What’s マルチュウ?:第8話 投稿者:ARM
【承前】……ををっ、続いている(笑)だから雪が降ったんだ(をぃをぃ笑)

(アヴァンタイトル:エメラルド色のはっぱマークがきらめく。)

(暗闇の中。突然発光したスポットライトが、ストゥールに腰掛けている、右目を
眼帯で隠した、妙に筋骨隆々とした初老の紳士を闇の中から浮かび上がらせた。

「……あなた方の中で、ツルギシティという名に心当たりのある方はいらっしゃる
でしょうか。ここは毎年、一流のポケモントレーナーたちが集い、自分たちが鍛え
上げているポケモンの実力をトーナメント方式で競い合う、「ポケモンワールド
リーグ」が行われるコトで有名です。今年もまた、厳しい訓練に耐え抜いた多くの
ポケモンが、ポケモントレーナーとともにやってきております。彼らは皆、今年の
覇者は自らであると自負して――。
 しかしです。そんな彼らも、今年は少々、波乱の予感を覚えているようなのです。

 一昨年の覇者であるツルギシティのトップジム、カシワギポケモンジムは、昨年
春、不幸な事故により、彼のジムを優勝に導いた最強のポケモンとジムのオーナー
を失っていました。だが、今年はそれを補って有り余るくらいの屈強のポケモンを
手に入れ、再び優勝候補の一つとして数えられているのです。カシワギポケモンジ
ムの新たな主力となったその二匹のポケモンが、ツルギシティの予選を無敗無傷の
末に優勝している事実が、絶対の自信に満ちていたハズの彼らに、危機感を与えて
いるのです。

 他にも、ツキシマシティに突如現れた、無茶苦茶強いピカチュウ使いが、ツキシ
マシティの代表権をゲットしたという情報もあります。どうやら今年の大会は、誰
にも予測できない結末が待ち受けているようです。

 第13回を迎えたポケモンリーグ。果たしてその結末は?――――」

 そう言うが早いか、初老の紳士はおもむろに右肩を掴み、上着を一気に引き剥が
すように脱いだ。
 その正体は、異様に形がくっきりと判る(何の?(笑))ハイレグパンツ一丁のナ
イトメア「デカチュウ」こと、長瀬”セバスチャン”源四郎であった。……うぇ。(汗)

「それでは開始します!ポケモンリーグ・ファイト!!レディィィィィ!――――」

 腕を振り上げて絶叫するセバス。しかし、セバスは、直上より振ってきた巨大ポ
ケモンボールと激突し、ポケモンボールに飲み込まれてしまった。巨大ポケモン
ボールの上には、気分が悪そうに青い顔で憮然とするエクセル志保(笑)が乗っていた。

「ええええええぃぃぃぃぃぃぃっっ!!このデカチュウ!勝手に出てくるなっ!!……
あっ、みなさま、お見苦しい点があったコトをお詫びいたしますねぇ(汗)」

 ……閑話休題。うえぇっ(汗)

 ここは、ツルギシティにある「カシワギポケモンジム」。シティ内で一番大きい
ポケモンジムであり、未来のトップポケモントレーナーをめざす少年少女たちが、
大勢通っているところでもある。
 今年は「デカチュウ」セバスの前説通り、優勝候補の一つとして数えられている
コトもあって、活気に満ちあふれていた。
 このジムは、世界に名の知れたトップトレーナーである先代オーナーの柏木賢志
が、昨年春に自動車事故で他界した後、一時はジム閉鎖の危機説が流れたコトも
あったが、その姪である柏木千鶴が後を継ぎ、見事持ち直していた。
 ポケモントレーナーとしてはまだ半人前だった千鶴が、並みいる凄腕のポケモン
トレーナーが所有する屈強ポケモンを次々と蹴散らし、最強のトレーナーとまで
言われるようになったのは、実は千鶴が所有する2匹のポケモンの力によるモノが
大きかった。
 その2匹の実力であるが、闘った相手は口々に「鬼のように強い」と恐れ戦き、
「デタラメな強さがそのままポケモンになった」とまで言わしめるくらい強かった。ツキシマシティ市内でこの2匹にかなうポケモンは今のところいなかった。
ワールドリーグが始まっても、この実力が決して評判倒れするコトはなかろう
 その2匹のポケモンは、現在、ジムの奥にある檻の中で、ふてくされるように管
を巻いていた。

「……俺はポケモンぢゃない」

 そう愚痴をこぼしたのは、2匹のうちの一匹、ピカチュウであった。

「……だいたい、なんでエルクゥの男が血の覚醒をすると、こんなピカチュウの身
体に変化しなきゃならないんだよ。エルクゥ、つったら『鬼』だよ?宇宙を駆ける
狩猟民族が、こんなラヴリィな姿していちゃ、情けないったらありゃしないぜ」
「……弱い犬ほど良く吼える、ふっ」

 ピカチュウのボヤキを一笑に付したのは、檻の片隅で爪をヤスリで研いでいたラ
イチュウであった。ピカチュウより可愛い気が足りないが、しかし斜に構えるその
クールなさまは、妙に様になっている。

「……何、カッコつけてんだよ。い・く・ら・クールに決めたって、ラヴリィって
言葉が嫌みなくらい似合っているぜ、けっ」
「世辞をありがとう」

 このライチュウ、人のあしらい方は心得ているらしい。ピカチュウのこめかみに
怒りの四つ角が浮かんだ。

「――手前ぇ。千鶴さんに呆気なく捕まったクセにカッコつけてんじゃないよ!こ
のライチュウ柳川!」
「……そう言う貴様こそ、しっかり水を克服した『波乗りピカチュウ』に進化した
は良いが、助けた味方に捕らえられるあのぶざまは何なのだ、柏木耕一。狡兎良狗
とはよく言ったものだ、ふっ」

 ライチュウ=柳川に鼻で笑われている、ピカチュウ=柏木耕一。この二人の因縁
は、「What’s マルチュウ?第4話」を参照のこと……とつれないコトは言
わないよん。

【これまでのあらすじ】

 狩猟民族エルクゥの力に覚醒し、人類の頭髪をすべて「アフロヘア」で補完しよ
うと目論むライチュウ=柳川は、最大の障害とみなした、エルクゥの力に覚醒した
ピカチュウ=耕一に無実の罪を着せて罠に陥れた。柏木千鶴とその妹の楓に追いつ
められてあわれピカチュウ=耕一は水門の下へ。その直後、千鶴たちは柳川の口か
ら、すべてが柳川が仕組んだ罠であったことが知る。柳川は楓をアフロヘアにして
倒した後、千鶴に年ま……あ、なんか急に気温が下がった(おもむろに後ろを振り
向くと、出刃包丁を持った「美しい女性」が(轟汗))……し、ひつれいしまひた、
「うら若き可憐な乙女」千鶴お嬢様に無礼な発言を行う暴挙に。しかしライチュウ
は強かった。千鶴お嬢様がピンチになったとき、水の中で死に瀕していたピカチュ
ウを救ったのは、M78星雲からやってきた水系電気系ポケモン、マルチュウで
あった。命を二つ持ってきたマルチュウはピカチュウと耕一にそれぞれを分け与
え、見事ピカチュウ=耕一は水もオッケー!の「波乗りピカチュウ」に進化し、千
鶴お嬢様の危機を救うのであった。目出度し目出度し。

 詳しい物語は一番下にあるURLのマルチュウ第4話を参照に(^_^;をぃをぃ

「……嘘ぱっか(笑)だいたい、俺は水門の下から飛び出した途端、千鶴さんの大ボ
ケの所為で、ポケモンボールでゲットされちまったんだぜ」
「……まったく、思い出すだけでも不愉快なくらい笑える、間抜けな光景だよ」
「そーだよなぁ」

 憮然とする柳川に、耕一は意地悪そうに笑い、

「柳川がゆう、あんな『間抜けな光景』をみていて、あっけに取られていた隙にお
前さん、千鶴さんにゲットされたんだもんなぁ、へっへっへっ」

 ぷち。何かがキレる音がした。

「か〜し〜わ〜ぎ〜こ〜お〜う〜い〜ち〜い〜〜!お〜の〜れ〜は〜な〜〜ぁ〜〜
ひ〜と〜こ〜と〜お〜お〜い〜ン〜だ〜よ〜ぉ〜〜〜〜〜〜!!」
「おぅ、面白ぇ!やる気か?この際ハッキリしようじゃないか!モノはついでだ、
お前には前々から一つ訊きたいことがあったんだ。狩猟民族エルクゥともあろうも
のが、どーして人類アフロヘア補完計画なんて企てるんだ?」
「……ふん。貴様如き凡人に、この私の崇高な夢を理解出来るものかっ!」
「……崇高な目的に動くおまわりさん?はン、笑わせる。アフロヘアにこだわる刑
事かい?まさかお前、小柳トムにあこがれて警官になったなんて言い出すンじゃな
いだろうな?はははは(笑)」

 突然、ライチュウ柳川が、これ以上はないくらいに憮然とした表情で黙り込む。
 人がこのような顔をするときは大抵、図星を突かれたときぐらいである。

「……トムさんをバカにしたな」

 ぼそり、と口を吐いた柳川の呟きを、耕一は聞き逃さなかった。耕一は軽い頭痛
を覚えた。

「柏木耕一!貴様は絶対、ブッ殺す!!!」
「じょ(少し怯んでいる)――上等ぢゃねぇーかぁーっ!!返り討ちにしてくれる!!」

 半ばやけくそになっている耕一と柳川は電撃を放ち始め、にらみ合って一触即発
状態になった。
 そこへ、一人の女性が檻の中に入ってきた。

「あらあら、なにやっているの、二人とも?」
「――あ、チヅルぅ〜〜!何でもないよぉ、ラァイ」

 と、耕一に背を向けて、食事を持ってきた千鶴に、まるで別人のように愛嬌を振
りまくライチュウ柳川。その変わり身の激しさに、耕一はすっかり気が抜け、前の
めりに倒れ込む。

「な、なんつー変わり身の早さ……(汗)」
「今日も元気ね、ライチュウ」
「うん!ボクはいつも元気だよぉ!」

 すっかりブリッ子(死語20)の柳川裕也氏(26歳)は、笑いながら千鶴の胸
に飛び込んで甘える。

「こらこらこら、もう、しようがない甘えん坊さんなんだから……あン」

 妙に色っぽい声が千鶴の口からもれ、耕一はドキッ、とする。調子に乗ったライ
チュウ柳川が、千鶴の胸に頬ずりしているのである。

「ピ!ピィカァァァァァァァァ!!?ピッカピカっ!(訳:こ!このやろう!調子
に乗るんじゃねえ!千鶴さんの貧弱な胸(笑)は俺のものなんだぞ!!離れろ!!)」

 ライチュウ柳川とは違い、耕一はピカチュウモードでは人語を話せないため、ピ
カチュウ語でライチュウに怒鳴りつけた。
 ――次の瞬間、千鶴から繰り出された、スタープラチナの幽波紋よろしくオラオ
ラオラァッ!拳打のラッシュが、ピカチュウ耕一を殴り飛ばしていた。あわれ耕一、
タコ殴りにされて奥の壁にめり込み、クレーターまでこしらえて気絶していた。虫
の息も同然である。

「――はっ?ど、どうしてあたし、耕一さんをボコボコに?!」

 ピカチュウ語が判らない千鶴であったが、悪態だけは本能で判るらしい。流石は
エルクゥの女。

(ふっ、愚かなり柏木耕一。今はこのような醜態をさらしている俺だが、チャンス
がくれば柏木千鶴もまとめてアフロヘアにしてやる。……ふっふっふっ、それにし
てもアフロのし甲斐のある綺麗な髪だよ、この女は。貴之は自分のロンゲを何度も
アフロにさせてくれた、とてもいいヤツだったが、こちらも捨てがたい……)

 顔は笑って、心はダークな野望に燃えるライチュウ柳川。まだ調子に乗って千鶴
の胸に頬ずりしている。

(……うーむ。意外とこの貧乳、捨てがたい(笑))

 そう思った瞬間、ライチュウ柳川は、にこりと笑っている千鶴に、こめかみを両
握り拳でグリグリと押さえつけられる。俗に言う(?)必殺技「梅干し」である。
そのあまりの激痛に、ライチュウ柳川は悲鳴も上げられぬまま気絶してしまった。

「あ?あらあらあら?どうしたの、ライチュウ?」

 気絶したライチュウを見て驚く千鶴。どこまで本気なのか。(笑)
 野望に燃えるライチュウが千鶴を出し抜くには、この偽善的な大ボケをいかにし
て破れるかに掛かっていた。がんばれ千鶴、いまはキミの大ボケが世界の命運を
握っているのだ!(爆)


「――おい、お前。この写真の男に見覚えはあるか?」
「?えーと、何々……『僕たち、ともだちだよね』?おう、メチャむかつく野郎
や。いったい何度こいつのツラ拝んだコトか(怒)」
「……ご主人様ぁ、違う違う(笑)」

 マルチュウに指摘され、浩之は指しだした写真が別人であるコトにようやく気づ
く。慌ててその写真を引っ込めると、今度は「フシギバナ」が写った写真を差し出した。

「しらん」
「あっそ。……うーむ、ツルギシティの人間なら誰もが知っていると思ったのだが
……って、え?その理屈じゃ、インド人はみんなレインボーマンを知っていると同
じモノになってしまいます。って?良く判らない説明だけど、とにかく、ポケモン
が普及していても、必ずしも誰もが知っているわけではない、ってコト?」

 芹香は、こくん、と頷いた。

「まぁ、いいや。さて、とっとと会場であるカシワギポケモンジムへ行きますか」
「はーい!」

 元気良く返事したのはマルチュウ。隣で芹香は、こくん、と頷いていた。

 いよいよ始まるポケモンワールドリーグトーナメント戦。果たして浩之は、あか
りご所望のフシギバナをゲット出来るのであろうか?

                 まだ、つづく(^_^;

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