【承前】しない。(笑)今回は、番外。 退屈な授業。 退屈な毎日。 退屈な、人間。 そして退屈な、自分。 何かを変えてみたかった。 すべてを壊してみたかった。 だけど、そんな力は、僕には無い。 ……無い、と思っていた。 あの日――クラスメートの太田香奈子さんが授業中、いきなり立ち上がってこう叫ぶまでは――。 「ピカチュウ」 ……あれ?太田さん、い、今、なんて言ったの? 「ピカチュウ」 ……あれ?台本と違う……?「セッ○ス」とか「ちん○ん」とかゆうんぢゃなかったっけ? 「ピカチュウ」 ……えーと。(^_^;やはり、聞き間違えじゃない……。 「ピカチュウ!ピカチュウ!ピカピカピカピカピカピカピカピカピカぁっ!!」 わぁ――――――っ!?(笑)太田さんがコワれたぁぁぁぁぁっっ!!(笑) * * * * * * * * 僕は、通学している高校の教師でもある源一郎叔父から、 太田さんが突然コワれた理由を調べるよう頼まれ、校内で聞き込みを開始した。 だけど僕は、どこをどう調べればいいのか判らず、いつしかその足を屋上に向けていた。 そこで僕は、月島瑠璃子さんと出会ったのだ。 「……長瀬くんも……私と同じだよね」 「?」 「長瀬くんも出来るんでしょ?」 「え?何が?」 「ポケモン」 そう言って瑠璃子さんは、右手に持っていたゲームボーイに差し込まれたままの対戦ケーブルの先を 僕に差し出してきた。 刺さっているカートリッジは青色だった。ちぃ、マニアめ。(笑) 「長瀬ちゃん。ミュウツー、届いた?」 ……瑠璃子さん、君も台詞が違う(^_^;なにそれ、ミュウツー、って? 「届いた?小○館のコロコロ編集部からミュウツーのデータが」 ……ちぃ。ひとの話聞いちゃいない。(笑) 「……長瀬ちゃん、すごく才能あるよ。だからそのうち、教えてあげる」 すっかり僕を置き去りにして(笑)、瑠璃子さんは小指を差し出してきた。僕は渋々、 台本に従って指切りした。 「約束したよ。長瀬ちゃん」 * * * * * * * * 源一郎叔父さんに頼まれて学校の鍵を持ってきてくれたのは、 太田さんと同じ生徒会のメンバーでもある、藍原瑞穂さんだった。 太田さんの親友である藍原さんは、僕に叔父さんから預かった鍵を渡すなり、 「……私にも手伝わせて下さい!香奈子ちゃんを元に戻したいんです!」 そういわれても……。第一、危険――は、ないかも知れないけど、(^_^;、 君を巻き込むわけにはいかない……! 「お願いです!――これ以上、香奈子ちゃんが『ピカチュウ』に溺れる姿を見たくないんです!」 ……えーと。 「あたしたち、ポケモンは絶対『ゼニガメ』を立派に育てようと誓ったんです……! いくら人気ナンバーワンのポケモンとは言え、電気系のポケモンは水系のポケモンには弱いんです! いつか二人で、ピカチュウをこてんぱん(死語)にしてやろうと夕日に誓ったのに……しくしく」 ……をいをい、こいつもかい。(^_^; * * * * * * * * 「『ポケモン』騒ぎを起こすヤツが許せないの。あたし、こう思うんだ。きっとそいつらは、 こんなふうにみんなが『ピカチュウ』に夢中になっている様が面白くって、やっているんだって。 だから、そいつらにガツーンと言ってやりたいの。いい加減にしなさいよって!」 うんうん。流石は人気ナンバーワンの新城沙織さんだ。流行に流されていないところは本当、 素敵だ。 ぴぴぴぴぴぴぴぴぴびぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ。 すわ、毒電波か?僕が音に驚くと、新城さんはスカートのポケットに入れていた キーホルダー付きの小さな箱を取り出した。 レンガを組み合わせてようなその箱が奇怪な音の発現点だった。 「やっぱり、今は『デジモン』よねぇ」 ……ぐはっ。(泣)さおりん、キミもか(笑) * * * * * * * * * 夜更けに僕は、瑠璃子さんといっしょに、校舎に入っていった正体不明の人影を追って、 生徒会室の外に立った。その人影は生徒会室に入っていったようであった。 僕が窓から室内を覗くと、そこには今回の事件を引き起こした犯人がいた。 生徒会室を一杯に埋め尽くす、『等身大ピカチュウ』のぬいぐるみ。(対消滅反応爆笑)。 とにかくでかい。その上に数は恐らく3桁はゆうにあるハズだ。1体6,800円(税別) として、これだけ揃えるには100万円以上はかかるだろう。 よくみりゃ、隙間隙間に「おしゃべりピカチュウ」と「てのひらピカチュウ」もある。 こりゃ、4、500万は掛かっているぞ。あーっ、ピカピカとうるさいうるさい(笑) そしてその中央で、何故か裸になって涙を流しながら悦に浸る生徒会長、月島拓也がいた。 「うぉぉぉぉっっっっっっ!!LOVE・LOVE・ピカチュウぅぅぅぅぅぅ!!みんな、 ピカチュウになってしまえばイイんだぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!」 ……お前か!(爆)お前ぇが怪しい毒電波を送っていたのか!(激爆) えぇい!お前なんかコワれてしまえっ! ここに閉じこもって、ずうっと一人で泣いていればいいんだ ! 堪らず頭を抱える僕に、かたわらにいた瑠璃子さんが僕に手を差し出してきた。 「……長瀬ちゃん、淋しくない?」 憮然とする僕に差し出したのは、性格には手ではなく、 その手に握られていたゲームボーイの対戦ケーブルの先だった。 「……対戦、しよ」 ……わるい。僕は、リンクス派なんだ(爆) 終わりだ、終わり(笑) http://www.kt.rim.or.jp/~arm/