なガスが出るから止めようね。

 千紗、毒ガス攻撃でさらにHP激減。マザー2のシリンダーHPでゆうところの、あと1Pなくしたら戦闘不能状態のソレであった。

「…………うにぁぁぁぁぁぁぁぁ。も、もうダメですぅぅぅぅ」

 俯せになって倒れている千紗の上に、無情な白さが降り積もる。
 白さは、じわじわと千紗の体温を奪っていく。
 千紗は、もうどうでも良くなって来ました。
 そんな時でした。

「むぎゅう」

 和樹がその場を通りかかり、千紗の背中を踏みしめたのです。千紗のHPシリンダー、今ので微妙に動き始める。

「むぎゅう」
「あ。千紗ちゃん」
「千紗ちゃんじゃねぇだろコラ。何度も踏みやがって」

 相手が和樹だと知り、千紗、怒りゲージ上昇。Leafキャラ特有の脳内セイカクハンテンダケ液の分泌により人格も変貌し、その甲斐あってHP少し回復。

「いや、俺、千紗ちゃんのコト探していたんだ」
「探していた……?」
「バッチファイル売っている、って聞いてさ。こみパどうしてもやりたくなったんだけど、自作機で相性の悪いミツミ製CDROMドライブ使っているから、どうしても修正バッチが必要なんだけど、俺、インターネットに繋げるコトできないし」
「……それは有り難いんですが、でも、ユーザー登録すればLeafから修正ディスク送って貰えるはずじゃ」

 不思議がる千紗に、和樹は苦笑しながら

「いや、さ、俺のCDROM、久品仏から借りて焼いたヤツだから」

 次の瞬間、千紗はCDROMを入れていたカゴの中に隠していたチャクラムを握りしめ、和樹の喉笛をかっ斬る。

「修正してやるっ!」

 和樹、絶命。良い子はちゃんと、製品版を買おうね。

                ちゃんちゃん

「余録」

 和樹への怒りを糧に何とか全部売り切って見せた翌日。

「まいガール千紗、また修正版が出たから、じゃんじゃん売ってくるのダ!」

 そういって久品仏似の継母が差し出したのは、クイックディスク。

「どこに3MBも記録できるだコレに、っていうかどこから見つけてきたこんなに?」
「根性と気合いさえあれば何でも出来るっ!」

千紗「とりあえず、「ざなっく」とか「ゆめこうじょう」って書いて売ってみたら即完売でした(笑)」

                おわりだおわり。
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