What’s マルチュウ?:第10話 投稿者:ARM
【承前】
 浩之はまだ爆炎が立ち上る爆心を見た。いくらなんでもこんなミサイル攻撃を喰らってしまった
ら、マルチはバラバラになっている。浩之は必死に無惨な想像を堪えながら、ゼロも同然の可能性
にすがり、マルチに呼びかけた。

「……ふにゃああああああぁぁぁ。ひ〜〜ど〜〜い〜〜で〜〜す〜〜ぅぅぅ(泣)」

 ようやく晴れた煙の中から見えたのは、まったく無傷のマルチであった。信じがたいコトだが、
着ている服さえもほころび一つ無い。浩之は口をあんぐりと開けたまま唖然となる。

「……ま……ま……るち…………?」
「ず、ずるいわよ、プロテクトシェイド使うなんて!!」
「ンなもん装備しちゃいないよ!!マルチ!何ともないのか?」

 ぎゃあぎゃあ文句を言う綾香を無視して、浩之は目を白黒させながらマルチに訊いた。

「……はあ。そういえば、ひとつも痛くなかったです……なんででしょう?」

 そういってマルチはスカートの裾を両手で摘んでひらひら振り、掛かっている砂埃を払い落とした。

「……冗談抜きで、お前、マルマイマー化していないか?」
「じ、自信は無いのですが……多分、それはないと思います……(汗)」
「いええええええええええいいいいい!!セリチュウ!ホーミングレーザー、承認!」

 米噛みに怒りの四つ角が浮かぶ綾香は、別のアレな小説の自分が乗り移ったかのようなノリでセ
リチュウを指す。

「ま゛」

 綾香の指令を受けたセリチュウはファランクスポッドの蓋を閉じると、今度は両腕を上げ、拳を
握った。そしてマルチのほうへ向くと、その拳を振り下ろしながら開いた。
 すると、セリチュウの両掌の中から幾重もの閃光が走り、マルチめざして殺到する。これはナノロボット型のミサイルを利用した拡散レーザー砲であった。無数のナノロボットがレーザーを引き
ながら宙を駆け抜け、マルチの身体に次々と着弾した。溜まらずマルチは身を竦めてしまう。
 ところが、着弾したハズのレーザーはマルチの体表から全て跳ね返された。この奇怪な現象に、
マルチ自身も唖然となってしまう。

「そ……そんな!!次、セリチュウ・バスターミサイル!!」
「ま゛」

 セリチュウの指先から発射されたペンシルミサイルは、マルチの身体に次々と着弾して炸裂する
が、ぽかんとしているマルチにまったくダメージはない。

「つ……次!セリチュウビーム!!」
「ま゛」

 セリチュウの額から発射された高周波レーザーを、しかしマルチは何もしないのにすべて跳ね返された。

「せ……セリチュウ……シールド……!」
「ま゛」

 困憊しきった綾香の指令を受け、セリチュウはどこから取り出したのか、銀色のマントを取り出
してそれを被った。

「……間違い。それ、防御用……とっととしまって……」
「ま゛」

 セリチュウはその場に座り、黙々と丁寧に畳んで背中にしまった。意外とマメな娘である。

「……こーなると、次はダブルセリチュウコレダーか?(笑)」

 あまりにも非常識な展開に、浩之自身あきれ果てていた。

「こうなったら最終兵器発動!!サテライトキャノン!発動承認!!」
「……了解」

 セリチュウは右人差し指を突き出し、それを頭上にかざした。
 ……ひゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅっっっっっっ!

「……なんですか、この音?」

 セリチュウが新たな相手と判って以来、おろおろするマルチの耳センサーが、上空より届く奇妙
な音を感知していた。

「……これは――」

 唖然とする浩之の声を遮ったのは、突然襲ったスタジアムの天井の炸裂音であった。スタジアム
内に粉塵が巻き上がり、観客たちは咽び苦しんだ。

「な、なにが……って、え?あれを見て、だって?」

 芹香が指すものを見た浩之は、周囲にいっぱい埃が漂っているコトを忘れて瞠ってしまった。
 上空から眩いくらいの光の柱が降りており、その中に、全身から放電を放つセリオが立っていた。

「……え?あの光は、衛星軌道上にある来栖川財団の戦略人工衛星から放射されているマイクロウ
ェーブ波?セリチュウはそのマイクロウェーブをチャージして、ギガワットの超電撃を放つコトが
出来るんだって!!?」
「セリチュウ、Jカイザーフォーメーション!!」
「ま゛」

 綾香の指令を受け、セリチュウはマルチを狙うように両腕を突き出した。するとその両腕が共鳴
しあい、腕の間に電撃が迸り始めた。

「ふっふっふっ。かつて富士山を半分吹き飛ばした超兵器の威力なら、その化け物みたいなピカチ
ュウもイチコロよ!」

 笑いながら言う綾香の目は、すっかり座っていた。キレてしまったようである。

「――ちょっとまてぇぇぇぇぇ!そんなの受けたら、いくらマルチでも持たねぇよっ!に、逃げろ、
マルチ――――」

 狼狽する浩之が、まだ粉塵の中に隠れているマルチに呼びかけた。ところが――

「――なに?」

 慄然としていた浩之の顔が、急に気が抜けたようにポカンとなった。
 粉塵の中からようやく姿を見せたマルチの全身が金色に煌めき、放電を放っていた。

「……ご主人様。何か、物凄い力がみなぎっているんですけど」

 マルチはぽかんとした顔で浩之を見ていた。

「ば、ばかな…………?!来栖川製のポケモン以外には、サテライトキャノンのエネルギーチャー
ジを受けられるハズはないのに………………!?まさか、姉さん?!」

 驚く綾香は、芹香をみた。しかし芹香にもこの事態が理解出来ていないらしく、ふるふるふる、
と首を横に振っていた。

「だ、だって、……本当に来栖川製のポケモンじゃないのぉ?!は、反則よ!!」
「ま、マルチ!綾香が怯んでいる今がチャンスだ!セリオも電気系なら、それなりの倒し方がある
だろう!!」
「そ、それなりの…………」

 電気系の弱点。それは、水。

「ええええええええ???い、イヤですぅぅ!!こ、こんな大勢いるところでアレ使うのわ!!」
「うだうだ言っていると、今度ばかりはお前やばいぞ!!その光っているのを何とか利用してみせろ!!」
「光――」

 赤面していたマルチは、黄金色に輝いている自分の身体を見た。

「あ!なるほど、みんなの目を眩らましたスキを突くンですね!」
「足りないところは勇気で補え!!いけっ!お前の身体が光って唸る!敵を倒せと轟き叫ぶ!シャ
イニング・アクア・シャワー!!!!!!」
「勝手に命名しないで下さぁぁぁい!!ええい、もう自棄ですぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 マルチは全身を震わした。すると身体は一層眩くなり、観客たちは思わず目が眩んだ。

「えええええええええええええええええぃ!!超必殺!!――――」


 しばらくして、観客たちは視界からようやく黄金色がとれた時、スタジアムの中央で水浸しにな
り、ショートを起こして倒れているセリチュウと、妙にさっぱりした顔で溜息を吐いている勝者の
マルチを見た。

「そ……そんな……!!」

 がっくりと膝をついた綾香の耳に、「勝者、クルスガワポケモンジム!」というジャッジの声が届いた。

「凄い!一体どこから出てきたのか、あの水は!?」

 今まで黙り込んでいたアナウンサーが、この意外な結果に驚嘆して絶叫する。しかしマルチも浩
之も、気まずそうに黙り込んだままであった。

「か……完敗……なんて…………え?」

 途方に暮れていた綾香に、いつの間にかやってきていた芹香が手を差し伸べた。

「姉さん……」

 こく。もういいのよ、と無言で告げる芹香であった。
 綾香は、ふぅ、と溜息を吐いて、ようやく微笑んだ。

「……流石は姉さん。悔しいけど、人を見る目は姉さんのほうが上ね」

 そう言って綾香は、マルチと一緒に並んでやってきた浩之を見た。

「あの人、姉さんのコレ?」

 綾香は意地悪そうに笑いながら小指を立てた。芹香は赤面してモジモジし始める。

「……え?そんなんじゃない?……ふーん。なら、あたしが唾つけちゃおうかしら?……って、冗
談よ冗談、そんなに怖い顔しないでよ。――ほら、勇者のご到着」
「おーい、綾香、葵ちゃんは?」
「アオイ?」

 心配そうに訊く浩之に、綾香は葵が入ってるポケモンボールを取り出した。そしてポケモンボー
ルのスイッチを押すと、中からしくしく泣きながらアフロヘアを櫛で梳かしている葵が出てきた。

「……やっぱり……ごめん!!」

 そう言って浩之とマルチが土下座した。葵と綾香は突然のコトにびっくりするが、決してからか
っているのではないコトに気づくと、神妙な面持ちで土下座する二人を見つめた。

「ごめん……。勝負だったとはいえ、葵ちゃんを酷い目に遭わせてしまって……って、え?」

 土下座している浩之の頭を、しゃがんだ葵が指先でつんつんとつつく。驚いた浩之が顔を上げる
と、葵は微笑んで首を振っていた。

「……わたし……つよいヒト……スキです……」

 そういって、浩之の頬にキスする葵。堪らず浩之は赤面する。ポケモンでも可愛いことには変わりがない(笑)

「あのぅ、闘ったのは私なんですけど……(^_^;」
「ひとつ訊きたいんだけど、いい?」

 綾香はマルチに訊いてみせる。

「あなた、いったいどういう身体の構造しているわけ?あれだけの攻撃を喰らって焦げ目ひとつな
いなんて…………?」
(お答えしよう)

 と言ったのは、浩之の回想に巣くう長瀬源五郎であった。

「て、手前ぇ、俺の回想のクセに出しゃばるか?(^_^;しかも他人にも姿をみせやがって(笑)」
(ノンノンノン。気にしない、気にしない。このマルチュウは、あの無敵の超合金Z製なのだよ)
「え?あの伝説の――――(わくわく)」
(――とゆうのは嘘で、この藤田浩之とマルチュウは、異世界からやってきたポケモンなのだ。そ
の為、身体を構成する素粒子がこの世界のものとは多少異なっており、異常に頑強になっているの
だ。それではまた、次回の講釈にて。アディオスアミーゴ!!)

 そういって、長瀬はなぜかスキップしながら浩之の頭の中へ消えていった。

「ひ、非常識なオヤヂめ…………(汗)」
「へぇ……そう言うことだったのか」

 といって、綾香はニヤリと笑う。

「てことは、だ。あなたたち、本当はポケモンリーグに参加する資格なんか無いんだ」
「「へ?」」
「だって、この世界の人間じゃないんでしょ?」
「「うっ…………」」

 綾香に秘密を握られ、ピンチに陥る浩之とマルチ。別にポケモンリーグに出る必要性は無かった
ので出場禁止処分を受けてもどうってコトはなかったハズなのだが、綾香に呑まれてすっかりその
事を忘れて狼狽した。

「だけど、ひとつだけこのまま出場する方法はあるわ」
「「方法?」」

 浩之とマルチが声を合わせて訊くと、綾香は意地悪そうに笑い、

「浩之とやら。あたしと結婚としなさい」
「「ええええええええっっっっっっ!!!!?????」」
「あたしの旦那さんになれば、晴れてこの世界の人間になれるわよ――――って、何よ姉さん?」

 驚く浩之の身体に、顔をしかめる芹香が抱きついた。

「え?そんなコト許さないって?あたしがそう言う気なら、姉さんが結婚するって?」
「「ええええええええっっっっっっ!!!!?????」」

 大汗をかく浩之の頭に、今度は葵が抱きついてきた。

「……浩之さんはわたしのものです!」
「「ええええええええっっっっっっ!!!!?????」」

 さぁ、大変である。いきなり三人から求婚された浩之、何が何だか判らなくなってパニックに陥
ってしまった。マルチはマルチで、どうしよ、どうしよ、と後ろでドタバタとあわてふためいている。
 そのパニックを沈めたものがあった。

「――勝者、ヒメカワジム!!」

 それは、隣のスタジアムから聞こえてきたジャッジの声であった。

「――ヒメカワ……姫川?」
「ああ、姫川琴音がオーナーを勤めるヒメカワジムね。今年の優勝候補のひとつだっていってたわ。
無論、あたしもそのひとりだったけど」
「姫川………………」

 そう言うと、浩之の顔が次第に暗くなっていく。

「ど、どうしました、ご主人様?」
「……マルチ。なんか、嫌な予感、しないか?」

 言われて、マルチも何となく嫌な予感がしてきた。

「…………葵ちゃんは、餓○伝説のテリー某の技を使っていたよな。……バーチャな技を使わなか
ったのは、地味だった所為だと思うが、なにか……そのぅ……なんだ……アレだ、アレ」
「アレ?」
「ToHeartのデモ版」

 ビクッ!途端に凍り付いたマルチは、浩之が何を言いたいのか、即座に気づいた。

「琴音ちゃん自身はポケモンじゃないとすると、だ……」
「まさか……アレですか?」
「ちなみに、あたしたちの勝者が、次に闘う相手があのヒメカワジムになるけど」

 え?と驚く浩之は、懐からトーナメント表を見る。その通りであった。

「「ままままままままままま、まさかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ??????」」

 顔を見合わせて唖然とするマルチと浩之の耳に、予想していたあの咆吼が届いた。

「滅っっっっっっっっ殺ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっっっっっっっっ!!!!!」」

 やばいぞ、やばいぞ!次はやはりあいつなのか?

                 一同、困惑したまま、無責任につづく(汗)

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えー、腕原種ARMです(笑)眠いでチュウ、くそう、重力波めぇ、貴様いったい波動
なのか粒子なのかハッキリせい(笑)気になって眠れないじゃないかぁ(汗)とかゆう
アレな疑問はさておき、いよいよトーナメント戦突入。純粋にポケモン勝負をすると
思った人、残念でした(笑)もうなんでも有りだよーん(^_^;(半分ヤケ(笑))次回の
話を描くために新声社のスト2ムック狩っちゃってるヲレ。普通のあやつにしようか、
メカなあやつにしようかまだ迷っているのですが(笑)さて、どうなることやら。

【いいわけ】
マママの第9話、手間取っています(汗)物語の展開を無理に圧縮したため、もう少
し先に登場するハズだった「彼女たち」が、今回から登場することになったのですが、
ちょっと失敗したかなぁ、と焦っております。詰め込みすぎた感もあり、しかしここ
いらで登場させないと無意味に物語が長くなってしまうし、うぅむ。最悪、第9話の
終わりの展開を第10話の前半にスライドしようかと思いつつ、そうなると勝利の鍵
が鍵じゃなくなるんだよなぁ……うぅっ、どーしよ。そういうわけで現在再構成中。
お待ちの方、もうしばらくお待ち下さい(汗)

【緊急レス】
Koujiさん……いいですなぁ、ホンワカした雰囲気。あかりってやはりこう
                 いうキャラなんだよなぁ。それに引き替え、マルチュウのあ
                 かりは……っていかん、包丁もって襲いかかってくるかもし
                 れん(汗)

 ……あかん、もっとレスしたいけど、眠い……うみゅみゅみゅゅゅゅ(_ _)爆睡突入

http://www.kt.rim.or.jp/~arm/