What’s マルチュウ?18 投稿者:ARM(1475)
○この創作小説は『ToHeart』『痕』『雫』『WhiteAlbum』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを使用しており、決して世界的に有名な某ひげオヤジを世に送った京都の某カルタ屋の携帯ゲーム機の某ゲームの国民的電気ネズミ様(笑)のパロディばかりではありませんというか毛頭もないので要注意。(笑)

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「 What’s マルチュウ?18」

 ===だいピンチ!?さいきょうのてき、あらわる!===


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【承前】

 またもや、久しぶりのマルチュウ。
 もはや季刊ペースと化したこの話に、決着はつくのか?

「そりゃあ、いくら現実逃避度が高くても、描く気力がなきゃあねぇ(笑)」

 なんかゆうたか、浩之。

「いや、べつに」
「ご主人様、誰と話しておられるんです?」

 ピカチュウ仕様のマルチこと、マルチュウが、独りでぶつぶつ言っている浩之に不思議そうに訊いた。

「毒電波の受信でしょう?」
「ちがう」

 浜辺で日光浴を楽しんでいた綾香が、意地悪そうに訊いた。ふてくされる浩之は、めいめい海水浴を楽しんでいる葵たちを見て、ふう、と溜息を吐いた。

「似合っているわよ、その格好」

 と綾が意地悪そうに笑って指すのは、浩之のハッピ姿である。襟には白糸の刺繍で、「鶴来屋」と書かれていた。

「うっさいなぁ。それもこれも、ビンボが悪いんじゃ。……なのに、来栖川のお嬢様たちは、お友達を連れて鶴来屋へ旅行ですか、ふーん」
「ご主人様、そろそろこのお仕事に戻りましょうよ」

 マルチュウも、浩之とお揃いのハッピを着て、アイスキャンディを売っていた。

「浩之さん、そろそろ休憩にしましょう!」

 遠くから、お揃いのハッピを着て同じように、アイスキャンディの売り子のバイトをしていた初音が、浩之たちに声をかけてきた。旅の資金稼ぎにと、浩之とマルチュウは、リーフ団との抗争で知り合ったカシワギジムの会長、柏木千鶴の紹介で、隆山海岸にあるカシワギジムの傘下企業である旅館・鶴来屋所有のビーチでアイスキャンディ売りのバイトをしていたのだ。
 浩之が汗水流して働いているそこへ、来栖川姉妹が、葵と琴音と理緒、そして正気を取り戻した智子とレミィ(智子のおまけとして観月マナもついてきた)を連れて、鶴来屋に仲直り記念で慰安旅行にやってきた。綾香たちが遊んでいるのを見て、浩之は朝から機嫌が非常に悪く、マルチュウはびくびくしていた。

「くそう。リーフ団が壊滅したからと言って怠惰に平和を満喫しやがって。そもそもだなぁ、リーフ団を倒したのは」
「ダークリーフ団のほわるば死鬼隊だよねー」
「うるさい、そこのガキ」

 突っ込んで、浩之にガキ呼ばわりされたマナが、むっとなった。

「ガァキィ?あんたより年上になんて態度すんのよ!足蹴り喰らわすぞ、こら」
「上等だ!」
「あによぉ!」

 たちまちにらみ合いになるが、それを智子とレミィが慌てて止めた。

「まあまあまあ、ヒロユキ、落ち着いて。笑う角には福来たるネ」
「マナもいちいち気にせんといてや」
「だって、智子姉さん〜〜」

 智子を姉呼ばわりしているが、しかしマナの方が年上である。リーフ団が壊滅しても力関係はそのままらしい。ダークリーフ団の洗脳によって凶暴化していた智子とレミィであったが、浩之たちの活躍によって正気を取り戻し、すっかり浩之たちの仲間になっていた。特にレミィは浩之にナニされたショックで正気を取り戻した所為で、すっかり浩之の恋人気取りでいる。それが面白くなくて、綾香と芹香が浩之に意地悪しようと、バイト先へ遊びに来たのだ。

「……ちっ。まーいい。こっちは仕事で忙しいから、いちいち喧嘩なんかしていらんねぇしな」

 浩之のほうが先に折れ、お姉さんぶろうとして先を越されたマナは余計にむかついていたが、宥めすかす智子に渋々従い、憮然とする浩之にあかんべえのみで済ませた。

「……やれやれ。それにしても、平和やね」

 腕を持て余し、どこか嬉しそうに溜息を吐いて微笑む智子に、浩之は、まぁな、と答えた。

「あれから大夫経つけど、ダークリーフ団、ちっとも動こうとしないし。初めは警戒していたけど、こんな調子だから、みんなすっかり安心しきっちゃっているな。まぁ、油断大敵というが」
「ところで、ダークリーフ団のほわるば死鬼隊のコトだけど……」
「なに、マナ?」
「あれだけ派手に暴れたワリに、あたしたち、結局奴らのことはナニも知らないのよね」
「言われてみればそうだな。奴らのことは、洗脳されていた二人の口から出ただけで、俺たちはさっぱり正体を知らないんだよな」
「〈びっくりーふ〉様も行方知れずになってしまったし……ううっ」
「ほら、マナ、泣かんといてや。あの方なら大丈夫。きっと無事や。あの方には十傑衆最強の戦士〈びっくりーふに近い男〉がついとるハズや」
「でもでも!あんな正体不明なおひとの力を本当に信じて大丈夫なんでしょうか?」
「正体不明の、最強の男?なんだいその矛盾したやろーは」

 浩之が訊くと、智子たちは肩を竦めて見せた。

「リーフ団のリーダー、〈びっくりーふ〉様が絶大な信頼を抱いているお方や。陰に隠れて〈びっくりーふ〉様をお守りしていると聞いているんやけどな、うちら他の十傑衆はその正体すら見たことがない、まったく謎の人や」
「ふぅん。そうか、なら、そう言うヤツを味方に付けられれば、来るべきダークリーフ団との戦いも楽になりそうだな」
「でも、噂じゃ根無し草の風来坊やゆうしなぁ」
「だいたい、本当にいるのかどうか判らないヨ。そんなヒトのチカラはアテにしないで、ヒロユキに任せればいいヨ!」
「おいおい、そんなに過剰に期待したってなににも出ないぜ」

 浩之がそう言うと、レミィは、ぽっ、と赤面して浩之に頬ずりし、

「……ノープロブレム。……トゥナイ、オールナイトでアタシを可愛がってくれればいいネ」

 途端に浩之、鼻血ダラダラ。
 その向こうでは、缶ジュースを飲んでいた綾香が、その声を聞いて、怒り心頭で缶を握り潰していた。芹香に至っては、どこからか取り出したわら人形を釘で打ち付ける場所を探し始めた。葵と琴音、理緒はそんなコトにも気付かず、砂浜で楽しそうに砂の城づくりに没頭していた。
 そんな、緩みきった空気が浜辺に拡がっていたその時であった。
 突然、海の方から巨大な波が押し寄せてきたのである。

「うわぁっ!なんだあの非常識に高い波わ!」
「高さはざっと57メートル!まずい、どこかに隕石でも落ちたの!?ああっ、こっちくる!」
「でも、へんやね」
「な、なにが!」

 蒼白して逃げ出そうとする綾香たちが訊くと、智子は、浜辺に落ち寄せる穏やかな波を指し、

「聞いたコトない?それともディープインパクトの津波シーンを憶えとらへん?巨大津波だったら、いっせいに水が沖の方へ引くで――つまり、こういうことや」

 そう言うと智子は、足許に転がっていたサザエの貝殻を掴み、それを沖の方へ勢い良く蹴る。

「おおっ、流石は魔脚の女一号、音速を超えている」

 サザエの貝殻はドリルのように高速回転しながら、迫り来る津波に突進していく。すると貝殻は、そこに津波などなかったかのように、すうっ、と津波を通り抜け、そのまま向こう側まで勢いを落とすことなく飛んでいってしまった。

「――これは、幻覚や」
「なるほど。でもどうして気付いた?」

 浩之が不思議そうに訊くと、智子は眼鏡を外した。

「メガネ外しても、見えたからな」
「――お見事!」

 感嘆の声は、津波とは反対側の、鶴来屋がある陸側から聞こえた。浩之たちは慌てて振り返ると、そこにはなんと、スクール水着にベストを羽織った、ショートカットのボーイッシュな少女が、にやり、と不敵そうな笑みを浮かべて立っていた。

「誰だ!」
「初めまして。――私の名は、河島はるか。またの名を、あななたちが言う、ほわるば死鬼隊の一人、〈ナイトメアのはるか〉。――お久しぶりね、〈過激なる委員長〉と〈ピクシィレミィ〉」

 はるかがそう言った途端、智子とレミィが、あっ、と言ってから、ああっ!!とはるかを指して仰天した。

「あ、あんたは!」
「アタシたちに催眠術を仕掛けた貧乳の女!!」
「……うるさいわね。一言よけいよ」

 はるかのこめかみに怒りの四つ角が浮かんだ。

「私の仕掛けた催眠術が解かれたと訊いて、ピカチュウ使いがなかなかの強敵と思い、今まで手を出さなかったんだけど、こうしてみるとアホづらしているわね」

 そういってはるかは浩之を指し、あはは、と高笑いする。ゲームとは全くキャラが違う笑い方ではあるが、気にしない気にしない(笑)
 笑われた浩之だったが、アホヅラ呼ばわりにはもうなれているのか、ほっといてくれ、と憮然とするのみであった。

「どうしてこんなアホ、いままで相手にするのを止めていたのかしら――いえ、そんなコトはもう気にしなくて良いんだっけ。ピカチュウ使いの藤田浩之!お前にはダークリーフ団総帥、〈ぱわーすのー〉様から抹殺命令が下った!覚悟することね!」
「あとにしてくれあとに。バイトが忙しいんだから」
「あらそうだったの?それはまた失礼………………………………おい」
「ちぃ」
「ボケるあたり、ゲーム中のキャラクター通りネ」
「外野は黙っていなさい!藤田浩之、勝負よ!」
「待ちぃ」

 そういって智子か、はるかのほうへ一歩前に出た。そして白ビキニの肩紐に手をかけると、それを一気に引き剥がした。
 浩之がその後ろで、おおっ!と喜悦の声を上げたが、それは直ぐに落胆に変わった。いったいどこをどうすればそうなるのか、ビキニのブラを外したハズの智子は、PS版でお披露目になった私服姿の超美女モードの格好へ変わっていた。

「前の借り、返さんで黙っていられると思ってか?藤田君はバイトが忙しいンや、うちが相手したる!」
「おもしろい。〈ピクシィミサ〉はどうする?」
「NO。リーフ団の幹部は、サシで勝負する。一人一殺が鉄則ネ」

 そういうわけで、智子VSはるかの勝負が始まった。

「ふふふっ。負けたらまた、洗脳して上げる」
「うざったいコトゆぅんやないで。返り討ちにしたるわ」

 相手の出方を見て、二人はまずは舌戦から始めた。
 そんな二人を見て、浩之は、ふぅむ、と不思議そうに小首を傾げた。

「……どうしたんですか、ご主人様」
「本当なら、ボケとツッコミで良いコンビなんだろうけど…………なんかさ、同じ色のオーラを発していない?」
「同じオーラ?」

 マルチュウがきょとんとすると、浩之は、うんうん、と唸り、やがて、ああっ、と何かを思いだした。

「そう言うことか。……よし、一寸試してみるか」

 そう言って浩之は両手を口元に寄せ、大声でこう叫んだ。

「お風呂で!」
「「ハッスルっ!!」」

 智子とはるかが同時に答えると、浩之を除く全員が一斉にこけた。
 全員がこけたショックで砂塵が舞い上がる中、つい応えてしまった智子とはるかが思わず顔に手を当て、赤面して恥じらう。
 やがて、智子とはるかは、お互いの顔をちらちらと伺い見る。

「……そう……なの?」
「……あんたも?」

 はるかがこくん、と頷くと、智子もこくん、と追うように頷いた。
 いつしか、どちらからともなく二人の手が前に伸び、同志よ、と握手し始めた。

「引き分けってとこかな、あはは」
「ご主人様ぁぁぁ」
「いーじゃん、平和的解決で――」

 浩之が愉快そうに笑い出した途端、突然にわかに青空が雲に覆われ、巨大な稲妻が鶴来屋の避雷針に落ちた。

「な、何よ、この不自然すぎる天候の急変は!」

 水着姿の綾香は慌てて、近くのテーブルに置いていたジャケットを掴みとって袖を通した。

『…………〈ナイトメアのはるか〉よ、何をぶざまなコトをしている?』
「――こ、この声はまさか、〈ぱわーすのー〉様ぁっ?!」

 天空より轟く若い女の声に、浩之たちは騒然となった。

「こ、この声が、〈ぱわーすのー〉の?!――あっ!」

 再び天空より稲妻が落ちる。

「危ない!」
「な、なにするんや――うわっ!」

 慌ててはるかが智子を突き飛ばす。突然のコトに目を白黒させる智子の目の前で、落雷の直撃を受けてショートのアフロヘアーとゆうかパンチパーマになってしまったはるがが黒い煙を吐いてその場に倒れてしまった。

「はるかっ!」
『……………幻影術を使うその才を買って登用したが、所詮は貧乳保護地帯に生きる貧乳娘、豊乳ゆえに冷遇された辛さを知らぬからこんな詰めの甘さが出てくるのだ』
「ゆ、ゆうか、貴様!――な、なんだ!?」

 仰いで怒鳴っていた智子は、ふと、さきほどはるかが現れたその場に、三人の人影が並んで立っているコトに気付いた。追って浩之たちもそちらのほうへ振り向いた。

「あんたらは!?」

 すると、右側に居た、ワンレンの黒髪の陰気そうな、三人の中で一番年上らしい女が一歩前に出た。

「――いや、あんたはまさか?」
「お久しぶりね、〈過激なる委員長〉、〈ピクシィレミィ〉」
「〈冬の弥生〉、〈月琴の理奈〉、そして〈シスター美咲〉!十傑衆のあんたらが――」

 唖然となる智子たちのほうへ、〈シスター美咲〉と呼ばれた、三人の中で一番穏やかそうな表情の女性が一歩前進した。

「そろそろ気付いて良くて?」
「ま、まさか――アナタたち?!」

 唖然となるレミィ。そんな表情を見て面白いのか、くすくすと笑いながら〈月琴の理奈〉が最後に一歩進んだ。

「「「――それは仮の名!本当の名は〈冬の弥生〉!〈歌姫理奈〉!〈クイン美咲〉!あたしたちが革命組織、ダークリーフ団最強の戦士、ほわるば死鬼隊よ!!!」」」

 三人が声をそろえてそう言った途端、三人の背後に一本ずつ、落雷が生じて爆発した。

「「「ダークリーフ団の世界征服の障害となる、藤田浩之!貴様を抹殺する!!!」」」
「……いま、バイト中だからあとにしてくれ、あとに」
「「「……あらそうだったの?それはまた失礼………………………………おい」」」

 ベタネタの基本は繰り返し(笑)。
 それはそれとして、ついに出現した最強の敵、ほわるば死鬼隊!果たして浩之とマルチュウは勝てるのであろうか?

「ってゆうか、ご主人様、この続き、いつやるんでしょうかね」
「しー、黙っていればそのうちみんな忘れる」

 …………おいおい(^_^;

            つづくんだってば(≧▽≦)HAHAHA!!

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