東鳩王マルマイマー・『M』よりはじまる、物語 投稿者: ARM
 これは、『M』より始まる物語。

 Man(人)。

「……人間と機械、どう違うって言うんだよ?」

「人間?――はははっ!我らを模して造られた人形風情が、何を言うか?」

「……俺はそれでも、あいつを愛する。たとえ、俺たちの間に越えられない深く暗い谷があってもだ。――イかれていると思うか?お前なら判ってくれると思ったのだがな、藤田浩之よ」

 Machine(機械)。――man−made(人に造られしもの)。

「……私の闘いは、人への贖罪だ。それでも私の力になってくれるというのか、雷虎?」
「それがワシの使命だからな。……それにもう気にするな。我々を造った創造神たる人間でさえも、簡単に過ちを犯すんだからな。そう言った意味では、お主は実に人間らしい存在だ」

「ミクさん!はやくそこから離れて!」
「……ダメなんです。わたしは、ずうっと政樹さんのそばに居て上げなければいけないの。……愛しているから。……ねぇ見てよ、マルチ姉さん。政樹さん、こんなに静かに眠っているよ――」

「これは……?!」
「綾香――泣いてるヨ、泣いているヨ、メイドロボットたちが!」

「……悪ぃなアネさん。あの三人だけじゃ道中寂しかろうから、俺もついていくぜ」
「……阿呆ぅ。毎度毎度、勝手なコトばっかりぬかしおって……この阿呆ぅ……うっうっ」

 Mighty(強力)。

「――マルマイマー!俺を使えっ!!」
「EI−08、光になれぇぇぇぇぇぇっっ!!」

「うなれ疾風!とどろけ雷光!――風虎牙(フォン・フー・ガォ)!!」

「これ以上は進ませンぞ、エクストラヨーク!食らえ、ジェイクォース!」

「テンダーハート・ライド、リミッターオフ!オゾムパルサー出力全開!――対消滅で消えるのは、クイーンJ、お前だぁっ!!」

 Murder(殺戮者)。

「……わかるか、アズエル?所詮、人間は我々にとって狩られる儚い生き物にすぎないのだよ」

「血だ……血だ……!判るか、柏木耕一!俺たちに流れるエルクゥの血は、この同胞の血を求めていたのだ!あはははははははっ!!」

「……〈鬼界昇華〉に不適合な存在など、無用。すべて滅びよ」

 Mad(狂気)。

「……どうして?どうして応えてくれないの、長瀬ちゃん?瑠璃子がお兄ちゃんを殺したから?――ねえ応えてよ。……寒いよぉ、寒いよぉ。……瑠璃子を独りにしないでよぉ」

「……わたしはただ、次郎衛門と添い遂げたかっただけなのだ。あの男の仔が欲しかったのだ……それを……それを……リズエル、お前はぬけぬけとぉっ!!」

「俺を殺すというか、耕一!?ははは、やはり貴様もエルクゥの男よ!!」
「黙れ!これは俺の怒りだ、ワイズマン!!」

 Marvel(不思議)。

「……千鶴?……そ、その姿は……莫迦な?!君はあの時、確かに死んだハズでは……!?」
「……耕一さん。私の言葉を聞いて下さい。――そして、あの娘を守ってあげて下さい」

「……諦めないで?そう言いたいのですか、千鶴さん?」

「これが……〈鬼界昇華〉を越えた、〈機界昇華〉?!」

 Mind(こころ)。

「来栖川のメイドロボットはすべて処分する!これ以上、人間に危険な存在を野放しにしておく訳にはいかない!これは国の命令だ!――所詮は機械だ。機械なんかに魂なんかあってたまるか!」

「……この想いは作り物じゃない!たとえ造られた者同士であろうと…………私は……貴方を愛しています」

「――俺は信じたい。人類の、マルチたちの、この世界の、そして俺自身のこころを。――だから闘う、生き抜くために!!」

 Mother(母親)。

「……芹香、綾香。わたしは、あなたたちに母親らしいコトを最期までしてやれなかった。これは、その罪滅ぼし」
「――やめて、お母様!!」

「……浩之さん。わたしはいつもお母さんと一緒にいたんですね。……なんて温かい目なのかしら」
「……ああ。そうだな、マルチ」

「マルチはすべての始まり。〈次代〉たちの母と言えよう。クイーンJ、あなたの役目は終わっていたのだ」
「――おのれ、ダリエリ!貴様、図ったなぁっ!!」

 Miracle(奇跡)。

「……感謝するのはわたしのほうです。大切な人たちを守る力も、すべてはあなたが与えてくれたのだから」

「――今こそ判った。もがきあがくことこそ生命の本質、人も機械も関係ない!我ら命ある者たちのあがき、とくと見るがいい!!」

「……奇跡が、起きたよ」
「――?!浩之ちゃん!?」
「……どうやら神様は、俺たちの勝利に、ごほうびをくれたらしいな」

 Meet(出会い)。

「……傷ついたお前を見ているので精一杯だ。あの男の事を気にしていられるほど器用な男ではない」
「……わたしも、あなたと初めて出会ったあの日からずうっと、あなたを見ていましたよ」

「わたしたちの出会いは、いったい何だったというのだ、超龍姫?!」
「すべては、ひとつに還るために。――そうだろ、あたし?」

「なんて光景……!宇宙船の集団が空を埋め尽くしている!?」
「あれがすべて、〈人類原種〉たちの方舟なのか……!?」

「……ごめんな、あかり。俺は、一番大切な人さえ護れなかった…………。お前を……愛している」
「……浩之ちゃん。……わたし、あの日からずうっと好きだったよ。……公園に置いてきぼりにされたわたしを迎えに来てくれたときから…………ずうっと」

「あ、初めまして。わたし、今日からこの学校でお世話になる、来栖川電工製HMX−12型と申します」

 MULTI。

「マルチ、と呼んで下さい!」

 来栖川電工製HMX12型汎用家事用補助機構――マルチ。

「わたし、みんな、大好きです!」

 すべては、終局と、始まりへ向かう道程。
 ――そして、命の限りに燃えた勇者たちの物語である。

http://www.kt.rim.or.jp/~arm/