It’s5「デジャ・ヴューの世界」 投稿者:ARM(1475)
○この創作小説は『ToHeart』及び『コミックパーティ(仮)』(Leaf製品・一部未発売(笑))』の設定及びキャラクターを悪用しています(爆)。
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   It’s 5


   「デジャ・ヴューの世界」



            作:ARM








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「おねがいしまーす!どうぞ読んでくださーい!」

 あかりと登校してきた浩之が、校門前で登校して来た生徒たちに何かを配っている、同窓生の少女に気付いたのは、突き抜けるように青い秋空にまで届く、彼女のその爽やかな声の所為だった。

「よろしくお願いします!」
「んあ?」

 校門横をすり抜けたとき、浩之はその少女――松原葵からチラシらしき紙切れを受け取った。

「何かの勧誘をしているみたいだけど――なに?」

 不審がるあかりは浩之に訊いた。浩之はいったい何が書かれているのかと、その紙切れを凝視した。



『マつばラあヲイと宇宙的存在(ヴァシャール)とのラブラブ交換ぽえみぃ(はぁと)』



「おねがいしまーすっ!私の詩集、読んで下さい!」

 葵から受け取った紙切れを無言で睨み付けたまま顔面に縦線が入る浩之とあかりの背に、葵の爽やかな声が届いた。
 浩之は一呼吸おき、

「――――カツサンドっ!カツサンドを喚べぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっ!!!」

And Now……For Something Completely Different.

☆ここで「自由の鐘」の曲が流れ、サイケなOPが続く。締めは、画面中央にあるくまの頭が、画面上から出てきた、セイカクハンテンダケを食したヤンキー初音の素足に踏みつぶされる。

「スペース・ToHeart」

 些細な誤解からあかりを泣かせてしまった浩之。
 泣かせてしまった理由は簡単だった。
 自分が、子供だったからだ。
 「妹」から「大切なひと」へ。
 変わってしまったのだ。――いや、それはもうとっくに気付いていたコトだった。
 そのコトに気付いてしまった浩之は、いてもたってもいられず、あかりを捜し求めた。
 かけずり回った。泣きたい気分で街中をかけずり回った。
 そして、何となくだが、浩之は、あかりが居る場所に思い当たった。
 そこは約束の地。
 あかりが浩之に一生ついていくと決めた場所。
 浩之があかりのために戻ってきた場所。

 子供の頃に既に、浩之は、そこへ忘れ物を取りに戻ったハズだった。
 もっと早いうちにそのコトに気付けば、二人してこんな哀しい想いはしなかったのに。

 あかりはやっぱりそこにいた。
 浩之は、長い間忘れていたモノをようやく見つけられた気がした。

 あかりの、笑顔。自分だけに向けられる、あの笑顔。

「俺……やっぱりお前のコト、好きだからな」

 浩之に告白され、あかりは見る見るうちに赤面する。

「……やっと言えた。待たせちゃって、悪ぃ」
「ううん。――わたしも好き。ずうっと好きだったよ。世界で一番好きだよ」

 そういうと、あかりは浩之の胸に飛び込み、不意をつくように浩之の唇に自分の唇を重ねた。

 永いキス。誰かに見られてもいい。好きだから。

 やがて唇は離れ、夕映えの中で気まずそうな沈黙が続いた。

(やった――っ!やったやったやったぁぁ!)

 浩之、心の中で思わずガッツポーズ。

(いょォおし、浩之ちゃんゲット!メガネの入る余地なしっ!)

 何故そこであかりが智子のコトを意識したのかは謎である。


「最終話・すぺーすToHeart」

 あたしの名は志保。右手にゴルディオン・マイクを持つ宇宙海賊兼宇宙一のすーぷぅわぁそんがーだっ!!(声:樋口智恵子)決してマルコじゃないわよっ!
 そして隣にいるのは、あたしの相棒、アーマロイドメイド、略してマルチ(謎)。名前の通り、スットコドッコイのメカでロボな機械仕掛けのメイドロボットだっ!
 今日もあたしたちは、うつけ者の浩之を出し抜いたり、Hだけしか取り柄がなかったためにその存在が抹消されてしまったはしもっち(仮名)に狙われたりと、涙あり笑いありの女だけど男のロマンよ!!

「……くっくっくっ。ついに見つけたぞ、志保っ!」

 ヤヤッ?!なにヤツ?!
 あたしが声が聞こえた方向へ振り向くと、そこにはなんと、あたしの宿敵が立っていた!
 あんたは我が宿命のライバル、クリスタル久品仏大志!何しに!?

「……ARMはん。また自分でスカイ?」
「えーのえーの。It’sの主役はもうアンタに決定したンやさかい。ちょっとでも出ンと忘れ去れるでぇ」
「……別に無理に出さなくても……」

 事あるゴトにあたしの命を狙う、クリスタル久品仏大志!変な役をもらってささくれだっているが、その○ん○んまでクリスタルなみに輝く身体はまだ現役の証だ!!

「……って、全身に金粉塗られてるだけで…………その……皮膚呼吸が……出来ないんですけど(むせび泣き)」

 ――――バタンQ。そうこうしているうちに、クリスタル久品仏が倒れてしまった。ああっ、ライバルよ、このまま星になってしまうのかっ!

 ――――とゆうわけで、なんだかよくわかンないうちにクリスタル久品仏大志を撃退したあたしたち!だが油断はするなっ!他にも色々敵は多かったと思うし、手広く仕事しているとゴールデンウィーク進行はどんなところから依頼が来るか判らないんだから!負けるなARMもとい志保!殖装せよ長岡志保っ!!


「――――とゆうよーな夢を見たんだけど…………その……ね」
「お母さんッ!ゆ、ゆめって、何の関係があるの?!!いつ頃からそこで撮ってたのよっ?!」

 激高するあかりは、公園の木陰で買い物かごをぶら下げ、かごの中からおもむろに取り出したインスタントカメラのチェキで二人のラブシーンをパシャパシャ撮りまくって興奮していたあかりママに気づき、周囲の目など気にもせず実の母親を怒鳴りつけていた。

「ねっ、ねっ、こんな事もあったじゃない。千年前のハスの種が咲いたって」
「何の関係があるぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっっ!!!!」

 すっかりキレたあかりを端から呆然と見ているばかりの浩之は、この二人のやりとりを見て肩を竦めた。
 やがて分が悪くなってきたあかりママ、白々しくその場に泣き崩れてしまった。

「……いやですよ、お母さんは。わたしはこんなふうに育てた覚えはないのに……!おもらしばっかしていた子供の頃の純真さはどこへ行ったのよ、よよよよ」
「な――――おかあさんっ!!」

 あかりが堪らず怒鳴ったその時であった。

「「「ナニッ!!?お・も・ら・し・となぁっ?!」」」

 べべーん。三度、けったいな擬音が公園内に轟いた。
 同時に、浩之たちの顔が一瞬にして蒼白した。

「「「おもらしの時に、スペインふきふき宗教裁判っ!!!」」」
「「ああっ!いつの間に地球に戻ってきたんだおまえらっ!?(汗)」」←It’s4参照

 慄然となる浩之たちは、颯爽と赤いマントと鍔広帽をひるがえして公園内に乱入してきた長瀬アミーゴスの姿を見て慄然となった。

「わはははははっ!ワシらの辞書に不可能の文字はない!!」
「「落丁で載らなかっただけなんだがな」」

 自信満々に言うセバスの後ろで、教師長瀬と長瀬主任が、どこかの常春の国の国王みたいな言い訳を、小声で呟いていた。

「それはそれとしてっ!『ふきふき』だとぉっ!!そのリーフワールドでもっとも大切な役目、何故ワシらにあたえんのじゃあああああっっっっっっっ!!!」

 そういって長瀬アミーゴスは神岸親子に飛びついた。

「「「罰として『拷問ふきふき』っ!!告白せよっ!!!告白せよっ!!!告白せよぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっつつつつ!!!」」」
「「きゃあああああああああああっっっっっっっっっっっっっつつつつ!!」」

 数秒後。

 公園の木の上に、ボロボロになった長瀬アミーゴスがあった。

「…………つ、強ぇ」

 唖然となる浩之の視界には、平然とした顔で、手についたホコリを叩いて払う神岸親子の姿があった。

 そんな神岸親子を、公園の外から見つめていた謎の二人が居た。果たして、何者なのかっ!

      解答はCMの後(RED嘘)

Q:長瀬アミーゴスを(以下中略)犬が(中略)志保が鎖ガマを握り(嘘)わわわわわ、わた、わたし、ひ、ひひひひひひ、ぴぴぴぴぴぴぴ……ピカチュウ!(音声混線)ちりちりちりちりちり(以下略)

A:ただの通りすがりの、町屋在住の佐竹老人夫婦。

「…………まてい。そないなオトしかたでゆるされるとおもうんかあんた」
「浩之ちゃん、どこ向いて突っ込んでいるの?カメラはこっち、こっち」
「あ、そう(汗)」

 てなわけで視線を神岸親子に戻した浩之。同時に、長瀬アミーゴスを一瞬にして屠りさったあの超絶すぎる戦闘能力を思い出して慄然となった。
 葉っぱワールドで今密かに<天然>と噂されるあかりママ。天才を越えるその実力の片鱗を浩之は垣間見たのだが、それ以上に、あのセバスを一撃で撃破したあかりの実力。気の所為か、一瞬、その背中に

「犬」

 という漢字が浩之には見えた。

「…………やるわね、あかり。流石、あたしの娘」
「…………っておだててもダメです、お母さん。あたしのプライベートに立ち入らないでよ!」
「あらやだよ、あかりったら」

 そういってあかりママは口元に右手を寄せ、左手を振った。ぞくにいう、おばさん笑いである。PC版のあかりファンにとって、このポーズをとるあかりのCGは今すぐにでも封印したい、悪夢の光景のひとつである。

「――――――!?」

 それを見た瞬間、浩之は、凄まじいデジャヴューに見舞われた。

「……浩之ちゃん。なんか、怖い顔している」
「…………い、いや、…………い、今の、どこかで…………」

 あかりが不安そうに浩之の顔をのぞき見る。心配そうな顔をするあかりに気づいた浩之は、なんでもない、と笑って応えた。

「あ、浩之ちゃん、社会の窓が開いているよ」
「――――ぶっ!!」

 あかりママに指摘され、浩之は狼狽しながらズボンを確かめた。
 しかし、ズボンのチャックは仕舞ったままであった。あかりとのキスで少し興奮していたので、気まずいモノが顔を出していないかと浩之は冷や汗をかいた。

「驚いた?でも気が紛れたでしょう?」

 そう言ってあかりママは、もはや21世紀を迎える人類としてやってはならないこっぱなポーズ、なーんちゃって、をかました。これをあかりがポーズするとPC版からのあか(以下略)
 それを見た浩之、再び、凄まじいデジャヴューに見舞われる。

「…………あううう…………ぜ、絶対、俺、見たコトがあるっ!」
「?どうしたの、浩之ちゃん?」

 また心配そうな顔をするあかりを余所に、浩之は腕を持て余して唸りだした。

「浩之ちゃん、溜まっているなら、スる?」
「――って、おいっ――?!」

 あかりが突然下品な事を言い出したので、浩之は吹き出し、あかりのほうを見て怒鳴った。
 ところが、今の発言は、目を丸めて赤面するあかりの背後から、あかりの声色を使っていたあかりママのモノであった。

「…………あ?バレちゃった?」
「…………おーかーあーさーんんんんんんんん!!!!」

 閃光。その中心に、再び「犬」、いや、今度は「戌」の文字が。文字が複雑になった分、先ほどより戦闘力がパワーアップしているらしい。地面に巨大なクレーターが出現したが、あかりママはすべてレジストして無傷だった。

「……もう容赦しないわよっ!」
「甘い甘い。<天然>に勝てると思って?おーほっほっほっほっ!」

 高らかに笑うあかりママ。声や容姿が区別付けづらいほどそっくりなだけに、高慢ちきなあかりを想起させる。浩之はこんな笑い方をされると良く戸惑ったモノだ。

「……本当、そっくり…………そっくり――――――?!」

 浩之の中で、何かが弾けた。

「――――あかりっ!」
「え?ええっ?!」
「おばさん笑いのポーズ!さっきあかりママがやったポーズ!やってみせろ!」
「え?……な、なんで?」
「いいからっ!!」
「う…………ううっ、イヤだよぉ」

 あかりは不承不承ポーズをとる。嫌がっているだけあって、どこかぎこちない。

「次!なーんちゃっておじさんの真似っ!」
「え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ゛!!??そ、それだけは…………」
「良いからやれ」
「うぇぇぇぇぇぇん……!ひ、人として、そればかりは勘弁して…………」
「ダメ」
「びぃぃええええええええんんんんんんんん!!」

 あかりは泣きながら、なーんちゃってポーズを取ろうとした。その動きが一瞬止まると、突然あかりはあかりママのほうを向いて、

「そのチェキで撮ったら――コ・ロ・ス」

 あかりに睨まれて、シャッターチャンスを狙っていたあかりママは冷や汗をかいて萎縮した。

「覚悟完了――なーんちゃって」

 嫌がっていた割に、けっこうあかりは楽しそうにポージングした。
 それを見た浩之は、うん、と頷き、

「――違う」
「「へ?」」

 きょとんとなる神岸親子の顔先を、浩之の右人差し指が指した。

「――謎は解けた」
「「謎?」」
「そう!――あかりのお母さん!あなた、神岸あかりに化けてプレイステーション版に出ていましたねっ!」

 と不敵な笑みを浮かべて言い切ったのは、いつの間にか浩之の前に立っていた久品仏大志であった。

「て、手前ぇっ!どこから現れたっ?!(汗)」
「良いじゃないですか、「It’s」シリーズの主役はボクなんですから。それはそれとして、今まで見させてもらいました。藤田先輩の推理通りですよ。プレステ版のあかり先輩には、不審な行動がありすぎました。その歳で、おばさん臭い笑いはするわ、なーんちゃってポーズはとるわ」
「……なーんちゃって……って……結構……気持ちいいよ」

 俯いて赤面し、ぼそり、呟くあかりを無視して久品仏の推理が続く。

「しかし、今の通り、我々が知るあかり先輩なら、一連のポーズには抵抗感を抱いています。にもかかわらず、プレステ版のあかり先輩は、あんな、二周り半して第3次やっちゃいけない期に入っているギャグ((C)目黒三吉)を平気でこなしてしまう。おかげでPC版からのあかり先輩のファンが、その変貌ぶりにいったい何人が枕を泣き濡らしたことか――つまり、あれはあかり先輩を陥れようとする非友好的立場の人間の仕業であると考えるべきでしょう」
「「……非友好的立場?」」
「ええ。そして現状から推測するに――あかりママがその筆頭容疑者」

 驚く浩之とあかり。二人は慌ててあかりママの顔を見た。

「……ふふふ。バレちゃ仕方がないわねぇ。見事な推理ね久品仏くん。流石期待のルーキー」
「「誰が期待しているんだ、誰が」」

 浩之とあかりが突っ込むが、無論、不敵な笑みを浮かべて睨み合う二人とも聞いちゃいない。

「動機は?」

 久品仏が聞くと、あかりママは、ふふっ、と妖艶な笑みを浮かべ、

「……わたしね。浩之を愛しているの」

 べべーん。あかりママの告白に、浩之とあかりの目が思わず点になる。

「…………わたし、あかりよりもずうっと昔から、――あかりが生まれる前から浩之のコトを愛していたのよっ!」
「「をぃをぃ(^_^;」」

※無論、突っ込んだの久品仏と浩之。あかりは呆れて何も言えないらしい。

「…………なのに、この犬娘は、わたしの大切な浩之を手込めにしようと狙っている。そこまでされて黙ってなんかいられないっ!だからわたしは、このナイフであの娘をめった刺しにっ!」
「「刺していない、刺していない」」

※くりかえし

<エンディング>
BGM:Gメン75のエンディングテーマ曲

 予想外の親子丼攻撃に、挟まれている浩之はメロメロ、もとい途方に暮れていた。

あかり「浩之ちゃん!あたしのコト、愛しているよね!」
あかりママ「うふふ。浩之、そんな乳臭い小娘よりも……ね」
あかり「……やかましい、色ボケ」
あかりママ「あらぁ?狂犬モード?それともセイカクハンテンダケでも食べたの?でも、そんな悪態ぐらいじゃわたしは動じないわよ、おーほっほっほっ」
あかり「……うっさいわねぇ。お父さんに言いつけるわよ!」
あかりママ「ふーんだ!真実の愛の前には、偽りの婚姻なんて」
あかり「こらあっ!子供まで作っておいて偽りかぃ!!」
あかりママ「覚悟の差よ、覚悟の。…………浩之ぃ、こんな乳臭い犬娘じゃあ、あなたを満足させられないわよぉ。あたしなら、浩之をこの世の天国につれてってあ・げ・る」
あかり「く――浩之ちゃん!ダマされちゃダメ!――テクニックはないけど、初物よあたしっ!」

久品仏「……もう、お二方ともなりふり構ってられないようです。このまま続けると、収拾がつかない事態になりそうなので、ひとまずこのスケッチはここまでにしとうございます」
浩之「久品仏ぅぅぅぅぅぅ、見捨てないでくれぇぇぇ(泣)」
久品仏「スミマセン、もう今月末から私のほうもいよいよ仕事で忙しくなるので相手してられません、はい。――それでは皆さん、ごきげんよぉ〜〜〜」

 そういって久品仏は、右手に持っていた紙袋を解き、中にくるまっていたカツサンドをくわえた。外された紙袋に書かれていた文字は、

          「The End」

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