IT’s。 投稿者: ARM(1475)
 俺様の名は、魔の3大厨具のひとつ、ひと呼んで「死を呼ぶ鉄鍋」。
 俺様は本来、神が絶品料理を食するために作り上げられた、いわば神具なのだが、いつからか人界に紛れ、人
から人へ流れわたっていた。俺様を使えば、どんなヘポでもほっぺが落ちるくらい美味い料理が作れるのだが、
神はそれを良しとせず、ある禁忌の呪いを俺にしかけた。
 それは、ある料理だけは、作ってはならないという禁忌。その料理を口にした者は皆、たちどころに死に至る。
 しかしその料理が何であるのか、知っているのは俺だけだ。だから、俺を手にした料理人は、己のプライドを
かけ、運悪く死を呼ぶ料理を手掛けても後悔しないよう、真剣勝負で料理を作っていた。その気迫は、彼らが作
り上げた料理にも込められ、彼らの仕事は皆、賞賛されていた。

「腐った納豆に、ごまあんと上野アメ横で売られている特級鰹節を混ぜ、その上にマスタードとわさびを均等に
混ぜたマヨネーズソースをかけ、トッピングに韓国油海苔とピザチーズを乗せる。最後に隠し味として、シーラ
カンスのウロコをミキサーにして粉末状にしたモノをあえる」


千鶴「耕一さぁん(涙)せっかく素晴らしい鉄鍋が手に入ったので、思いついたレシピでごちそうを作ったのに、
突然、血を吐いて危篤に陥るなんて、あたしには信じられません…………!」

 …………つくったんか、あんた(汗)…………本当に俺の所為なのか?(汗)

   *   *   *

 俺様の名は、魔の3大厨具のひとつ、ひと呼んで「死を呼ぶやかん」。
 俺様は本来、神が絶品料理を食するために作り上げられた、いわば神具なのだが、いつからか人界に紛れ、人
から人へ流れわたっていた。俺様を使って沸かせば、たとえ淀川のあのドブ水だろうが、神水と化し、身体に宿
りしあらゆる毒や病気がたちどころに消え去るのだ。しかし神はそれを良しとせず、ある禁忌の呪いを俺にしか
けた。
 それは、沸かしたお湯は、ある料理を作る為に利用してはならないという禁忌。その料理を食した者はたちど
ころに血に至る。
 しかしその利用目的が何であるのか、知っているのは俺だけだ。だから、俺を手にした料理人は、己のプライ
ドをかけ、運悪く死を呼ぶ料理を手掛けても後悔しないよう、真剣勝負で料理を作っていた。その気迫は、彼ら
が作り上げた料理にも込められ、彼らの仕事は皆、賞賛されていた。

「沸かしたお湯で、1分間で出来るカップラーメン『クイックワン』を作ってはならない」


千鶴「耕一さぁん(涙)せっかくお夜食と思って用意したのに、突然、血を吐いて危篤に陥るなんて、あたしに
は信じられません…………!」

 …………いまどき、どこでクイックワンなんて、手に入れた?(汗)

   *   *   *

 俺様の名は、魔の3大厨具のひとつ、ひと呼んで「死を呼ぶ出刃包丁」。
 俺様は本来、神が絶品料理を食するために作り上げられた、いわば神具なのだが、いつからか人界に紛れ、人
から人へ流れわたっていた。俺様を使って食材を切れば、たとえサメ肉だろうが大トロと遜色のない美味い肉と
なるのだ。しかし神はそれを良しとせず、ある禁忌の呪いを俺にしかけた。
 それは、包丁である俺で、ある切り方をしてはならないという禁忌。禁忌を犯した包丁で手掛けられた料理を
食すればたちどころに死に至る。
 しかしその切り方が何であるのか、知っているのは俺だけだ。だから、俺を手にした料理人は、己のプライド
をかけ、運悪く死を呼ぶ料理を手掛けても後悔しないよう、真剣勝負で料理を作っていた。その気迫は、彼らが
作り上げた料理にも込められ、彼らの仕事は皆、賞賛されていた。

「包丁で、異次元の破壊神ガディムを斬ってはならない」

千鶴「ああっ(大泣き)せっかく魔神を追い返した記念に、メロンを振る舞ったのにっ、みんな、血を吐いて(以下略)」

 …………少しは衛生面に気をかけなさい(冷や汗)


 後世の料理史研究家たちは、この魔の3大厨具にさらにひとつ……いや、”ひとり”を加え、『魔の4大厨
具』と恐れ戦くコトとなるのだが、それはまた別の物語である…………。

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