What’s マルチュウ?第7話 投稿者:ARM
【承前】……ったって、もう何ヶ月前だよ、をひ。(笑)前回のログだって、とっくにロストしてい
るっつーの(笑)

(アヴァンタイトル:エメラルド色のはっぱマークがきらめく。)

 謎の秘密結社「リーフ団」。
 謎に包まれたその組織は、ある目的を実現する為に日々、暗躍していた。


「『世界の破壊を救うため!』…………ほら雅史、ひさしぶりなんだから、しゃきっとゆいなさい!」
「……えー、やっぱり、ゆうの?」
「男でしょ!それでも世界征服を企む秘密結社『リーフ団』の一員なの?!」
「うーん……わかったよぉ、『世界の平和を守るため!』」
「『愛と真実の悪をつらぬく、ラブミーチャーミーな、かたき役』」
「『雅史と』」
「『志保』!」
「『銀河をかける〈リーフ団〉には、ホワイトホール』」
「『白い明日が待っている!!』――やー、きまった、きまった。本当、久しぶりねぇ」
「……久しぶり過ぎて、『マルチュウ6』の文章からコピー&ペーストしたなんて言えないよねぇ」

 それは言わない約束でしょ、おとっつぁん。

「誰がおとっつぁんよ、この絶世の美少女をつかまえて!?」
「…………長岡君。どこ向いて怒っているのかね?」

 パチぃッ!薄暗い室内に、火花が飛び散った。驚いた志保は慌ててカメラ目線をやめて振り返った。
 志保が振り返ったさきに、派手なデコレーションを施した椅子に座る、詰め襟の制服を着た典雅
そうな青年がいた。
 月島拓也。世界征服を企む「リーフ団」の首領である。拓也は憮然とした眼差しを二人に注いで
いた。線のように細い隙間から注がれる、そのあまりにも冷たい視線に、志保と雅史は身が竦んで
しまった。

「……今日、君たちを呼んだのは他でもない。これを見たまえ」

 拓也が指を鳴らすと、左側の暗闇が四角い光に穿かれた。

「これから映し出すものは、現在、我々『リーフ団』を脅かしている、マルチュウと呼ばれる、新
種ピカチュウの戦闘記録だ」

 拓也がそう言い終えた途端、淡泊な白色の四角に色彩が灯った。

「――ブロゥクンマグナム!!プロテクトシェイド!!ヘル・アンド・ヘヴン!!」

 スクリーンの映像は、緑色の髪をした少女が、醜悪な巨大ロボットを撃破する、ある種の人間に
は血が騒ぐような凄まじい戦闘を撮したものだった。

「……なんですか、それ?」
「見ての通り、マルチュウだ」

 約一分の沈黙。

「……あのぉ、お言葉ですが……今のはどーぉみても、マルマイマーぢゃあ……」

 志保がそう言うと、拓也は、ふん、と鼻で笑い、

「なにをいう。あれはどこから見ても、ピカチュウじゃないか」

 当惑する志保と雅史は、心のなかで、をぃをぃ、とつっこんだ。

「よく見たまえ。あの頭にある二本の黄色いツノ。アレこそピカチュウの証ではないか」

 それ以外の共通項は?と志保は小声で呟いた。第一、あの角は額に装着されているものであろうが。
 しかし、二人には、それ以上ツッコミを入れるコトができない。タダでさえ、今の拓也の周囲は
毒電波の放電現象によってパチパチ火花を上げている。拓也がいらついているといつもこうなる。
この恐ろしい男に逆らってしまい、放出された毒電波に頭を壊されてしまったら大変だ。折角の人
生、台無しである。

「……ンで。あたしらはいったい、こやつになにをすれば?」

 投げやりになる口調を必死に堪えながら、志保が拓也に訊いた。

「倒せ」
「「はぁ?」」

 二人は一応、聞き返してみた。

「倒せ、とゆうたのだ」

「「…………」」

 聞き違いではなかった。あきかに、聞き違いから最初の「き」をとったような内容の命令であっ
た。二人は目で天を仰いだ。

(……志保。どーする、あんなのを?)
(あたしに聞かないでよ!あんなのと闘うんだったら、目の前の○チ○イ倒したほうが楽よ!)

 囁き合う二人を見て、拓也のこめかみに怒りの四つ角が浮かんだ。

「……私の前で胡乱(うろん)な会話はやめたまえ」

 拓也はそういうと、いつのまにか頭上に降りていた紐を引っ張った。すると、志保の足許の床が
突然抜け落ち、志保がその穴へ吸い込まれていった。

「ああああああああああああ〜〜〜〜〜!!??な、なんか、なんか居るぅぅぅぅ!!!」

 直ぐ隣にいた雅史だけが穴に落ちていなかった。雅史は心配そうに穴の中を覗くが、結構深いら
しく、水たまりの中で志保が何かと悪戦苦闘中であることだけが判った。

「大丈夫、軽いお仕置きだ。たかが、100匹ぐらいでは死なんよ」

 100百匹って、何が100匹なんですか?とは怖くて訊けない雅史であった。その一方で、ま
ぁ、まだ穴の中でぎゃあぎゃあ騒いでいるうちは大丈夫だろう、と友達甲斐のない利己的な納得で
妥協した。

「して、諸君らが戸惑うのも無理もない。……そこで、だ……。と、その前に」

 突然、拓也は雅史のほうを指した。
 正確には、雅史の背後にある、巨大なポケモンボールを、である。

「何かねその、ウルトラQの1/8計画を彷彿とさせる巨大ポケモンボールは?」

 今までどうして気づかなかったのか、と雅史は心のなかで愚痴た、拓也が指した巨大ポケモンボ
ール。この中には、「デカチュウ」と呼ばれる「悪夢」が封印されていた。

「はぁ、クルスガワジムの近くにある川の上流から流れてきたものを、志保が拾ってきたのです」
「中身は、何かね?」
「見ないほうが良いと思います。――人として」

 雅史は真顔で応えた。本気で相手を思いやる立派な顔であった。
 しかし普通の人間なら、こう言われたら、余計に見たくなるのが心情である。

「……先ほども言ったが、私の前では胡乱なことは一切認めぬ。開けたまえ」
「……知りませんよ」

 雅史はポケモンボールの開放スイッチに手をかけた。


 志保がようやく穴からはい上がってきた。何故か着ているずぶぬれの服が、至る所食いちぎられ
ていたが、何とか無事のようである。

「……あー、酷い目にあったわよ。あれ?月島首領はどちらへ?」

 志保は、青くやつれた顔で、何事もなかったかのように鎮座する巨大ポケモンボールに手をか
けて俯いている雅史に訊いた。

「……気分を……害された……ようで……先ほど……自室へお戻りに……うぇっぷ」
「…………そう」

 自分が穴に落ちていた間に月島拓也が何を見てしまったのか、雅史の反応を見て良く判った志保
であった。ざまあみろ、と思う気持ち反面、それ以上に、人として、気の毒であると心より思った。

「……うぇ。……それより……首領からの指令……マルチュウの抹殺……あの娘と一緒に……って」
「あの娘?」

 きょとんとする志保が、雅史が指す方向へ向く。
 そこに、一人の女性が立っていた。
 額に何故か。小判を付けた、瑠璃色の髪をもった物静かな美少女。
 そして、どことなく、彼方側の世界を見ているとしか思えぬ、焦点のあっていない彼女の瞳は、
志保に不吉を覚えさせた。
 不安そうに自分を見つめる志保に気づいた美少女は、にこりと微笑んだ。

「……いけない、いけない、おどろかせちゃったよ」
「……あんた……いつからそこに?」
「去年からだよ」

 志保は口をあんぐりとさせて唖然となる。

「……晴れた日は、よく届くから」

 意味不明のセリフに、志保はどう反応して良いモノか戸惑った。

「電波、届いた?志保チャン?」

 何、デンパ、って?志保は当惑するばかりであった。

「……ニャース瑠璃子だよ。……くすくすくす」

 目が笑っていない。ハッキリ言って、これは怖い。

「首領が、彼女を使って、マルチュウを倒せ、だって。どーする?」
「え?――ま、まぁ……それなりに効果はありそうね、ある意味で」

 どう対応して良いモノか判らない志保であったが、明らかに、浩之には充分嫌がらせになる刺客
であるコトには間違いなさそうであったので、多少味方的には難がありそうだが、ニャース瑠璃子
を仲間に加えるコトを認めるのであった。こうして、後に「リーフ団」最強と呼ばれるトリオが誕
生するコトになるのだが、いまは誰もその事を知る由もなかった。

「しかし、本当、あんな怪物のように強そうなヤツ相手に、どうしよう?」


「……へっくしゅん!」

 ツキシマシティのほぼ中央に位置する、来栖川グループ傘下の、一流ホテルのレストランで食事
をとっていた浩之と芹香は、隣に座っている、長瀬源五郎によってピカチュウ仕様に改造(つーか
コスプレだな)されたマルチュウことマルチが突然くしゃみをしたことに驚いた。

「おいおい、ロボットがくしゃみするか?……って、え、先輩?ピカチュウだからくしゃみしても
おかしくないって?いや、そらぁ……、でも、ねぇ」

 どうやら芹香はマルチュウを本物のピカチュウだと思っているようである。まぁ、あの「デカチ
ュウ」をピカチュウと言い張るくらいなのだから、コスプレ程度でも本物に見えるのだろう。

「ところで、先輩。このツキシマシティにも、フシギバナの手がかりはありませんでしたねぇ」

 浩之たちがツキシマシティに滞在してもう2週間。その間、ツキシマシティにいるポケモントレ
ーナーたちと勝負を繰り返していた。マルチュウの攻撃は、電気攻撃。「漏電攻撃」や、精神的ダ
メージを与える超必殺「アクアシャワー」で次々と敵を撃破し、いまやツキシマシティでは向かう
敵無し状態にあった。しかし、浩之があかりに脅迫されて手に入れるコトを命じられたフシギバナ
だけは誰ももっておらず、どうしても見つけるコトが出来なかったのである。

「さて、これから、どうします?……え?ツルギシティにいってみよう?あそこには、一流のポケ
モントレーナーが大勢やってくるから、そこでゲット出来るかも?ふーん、わかったよ、いってみよう」


「え?あの鬼をやつらにぶつけて見ろ、って?」

 ニャース瑠璃子の提案に、志保はひどく困惑した。

「……確かに、あのツルギシティであたしたちをこてんぱん(死語)にした、鬼のように強いピカ
チュウなら、あの化け物みたいなピカチュウと互角に渡り合えるとは思うけどね。でも、どうやって?」

 するとニャース瑠璃子は笑いだし、

「……大丈夫だよ。運命は、もう動き出したよ」

 そのとき志保は今ひとつ、ニャース瑠璃子のどこか別世界に心があるような発言の心意が掴めな
かったのだが、やがてその言葉が指す意味を知ったとき、志保と雅史はニャース瑠璃子に戦慄する
を禁じ得なかった。


「…………うーむ」

 月島拓也は、自室でTVをじっと睨んでいた。TVには、ピカチュウのコスプレをしたマルチの
映像が映っていた。
 拓也はときおり、手元にある「東鳩王マルマイマーVOL1」と書かれたビデオテープに一瞥を
くれると、はぁ、と少し困憊気味に溜息を吐いていた。

「……あー言った手前、まさか見せるテープを間違えてしまったとは言えぬが……まぁ、偶にはや
つらにも緊張感が必要だろう。善哉善哉」

 くっくっくっ、と卑屈そうに笑いながら、拓也はテーブルの上に置かれたチラシの上にそのテー
プを置いた。
 チラシには、こう記されていた。

「
    第13回 ポケモン・ワールドリーグ戦

       開催地 ツルギシティ カシワギジム内コロシアム

                                 」

 どうやら、浩之たちには波乱が待ち受けているようである。


                       まだ、つづく(^_^;

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 もう誰も覚えちゃいまい、「What’sマルチュウ」、突然の復活(笑)。
本当、長らくほったらかしにしていましたこのシリーズ、YAT再開です、
多分(爆)いやぁ、べつにマルマイマー飽きたワケじゃないんですよ。単に、
「ギャグ」が描きたくなってきた、とゆう理由だけなんです。(笑)マママは
ちゃんと第9話はBパートの終わり、オゾムパルスブースターと化した香奈
子との闘いの描写に入っています。
 まぁ、ここ数週間色々なコトがありまして、本当なら一週間前に中断して
いた執筆を再開する予定だったのですが、予定外の裏の仕事が入りまして、
そちらに取りかかっていた所為なんです。なんとか先週の土曜に某PG誌の
入稿を終えまして、ホッとしたのもつかの間、知人から前に公開した「幻相
奇譚」の件でクレーム(つーか意見だな)が入り、もっともな指摘だったの
で改稿を開始しました。改稿したら序盤ですでに元の原稿は9割カットして
しまったとゆう(^_^;設定の変更(今回はJ・Bのようなオリジナルキャラ
は登場しません。逆に、未登場のキャラに頑張ってもらおうかと)やとって
つけたような未消化だったラストの再考など、大幅加筆というか、ほとんど
別の物語になってしまうような気配に。まずは近日、問題の改訂版「正調・
幻相奇譚」を再度ここへアップしてから、マママ第9話の発表となる予定で
す。

【寂しいなぁ】
 うーん。やむを得ずこのコーナーを去る人たちが、最近多い……。忙しく
てレス出来なかったっす、申し訳ない。でも、二度と来るな、とは誰も思っ
ていませんからね。心の整理が着いたらいつでも帰ってきて下さいね。だか
らさよならは言わない。「またね!」。……って、ヲレはまだいるぞヲレは(笑)

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