東鳩王マルマイマー第5話「その名は超龍姫」エピローグ 投稿者:ARM


【承前】(超高速振動ホイール内蔵のレフィ専用格闘戦用武器、ホイールロッドの映像とスペック
表がリストされる。エピローグ開始)

「――それでこそ勇者!!アルト、レフィ、シンメトリカルドッキング承認!!および超空間振動
メガトンツール、イレイザーヘッド起動承認!!マルマイマーを助けなさい、勇者『超龍姫』!!」
「「了解!!」」

 綾香の指令を受けた二人はA・R・Fの穴へ飛び込む。同時にアルトはクルーザーモードへ変形
し、その上にレフィがまたがった。

「「シンメトリカル・ドッキングっ!!」」

 二人の掛け声が重なると、ついにこの二人に隠された切り札が発動した。
 レフィの両腕が背中にスライドし、腰に開いたコネクターがアルトのシートから現れたアームと
接続される。そして後輪に接続されているアルトの脚部が開き、レフィの両足を吸い込み、膝まで
あるロングブーツのようなドッキングをする。次に前輪と後輪が車体下中央にスライドすると左右
に展開し、レフィの腰にドッキングされる。それからフィギュアモードのアルトの両腕がレフィの
空いた肩にドッキングし、剛腕を彼女に授けた。最後にカウル部がレフィの頭越しにスライドし、
胸部プロテクターとヘッドギアへと変形したのである。
 レフィの頭部に重なるアルトの頭部。その頭部には、緑色のMマークが煌めく。
 そしてこの重厚かつパワフルなイメージを周囲に放出するスタイル。
 39.009秒で完了したこの姿こそ――

「『超・龍・姫』――見参っ!!」
「超龍姫!!『イレイザーヘッド』は弐式から射出済みや!はよ、受け取れっ!!」
「了解!!背部アポジモーター全力出力!!」

 着地した超龍姫は地面を豪快に蹴り、アポジモーターが不要なくらいの勢いで上昇を開始する。
向かう空には、あのイレイザーヘッドが駆け抜けていた。超龍姫はアポジモーターで軌道修正し、
見事イレイザーヘッドをキャッチした。

「方向修正!!目標、下方――」

 超龍姫はアポジモーターを噴かせてイレイザーヘッドの先端を地上に向ける。地上では、マルマ
イマーがすでにヘル・アンド・ヘブンをEI−03の本体に叩き付け、核となっていたメイドロボ
ットを本体から引き抜いているところであった。
 目標を目視した超龍姫が下を向いたまま落下し始めた途端、ついにEI−03の本体が爆発し、
周囲の高濃度酸素を取り込んで大規模な爆発を起こした。

「――EI−03の爆発エネルギー!消去開始!!」


 凄まじい光景であった。
 イレイザーヘッドがどんなシロモノか判らない浩之とあかりが呆然となのは判るが、それを開発
した長瀬や綾香たちさえも絶句する光景が、現場を映すモニタの中で展開していた。
 EI−03の爆発が高濃度酸素に引火した一瞬、地上に巨大な太陽が生じた。しかし1秒も立た
ずその閃光は威力を失くし、光の竜巻となって遙か上空を目指して上昇したのである。

「……イレイザーヘッドの発動によって生じた、絶対真空の柱となった位相空間内で生じる量子補
正現象に爆発エネルギーは空間ごと全て吸い込まれ、大気圏外へと放出される。今回のように、
マルマイマーの『ディバイジング・クリーナー』と、超龍姫の『イレイザーヘッド』を組み合わせる
ことで、核兵器ですら無効化される」
「……理論上では……聞いていたけど……こ……これほどのものとは……!!」

 長瀬の説明に綾香はこれ以上どう応えていいものか判らなかった。ただ、頭をかすめた感嘆の言
葉と、そして、

「…………これで事実上、核兵器は死んだも同然、ね」
「……核より……強いのかよ……あいつら……!!」

 浩之の呟きは恐れより、むしろ喜びの色合いのほうが強かった。浩之はまだ呆然とした頭で、帰
ってくるハズのマルチたちをどう誉めてやろうか、いつのまにかそればかりを考えていた。


 閉じ始めたアレスティング・レプリション・フィールドの中心で、二人の勇者はようやく邂逅を
果たした。
 縮退重水素を全てエネルギー変換で消費し尽くしたイレイザーヘッドの先端にある位相コーティ
ングの結合が分解すると、光の霧の向こうからイレイザーヘッド本体を抱えていた超龍姫の笑顔が
マルマイマーの前に現れた。

「……その姿……レフィさん……それともアルトくん……?」

 暴走が収まったメイドロボットを抱きかかえるマルマイマーは、超龍姫のこの姿をまじまじと見
ながら呆気にとられていた。

「私の名は『超龍姫』です、マルマイマー。アルトとレフィのAIは、私のAIをアニマ・アルゴ
リズム理論によって分離したもので、本体はこの私なのです」
「え?分離していた?」
「THライドによる『心OS』は、何故か女性的な思考及び感情しか形成されないという欠点があ
りました。そこで、フロイト心理学をベースに男性的思考・感情を形成する理論を立て、女性型思
考AIから男性型思考AIを抽出するコトに成功したのです。しかし、分離したままではTHライ
ドによる超パワーの恩恵が得られないという、新たなる欠点が生じました。そこで再びもとのAI
に戻す方法として、分離したAIの『心OS』から発信されるパルスのシンパレード(同調値)の
完全一致が必要となったのです」
「……その……AIが一致して……あの二人の元の姿が……あなたなのですか?」
「はい……その…………」

 そう応えて、超龍姫は持て余し気味に頬を掻いてみせ、

「……レフィの時の無礼、本当に申し訳ありませんでした。レフィは女性的感情が強調されたAI
であるため、必要以上に感情的になりやすい欠点がありまして……」
「……欠点じゃないです」

 そういって微笑むマルマイマーを見て、超龍姫はきょとんとする。

「……二人とも……わたしのコト……心配してくれていたンですも。こんな素晴らしい妹や弟を持
てて、わたし、本当にうれしいンですよ」
「……ありがとう、マルチ姉さん」

 ほろりときたか、超龍姫は潤みかけたまなじりを指先で拭い、そして倒れているマルマイマーに
手を差し伸べた。

「あらためて、勇者マルマイマー。これからもよろしくお願いします」
「……はい」

 ニコリと笑うマルマイマーは、超龍姫の手を取った。――その時。


「――What’s happen!?強力なオゾムパルス反応を確認!場所は、A・R・F中央、
――――マルマイマーからでス!!?Why?!」

 正確には、マルマイマーからではなかった。レミィが誤認識するのも無理もない。なぜなら――――

 ギンっ!!マルマイマーが抱えていた、EI−03の核となっていたメイドロボットの両目がカ
ッと見開かれ、ヘル・アンド・ヘブンによって正常に戻っていたハズのTHライドが再び血の色の
ように紅く燃え上がった。

 ――――――再暴走、開始。

                        つづく

【次回予告】

「キミたちに最新情報を公開しよう!

 ヘル・アンド・ヘブンによって暴走が収まったハズのEI−03が、なんと再び暴走を再開する!
 混乱する戦場からEI−03を逃走させるべく、ついに『奴』がマルマイマーたちの前に現れた!
圧倒的なパワーを誇る最強の敵の出現に、マルマイマーと超龍姫が最大の危機を迎えたとき、紫の
疾風が戦場を奔る!

 東鳩王マルマイマー!ネクスト!
 第6話「逃亡者テキィ」

 次回もこの即興小説コーナーで、『ふぁいなる・ふゅうぢょん』承認!

 勝利の鍵は、これだ!

 「超極細綱断糸『風閂(かぜ・かんぬき)』」
                          


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