What’s マルチュウ?15(りーふ図書館MIX) 投稿者:ARM(1475)
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「 What’s マルチュウ?15」

 ==きょうてき!ナニワの魔きゃく姉妹……あれ?の巻(前編)==

                 作 ARM


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【承前】
(アヴァンタイトル:エメラルド色のはっぱマークがきらめく。)

 マルチュウの必殺技「The・口車」(?)で、強敵「BB四天王」が一人、さ
おりん・ザ・レッドを撃退したものの、まだ「過激なる委員長」こと保科智子と、
「ピクシィ・レミィ」ことレミィ・クリストファー・ヘレン・宮内が浩之たちの前
に立ちふさがる!
 しかしその時、近くのビルの屋上に、突然4人の影が現れた!

「……あ……は、は、は。……正義を……愛する秘密のせ……戦士、快傑…………
カエデマ……どうしても言わなきゃダメ、初音ちゃん?」
「……あたしも……恥ずかしいんですけど(半べそ)……でも……言わないと、千
鶴お姉ちゃんに何されるか……」

 突然、気温が4度下がる。今まで千鶴の陰に隠れるようにいた、けったいな紫色
のマスクをつけている楓と初音は、千鶴の背中から発せられる凄まじい殺意を全身
に浴び、その場で震え上がった。

「……二人とも」

 振り返った千鶴の顔は、予想に反して笑っていた。
 正確には、笑っていなかった。作り笑い、とゆうやつである。それも、とびきり
凶悪な。

「……これは約束事だから、ちゃんと言おうね」
「「は――はひっ!!!(血涙)――は――――っはっはっはっ!正義を愛する秘
密の戦士、快傑カエデマン&ハツネマン、只今見参っ!」」

 二人は自暴自棄(やけくそ)な自己紹介をするが、それを強制した長女はすっか
り二人を忘れ去り、正面のビルに現れた謎の豊乳戦士(笑)と口論していた。愕然と
する楓と初音の顔に、いやーん、という擬音が被さっていた。

「……なんや、あんたら、カシワギジムの柏木姉妹やんか」
「「ち、違うぞ!あたしたちは正義の味方、カシワギマンだっ!!」」

 千鶴と梓が、シラを切った。梓のほうには、もうバレバレやんという諦めの色が
あったが、千鶴は自信たっぷりであった。

「――それはそれとして。リーフ団の悪辣な計画は、とうにお見通しよ」

 ふっ、と口元を吊り上げて不敵そうに笑う千鶴が、おもむろに胸元から取り出し
たのは、白と赤のカラーリングが施されたボールだった。

「ポケモンボール?!」

 さしてこの世界では珍しくもない代物を見て、しかし智子たちが思わず息を呑ん
だのは、そのポケモンボールの大きさであった。

「直径、ざっと5メートルはありそうね。……どこから取り出したンだ、もういっ
ぺんやってみろ、コラっ!」
「余計なことは気にしない」

 「非常識な」余計なことだから気になるのである。向かいのビルの屋上にいる梓
は、あんたの胸はそんな大きな「上げ底」が必要なのかしらねぇ、と嫌味を言うが、
千鶴に、きっ、と睨まれ、やれやれと肩を竦めた。

「ふっふっふっ。あの爆発が起きるのと同時に、このカシワギジム特製ビックポケ
モンボールに、観客や選手たちを回収していたなんて、予想もつかなかったで……
あ……重い…………あん」

 無理もない。いくら鬼娘とはいえ、片手で自分の身体よりも大きく重い巨大ポケ
モンボールをもつのは無理がある。可愛い声を上げた千鶴の片手から、特製ポケモ
ンボールが転がり落ち、屋上から地上へ真っ逆さま。
 ズン、という響きよりも、その中から聞こえた悲鳴の声のほうが大きかったのは
ゆうまでもない。
 千鶴は落下して地面にめり込んでいる巨大ポケモンボールを恐る恐る見下ろすと、
とりあえず破損している個所が見当たらなかったので、ふう、と安堵の息をもらし
た。

「……きっと中はぐしゃぐしゃヨ(汗)」
「……流石は柏木千鶴、……恐るべし!」

 戦慄する智子たちを遠巻きに見ていた浩之たちも、ポケモンボールの隙間から赤
い液体がなみなみとこぼれているコトに気づいていた。

「――うん、結果、オーライよ!!」

 きっぱりという千鶴とは裏腹に、他の一同は「オーライじゃない、オーライじゃ
(冷や汗)」と、心の声を揃えて突っ込んだ。

「――それはそれとして!」
「あ、誤魔化す気だ」
「黙れ、乳に栄養が回っている女」
「あ、あんた、実の妹になんてコトをゆうかっ!」

 溜まらず怒鳴る梓に、千鶴はあかんべえをしてみせた。

「柏木家の女には、そんなに発育の良い娘はいませんよぉーだっ!」
「――お・おのれわなぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!」
「楓ちゃん、今の一言、どう考えても自滅ものよねぇ(汗)」

 千鶴に聞こえぬよう小声で突っ込みを入れる初音に、楓もうんうん、と頷いた。

「――ええいっ!うるさいうるさい、う・る・さ〜〜〜〜いっ!――それはそれと
して、よっ!そこのリーフ団の関係者!我らが創造神シーハカタに仇成す逆賊とし
て、葉っぱに代わっておしおきよっ!」
「……今どき、あんなハズしたポーズを取るヤツが居るとは思わなんだ」

 一昔前に一世を風靡した月の女王様のポーズを取る千鶴に、梓が頭を抱えながら
ツッコミを入れた。今どき、こんなポーズをとるのは、宴会で酔っぱらって正体を
なくしかけているサラリーマンのオヤジが勢いだけでやってしまうくらいである。

 それはそれとして。

「――”それはそれとして”!なんと甘美な言葉でしょうか!今夜も、スーパーバ
ラエティ『それはそれとしてっ!』の時間がやってまいりました!司会は私、根腐
軸盆(偽モノ)と、」
「……篠塚”むっつり”弥生が務めさせていただきます」
「あう、相変わらず弥生はん、むっつりしてまんなぁ(笑)またしょうもないコト企
んでらっしゃるか?」
「……これは性分です。……それとも何ですか?わたしが、『え〜〜?やっだぁ、
うっそぉぉ?チョベリバぁ?もう、サイテーぇっ!きゅぴーんっ!(はぁと)by
原田宇陀児氏』なんてしているほうが――って、そこで何を震えて居るんですか?」
「……し、しつれい……なんか、この世ならぬモノを見てしまったような気がしま
して……で、では、気を取り直して始めさせていただきます。さて、今夜のゲスト
・コメンテーターを紹介いたしましょう!赤いブルマを履かせたら天下無双のこの
方、リーフワールドの『ヒロシお兄ちゃん』こと、月島拓也氏でぇぇぇぇぇぇすっ
!ハイ、拍手拍手!」
(赤いブルマを頭に被り、腰のブルマ以外、裸の月島兄がスタジオに入るあいだ、
観客席からまばらがちな拍手が聞こえてくる)
「(弥生、呆れ顔で)……あらゆる意味で天下無双ですね」
「こんばんわ――ゴン(月島兄、おじきの際に、正面のマイクに頭をぶつける)―
―皆さん、人として最低ですか?」
「「「さ・い・て・い・でぇぇぇぇぇぇぇすっっっっ!うおおおおおっっっっっっ
っっ!!」」」
(観客の一部に、感極まって涙を流しながら大声で叫ぶ者が多数いる)
「……今日も観客の中に『人として最低教』の信者の方がいらっしゃるようで、ま
ぁ、アレですね。さて、それはそれとして、今夜のテーマですが、『偽善者』。さっ
そくあの偽善鬼娘がやらかしてくれたようです。現地の○クマさん(爆)、そちらはい
かがなものでしょうか?」
『――はぁい、レポーターの太田カ奈子でス。いイ加減、ワたしの名前、覚エて下
さイ、軸盆サん。それはそれとして、問題のポケモンボールでスが、さっソく中を
開ケてみたイと思いマす――うわぁ、凄いコトにナってイまスよ、さながら、ボル
・ポト政権下時代のカンボジアを想起させる光景でス。まさに気リングフィールド、
けけけけけ』
「……少し太田レポーター、イきかけているようですね。軸盆さん、どうします?」
「面白いからこのままやらせましょう。キ○マさーん(爆)」
『はーい、キ・ク・○でぇ〜〜〜〜す、けけけけけけ。――ピカチュウ」
「「「?」」」
(香奈子のリアクションに、スタジオの軸盆たち、互いの顔を見合わせてきょとん
となる)
『ピピピピピピ――ピカチュウ』
「(弥生、珍しく冷や汗をかきながら)……アレ?今回は番外編の雫編ではなかっ
たハズですが?」
『いえ、ピカチュウでス!カメラさん、あちらを』

 香奈子の指す方向へカメラが向けられると、そこでは、いつの間にか地上に降り
ていた柏木姉妹と、智子とレミィが対峙していた。

「……ここは一つ、ポケモン勝負といきましよう」
「望むところや!――レミィ、うちにまかせときぃ!」

 自信たっぷりに、にいっ、と笑う智子が一歩前に出た。

「いけ、サワムラぁぁぁぁぁぁぁ!あんたに決めたぁぁぁぁぁっっ!!」

 そう言って智子がポケモンボールを放り投げた。すると、ポケモンボールは閃光
を放ち、中からポケモンが飛び出した。
 同時に、飛び出してきたポケモンのカミソリのように鋭い蹴りが、虚空を走り抜
けた。

「――あたしをポケモン扱いするなぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!」

 べべーん。飛び出してきたのは、魔脚の女( (C)「だったらイケるぜ!」)こと、
観月マナであった。

「とーとー、WAキャラまで餌食にするのかこの作者(笑)」
「キックポケモン=サワムラーとゆうのはいかにもイージーな発想とゆうか」

 呆れ気味に言う綾香にマルチが相槌を打った。――うるさいやい。

「あたしはサワムラーなんて無粋な名前じゃない!あたしは観月マナ!リーフキャ
ラにおける魔脚の女、2号よ!」
「ちなみに、うちが技の1号、2号は力の2号や」
「「二人あわせて、誰が呼んだか――――最凶・魔脚姉妹、ここに見参!」」

 足蹴りを最大の武器とする魔脚の女たち、保科智子と観月マナがついにタッグを
組んだ。この驚愕すべき事実は、「それはそれとしてっ!」の生中継によって全国
に知れ渡るコトとなった。

 これが人類にとって恐るべき脅威であるコトは、次の幾つかの証言によって判る
だろう。

証言1・某私大大学生「……スネを狙って来るんですよ(泣)……あれは痛い。あ
の娘の足の骨はどちらかといえば角張っていて、刀みたいな破壊力があるんです…
…あ、思い出しただけでも向こうズネが痛くなってくる(汗)」

証言2・某ゲーセン店員「……酷いんですよ、もう。あんな華奢な足で、UFOキ
○ッチャーを易々と粉砕させるんですから。うちとしては二度と来て欲しくない脚、
もとい客ですよ」

証言3・某パソコンゲーム開発者「あかんあかん、そらあかん。やったらあかんで
……え、彰のコトじゃなくってマナ?……うーん、名前似ているからええんとちゃ
う?(苦笑)」

証言4・謎の生命体・火星のダイちゃん「………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………(ダイちゃん、少し
身じろぐ。すると、ダイちゃんを撮す映像が、いきなり横倒しにでもなったように
地面へ落ちた)」

「……最後の証言は98時間映像を映し続けていたインタビュアーの酸素が切れて
しまい、力尽きてその場に倒れてしまった為であります。最後までインタビューが
出来なかったインタビュアーの不甲斐なさを心の中で罵るのはそれはそれとして、
番組中のお見苦しい点をお詫びいたします。なお、証言に関してはプライバシー保
護のため、映像と音声を加工して放送いたしております。そ
れでは本編へ戻りましょう」

「……うーむ。噂に聞いていた魔脚の女の使い手だったとは(汗)――しかし!」

 千鶴、臆することなく、腰にぶら下げていたスタンダートサイズのポケモンボー
ルを智子たちのほうへ向けるように突き出した。

「わたしには心強いポケモンが居ることをお忘れなく!――耕一さん、あ・な・た
・に決めましたっ、うふっ(はぁと)」

 千鶴はにこりと笑うと、智子たちのほうへポケモンボールを放り投げた。一呼吸
おいてそのポケモンボールが炸裂し、中からエルクゥモード……いや、ピカチュウ
状態の柏木耕一が飛び出してきた。

「ぴっかぁぁっ!やっと出られた(感涙)――――えっ?」

 ポケモンボールから出てきた耕一が驚いたのは、いきなり対戦相手のマナが、

「――かっ――かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!」

 と黄色い悲鳴を上げて耕一の身体に抱きついたからである。

「こ――こらっ!あんた、耕一さんに何抱きついているのよっ!?」
「ナニしとる、マナ!?そいつは対戦相手やでっ!」

 挟まれるように千鶴と智子に睨み付けられているマナは、しかし臆するコトなく
ピカチュウ耕一に頬づりし続ける。

「だってだってだってっ!噂に聞いていたピカチュウがこんなにラヴリィだったな
んて――ねっねっねっ!智子姉ぇサン、これ、飼っていいでしょ?」
「こらっ!誰があんたにやるなんていった?!耕一さんから離れなさい!」

 千鶴、すっかり鬼娘嫉妬モード突入、周囲の温度が4度ほど下がってしまった。
しかし肝っ玉の座ったマナ、鬼と化している千鶴にひとつも動じるコトなく、あま
つさえ千鶴にあかんべえまでしてみせる始末である。怖いモノ知らず、ここに極ま
れりとゆうべきか。

「――マナっ!ええ加減にせぇっ!!しまいにゃどつくでぇっ!!」

 業を煮やした智子が、ついに背中からハリセンを取り出し一喝する。「大阪名物
ハリセンチョップ」は関西人のDNAにまで染み込んだ「お約束な恐怖」であるコ
トはゆうまでもなかろう。荒川区町屋在住の大阪出身者、岡田晋太郎さん(71)
がそういうのだから間違いない(きっぱり)。確かにこちらのほうが効果的であっ
たらしく、驚いたマナは慌ててピカチュウから飛び退いた。

「そいつがほしけりゃ、とっとと勝負つけて勝ちぃ!勝って自分のモノにすれば誰
も文句は言わなン!」
「――それもそうね。――うふふ。いざ、尋常に勝負っ!!」

 うきうきとするマナは、放り投げられて地面に頭をぶつけ、ふらふらと千鳥足で
いたピカチュウ耕一を睨み付けた。さながら、格好の獲物を見つけて喜悦する了見
のごとく、マナは、にぃ、とほくそ笑んだ。
 だが、いつまで経ってもマナはピカチュウ耕一に仕掛けようともしない。
 そればかりか、なんとマナは、いきなりその場にしゃがみ込み、

「――まいりました」

 の一言を口にしたのである。理解しがたい結果に、対戦するピカチュウ耕一も含
め、その場にいた一同は土下座するマナを呆然と見つめていた。

「…………ああっ?なんでや?なんで勝負せんうちから負けを認める?」

 ハリセンを振り上げてついに憤る智子に、マナは済まなそうな顔を上げて、ピカ
チュウ耕一を指した。
 その指先のベクトルの消失点は、ピカチュウ耕一の可愛い小さな足だった。

「…………だって…………スネが無いから蹴られないいいいいいいいいいっ!!」

 ぎゃふん。マナを除く全員、申し合わせたように一斉に卒倒した。言われてみれ
ば確かにピカチュウは胴体から直ぐ足が生えているような身体をしているではない
か。スネを狙う魔脚の女にとって、ピカチュウは鬼門とも言える対戦相手であった。

「――――あああああああああああ、あんたなぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

 一番最初に飛び起きた智子が、今にも噛み付きそうな勢いでマナを罵倒し始めた。

「そ――それでもナニワの魔脚姉妹と怖れられた女なの?!」
「だ、だってぇぇぇぇぇぇ………………って、あれ?」

 何故か、マナばかりか浩之とマルチュウも思わずきょとんとなった。

「――おかしい。委員長は、声こそ『浪速娘』だが(笑)、こちらでは『神戸娘』の
ハズ」
「ええ。確か、神戸を誤解して関西だなんてゆうと凄く怒るんですよねぇ(汗)」
「――そうよっ!智子姉ぇサン、なんか今日、ヘン!」

 当惑するマナが智子を指す。すると智子ばかりか、隣にいたレミィも突然高笑い
を始めたのである。

「「……ふっ。バレちゃあ仕方ない!!」」

 そういうと、智子とレミィは頬を掴み――剥がれたそれはなんと、智子たちの顔
に似せて作られたた人工皮膚製のマスクであった。それとリーフ団の衣装が宙を舞
い、その下から黒い姿が現れた。

「あ――あんたたちは!!」
「「『過激なる委員長』、そして『ピクシィ・レミィ』、ここに見参っ!」」

 そこにいたのは、色違いの黒いリーフ団の制服を着た、智子とレミィだった。そ
れを見た一同、思わず腰砕けになる。

「……あのぅ、智子さんにレミィさん、先ほどの人工皮膚製のマスク、何の意味が?
(汗)」
「「ははははっ!――――意味など、無いっ!!」」

 恐る恐る訊く浩之に、二人は哄笑で誤魔化した。あまりのコトに浩之は一層落ち
込み、その場にしゃがみ込んで唸った。レミィに至っては、元々が黒い衣装で実の
ところ何も変わっていないからタチが悪い。それを見ていた柏木姉妹、呑気に間違
い探しを始める始末である。

「――意味無しなワケ、ないっ!」

 悲鳴のような声を上げるマナは、衣装替えをした智子たちを見て一人慄然となっ
ていた。

「その衣装――――我ら『リーフ団』の長年の宿敵、『ダークリーフ団』の制服じゃ
ないの?!」

 この期に及んで、第三勢力の出現だと?承知しないぞこぶ平っ!(意味不明)

               まだまだ、つづく(^_^;

http://www.kt.rim.or.jp/~arm/Hatohato.htm