神界枯伝《metastoa lost fable》 投稿者:里茄野のわく
 「前回までの・復習予習」
 しゃべらないおともだち。
 しゃべれないおともだち。
 しかし言葉を交わしたミレイアは、なにを見たのか。
 兎にも角にも、俺の屍をこえてゆけ。


第8話『狂ってゆく、何か。』


「あ、おねぇちゃん お塩とって」
「はい、どうぞ」
「ありがとっ」
 いつもより、少しだけ早い 朝食。
「ミレイアもかしてほしぃにゅぅ」
 のばすその手には、オーパーツがはめられていた。

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 浩之は、またひとつため息を吐いた。
 未だに自分の感覚が掴めずにいる。
 手が手でない感じ。足が足でない感じ。
 違和感はあるが、不自由ではない。
 だが、さっきからため息が出るのは 他に理由があるからだ。
 きのうの戦い、
 ミレイアの腕に巻き付いたと思った瞬間、オーパーツになったあれは、
 紛れもなく 知っている感じだった。
 オレは知ってるはずなんだ。
 絶対そうだ。
 ……じゃあ、なんで……
      なんで襲ってきたりなんかしたんだろうか?
 話がしたい。
 その オーパーツと、
 葵ちゃんと。

 ……なにやってんだろ オレ。
 こんなとこでさ。
 今までオレなりに考えて生きてきたこと……全部無駄になっちまった。
 もう……戻れねえのかな……
 残して来ちまったもの……いっぱいあったのに。
 ……あいつにも
     ガキの頃からずっと一緒だったあいつにも
  もう会えねえのかな…………

 あいつ って……誰だったっけ……

「なに?」
 ルミーは、視線を落とした。
 その先には 自分の手……ヒロユキ・チャンがあった。
「どうしたの? ルミー」
 カミュがきょとんとした表情で聞いた。
「う、ううん。 はははっ」
 笑って誤魔化すルミーに、カミュとミレイアは顔を見合わせて首を傾げた。

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 その夜、ミレイアは 不安になっていた。
 ひとり部屋のベットの中。
 シーツにくるまって、ベットと壁に体をぴったりとくっつけて、でも収まらない胸の鼓動。
 胸の中をうごめく気持ち。早く持っていきたい何か。
 誰に?
 なにを?
 大切なそこだけが、ぽっかりと抜け落ちている。
 抜け落ちた何かをもう思い出せないのかと思うと、気持ちだけが焦ってくる。だから不安になる。
 昔の記憶に怯え続けている自分が嫌い。
 それ以上深く考えたくないという逃げた心が、身体にも影響している。
 成長ホルモンの不平衡……発育、完全停止。
 9才のままの自分は逃げながら……何かを追い求めてる……。
 今の自分に、現実を理解する勇気はない。大人になったら……分かってしまう。
 出来ない出来ない……自分には出来ない……
 いいの。このままで。
 このままでも、私は平気。 逃げてれば……触れずに済むんだから……。
 でも、今 その心……溶けだそうとしてる。
 その人となら……勇気、出せる気がする。
 ――その人。
 その言葉に ミレイアの心がまたひとつ とくん、と高鳴った。

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 あの人は、自分の知らないところへ行ってしまう。
 一歩踏み出す勇気がない。「待って」と言う勇気がない。
 ……そう、あの時も……
 だから自分の気持ちも伝えられないまま、あの人は行ってしまった。
 もういや、そんなのイヤ!! お姉ちゃん達だけは、そんなこと無いよね?
 ずっとルミーと一緒だよね?
 冷たい廊下、ルミーは カミュの部屋のドアの前に立っていた。

 こんこん……

「……おねいちゃん?」
 外はすでに黒い布に覆われていて、満月だけが、
 その世界の唯一の光のようだった。
「ルミー?」
 少し間が空いて、中からカミュが返事をした。
 深夜。ドアを開けたカミュは、そのあと どうしたの? と言おうとしたのだが、
 ドアのスリッドの向こうにいた少女の表情が、あまりに切なく、
 あまりに痛々しくて、
 なにも言い出すことが出来なかった。
 ただ、手を伸ばし、その細い肩を、抱いた。
 ルミーは、カミュの胸に顔をうずめた。
 薄い布のようなその服を、両手で握りしめて。
「……私……おねえちゃんのこと忘れたりなんかしないよね?
 ミレイアお姉ちゃんも カミュお姉ちゃんも ココに居るんだよね?」
 震えるような声。
 カミュは何か優しい気持ちがこみ上げてくるのに気づいたが、
 それがなになのか 分からなかった。
 いつも通り、声をかけてやりたいと思ったのに、
 自分が感じているのは、何か別の感情だった。
 カミュは我に返る。
 さっきまで 自分にうずまり肩を震わせるルミーを見ていた自分のその瞳が、
 妹を見る目でなかったことに気づいた。
 …………私……。
 じゃあ、どんな目だったのか
 分からない。
 ただ、まだ心の奥だけが 少し熱かった。
「……一緒に 寝ていい?」
 なみだ目で見上げるルミーに カミュは静かに 頷いた。

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 体温の高い体を寄せて眠る妹を見ながら、カミュは思った。

 ――あした、ミカエル様の所に……行ってみましょう……。
 もしかしたら……。
 もう思った以上に時間はないのかもしれないから……。

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 さあ! 皆さんも屍をこえてゆきましょう(笑) のわくです。
 そろそろ「いいのかなぁ……」な展開ですが、ま、それはそれで置いといて……っと。

 皆さんなんかペース異様に速いっすね。
 どんな生活してんだろ(笑)
 1.思いつきが速い。よってネタの洪水。
 2.書くのが速い。思いつきさえすればノンストップ。
 3.両方速い。鬼。
 4.遅いけど一日中でも書いていられる。
 5.あさ起きたら出来ている。
 「さいのー」っちゅーか「そしつ」ってヤツっすかね。
 「5」は自分で書いたのか不安だけど。

 俺は書くのは好きだけど才能はないんで自分で何とかしろってやつなのか
 それ以前に才能ってのは自分で何とかした結果のものなのか……。よって屍ぇ〜。それでは。

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