祝!BrandNewHeartセガカラ配信記念。 投稿者:ARM
「……25647、っと」

 長岡志保は、セガカラこと「スーパープロローグ21」のリモコンのテンキーを
手際よく叩いた。
 今日は運命の日、そう、我らが勇者……ぢゃない、我らの「ToHeart」の
OP曲、「Brand New Heart」がセガカラに配信される初日であった。
 放課後、志保は浩之、あかり、雅史、マルチ、智子、レミィ、理緒、葵、琴音、
芹香、たまたまセバスチャンと一緒に芹香を迎えに来た綾香らToHeartのレ
ギュラーメンバーを引き連れ、駅前のカラオケ屋にやってきていた。

浩之 「とーとー、俺たちの唄がカラオケになるのかぁ」
あかり「たしかこれって、18禁ゲームでは初だよね、浩之ちゃん」
雅史 「あかりちゃん、パソコンゲームとしても初めてじゃなかったっけ?」
智子 「テレビゲームなんかでノリのえぇ唄なんかは、良ぉ採用されるけどな」
レミィ「顧客のニーズに応える。それこそ商売の基本ネ」
理緒 「それだけみんなが待ち望んでいたというコトなんですよ」
葵  「もう羽田の方へ足を向けて寝られませんね」
芹香 「…………」
綾香 「なに、姉さん、緊張しているの?え?カラオケなんて来るの初めてだか
    ら?あたし?ええ、ストレス発散に学校の友達と良く来るわよ」
セバス「……綾香さま。あまり寄り道はなさらない方が(汗)」
琴音 「……あ、そろそろ曲データの検索が終了するころです!」

 琴音の言葉に、一同は部屋の奥、志保が立っているステージの後ろにある大画面
液晶プロジェクターへ視線を殺到させる。

浩之 「……志保、緊張しているだろ?」
志保 「なぁにをゆう?この志保ちゃん、これしきのコトでビビったりしないわ
    よ!」
浩之 「マイクのスイッチが入っていないようだが」
志保 「あ゛?」

 浩之に言われ、慌てて志保はマイクのスイッチをにONにする。スピーカーから、
ブッツゥン、とマイクのスイッチをONに入れたときの振動音がエコーを伴って聞
こえてきた。

志保 「……たははははは。やっばぁ、マヂで上がるわぁ」

 志保は照れ笑いしながら、正面にある歌い手用のモニターを見直した。すると曲
データの検索中というメッセージが消えた。

志保「さぁて、行くわよぉ!!『Brand New Heart』!!」

 ちゃーん、ちゃーん、ちゃーん…………ブツっ!

 突然、モニターの画面がおかしくなり、選択された曲にキャンセルが入った旨を
告げるメッセージが出た。

「あたたたた、あたた、あたたた〜〜、あたたたた、あたた、あたたた〜〜、あた
たたた、あたたたたたた、あたた〜〜たた〜〜、あ〜たぁ、あたた、あたたたた〜
たた、あたたたた、あたたたた〜たた、あたたたた、あたたたたたたた、あたた〜
たたた、あたたたた、あたたたたたたた、あたた〜たぁたぁ〜〜」

 スピーカーから聞こえてくる、妙に甲高いが男のそれと判る唄い声が聞こえ、一
同はその場で卒倒する。

セバス「……こ……この曲は、紛うコトなき初代タイガーマスクのED!」
浩之 「し……しかしこれは……出だしの『あたたかい』の『あた』が、『北斗の
    拳』のケンシロウの叫び声と同じという理由で強引に誕生した迷替え歌、
   『北斗のバラード』!!原曲すらどの通信カラオケにも配信されていないハ
   ズのこんな阿呆な唄を唄う男は、俺の知る限りひとりしかおらん!!」
志保 「――まさか、XマスSS『聖夜』の時の?」

 そう!と叫んだ浩之が振りかぶって指したカラオケルームの扉が、それに呼応す
るように開かれ、何者かが入室してきた。

マルチ「……あれ?みなさん、どうして倒れているのですか?」
浩之 「……マルチ。お前の後ろに誰がいる?」

 浩之が怖い顔をしていうので、扉の中に立つマルチは思わず顔を強張らせてしま
う。え?え?と狼狽するマルチを押し退けるように、右手にゴールドマイク、左手
にセガカラのリモコンを持った小太りの男が現れた。

???「みなさん、盛り上がってますかぁ?どう?一曲いかがっすかぁ?」
浩之 「やかましぃ!この間の土曜の夜、新宿のカラオケ屋に現れた流しのアニソ
    ンカラオケマンか、貴様!?」
???「やだなぁ、それは実話だけど、あちきぢゃないっす(笑)」
マルチ「……ご主人さま、この方、ご存じなんですか?」

 すると浩之は苦虫をかみつぶしたような顔をして溜息を吐き、

浩之 「……マルチ。そいつが、お前をマルチュウやらマルマイマーやらと、色々
    酷い目に遭わせている張本人、ARMだ」

 浩之が溜息混じりにそう告げた途端、マルチはシステムダウンした。

あかり「ま、マルチちゃん?!」
智子 「……無理もぉない(汗)災禍の元凶を目の当たりにしたんやさかいなぁ(苦笑)」
志保 「そ、それはそうと、なんであんたがここにいるのよ?!」
浩之 「だいたいおまえ、ゲームには無関係だろうっ!こんなところになんでわいた!」
ARM「はーっははは!甘いぞ甘いぞーっ!!今年は大規模なエルニーニョ現象の
    当たり年でのぅ、世界的にラテンの妖気が絶好調なんよ」
あかり「こ、こんな所にも異常気象のとばっちりが!?」
雅史 「あかりちゃん、ボケすぎ、ボケすぎ(苦笑)」
浩之 「グリコーゲンX2000か貴様(笑)なにがエルニーニョだ、こんな一部限
    定パロディをかますな(笑)」
智子 「……あんたなぁ、えぇトシこいてアホやるのも大概にせぇや」

 ぐはっ!!智子に冷たい目で呆れられ、彼女がお気に入りだったARMは精神ダ
メージを受けた。

浩之 「お、そーか、そーか。ようし、そーなったらあかり、綾香、あのバカを冷
    たい目で見てやれ。効果絶大だぞ(爆)」

 浩之に促され、二人とも冷たい侮蔑の視線をARMに浴びせると、そのダメージ
はさらに増大した。これに気絶しているマルチが加わったら即座に精神崩壊を起こ
すのは必至であろう。ARMはとうとう泣きだし、幼児退行してしまった。

ARM「えぇぇん、みんながいぢめるよぉぉぉ……せっかく、ぶらんにゅうはーと
    とせがたさんしろーのきょくがせがからにはいしんされたのをきねんして、
    ひぞうのかえうたのカシをこうかいしにきたのにぃぃ……しくしくしくしく」
浩之 「秘蔵の歌詞?――まさか?!」

 浩之は見る見るうちに蒼白する。

浩之 「……あの唄が……あの唄の歌詞が……全4番まで……確認できたのか?!」
ARM「ふっふっふっ、そう!その通り」

 ARMは、すっく、と立ち上がって笑い出した。

綾香 「立ち直りの早い奴(笑)」
ARM「ヲタクは踏まれてもそれを快感と感じないくらいじゃなきゃダメ(笑)。そ
    の昔、今は亡きアニメックで一回だけ公開されたきりの、知る人ぞ知るあ
    の迷替え歌。いまじゃ歌詞を知るものはごく僅かになり、このままでは忘
    れ廃れてしまうかもしれないあの替え歌を、いま、ここに再び白日のもの
    とし、新たなる時代へ受け継がなければならないのだ!!」
智子 「……おっさん。ちょっと待ちぃや」
ARM「?」
智子 「……アニメックで公開されたことのある替え歌……っーと、DAICON
    FILMのアレか?」
ARM「あれ?委員長、良く知っているね?」
智子 「あんたに委員長呼ばわりされる覚えはない。(笑)中学校の先輩で濃いヲタ
    クなのがおってな、そいつが文化祭であのビデオを上映している所にたま
    たま居合わせてしまったコトがあるんや。それよか、もしあれなら、3番
    目はヤメとけ。あそこはあかん。人道的に許されんものがある(汗)」
ARM「……うむ。言われてみれば歌詞に危険な表現があるな(汗)それよか、原曲
    は3番までしかないから全部は唄えないだろうし、判った、オリジナルに
    は申し訳ないが3番は欠番にしておこう。1番、2番、4番があればカラ
    オケで唄える。――ふっふっふっ、これでセガカラにせがた三四郎とBr
    −and New Heartが配信されたとき、いっしょにこの曲も
    唄って場を盛り上げるコトが出来るぞぉ」
智子 「……こんな唄、親兄弟や会社の同僚の前じゃ逆に引くわ(苦笑)」

ARM「ここで注釈だ。この歌詞に関しては、著作権はすべてDAICONFIL
    M製作サイドにある。従って、その使用目的は「自分で気分転換等で唄う」
    か「カラオケで唄う場合」のみと限定し、記載した歌詞を商業誌や同人誌
    に転載したり、個人のホームページ等に転載するコトは厳禁とする。黙っ
    てやっても、3番目の歌詞が載っていないのだから、ここから記載したこ
    とが一目瞭然だぞ。要するに、歌詞を少部数(1、2部)プリントアウト
    してカラオケに持ち込み、仲間内で唄うのに使うコトのみにしてくれ。お
    やつは300円まで、バナナはおやつに含めない。以上!」


「愛國戦隊 大日本のうた
       −−1982年度DAICON FILM作品より−−

             作曲:渡辺宙明
             作詞:澤村武伺
             唄 :毛利文彦と防共挺身ボーイズ&ガールズ

1.
 もしも日本が弱ければ ロシアはたちまち攻めてくる
 家は焼け 畑はコルホーズ 君はシベリア送りだろう
 日本はオウオウ僕らの國だ 赤い敵から守り抜くんだ
  カミカゼ・スキヤキ・ゲイシャ
  ハラキリ・テンプラ・フジヤマ
 俺たちの日の丸が燃えている
  Glow The Sun Rising Sun
 愛國戦隊 大日本

2.
 この世にロシアがある限り いつかは日本に攻めてくる
 北の果て シベリアのかなたから アカの魔の手が迫り来る
 御國の四方を守り抜くため 兵役はオウオウ僕らの義務だ
  カミカゼ・スキヤキ・ゲイシャ
  ハラキリ・テンプラ・フジヤマ
 君たちも今すぐに銃をとれ
  Glow The Sun Rising Sun
 愛國戦隊 大日本

3.(プロテクトの意味も兼ねて、欠番とします)

4.
 北にロシアがいる限り 北洋漁業はできやせぬ
 網は裂け 漁船は拿捕されて またもカズノコ高値呼ぶ
 サケ、マス、タラも僕らのものだ トロール船を追い返すんだ
  カミカゼ・スキヤキ・ゲイシャ
  ハラキリ・テンプラ・フジヤマ
 君たちも今すぐに出漁だ
  Glow The Sun Rising Sun
 愛國戦隊 大日本


ARM「……それぢゃ!(笑)」

 そういうと、ARMは高笑いしながらカラオケルームから逃げるように走り去っていった。

浩之 「……なんつー唄だよ(苦笑)くそったれ、二度と来るな!あかり、塩蒔け、
    塩を!!お前みたいな壊れ者なんざ、大人しくマルマイマーの第8話を書
    きていれば良いんだよ!!」
雅史 「……願わくば、Brand New Leafの打ち上げに使用されるセ
    ガカラが、原曲の「太陽戦隊サンバルカン」の配信過多で故障しないこと
    を祈るばかりだね」
レミィ「But、日本人の魂、揺さぶる曲ネ」
浩之 「おいおい(^_^;」

 一同が突然の嵐に焦燥しきった顔をしている中、志保が深い溜息を吐いてリモコ
ンを手にした。

志保 「……今の馬鹿な唄の所為で、すっかり唄いそびれてしまったわよ。えぇい、
   気を取り直してもう一回!」

 25648。

志保「あ゛あ゛っ゛?!しまったこれは「せがた三四郎のテーマ」!!」

 結局、自棄になった志保は、せがた三四郎のテーマを泣きながら唄い切るのであった。

                             ちゃんちゃん(笑)