神界枯伝《metastoa lost fable》 投稿者:里茄野のわく
 「前回までの・復習予習」
 ルミーの孤独。見えない不安。「ひとり」という世界が訪れたら自分になにが残るのか?
 ミレイアの過去。彼女達のもう一つの現実。「理解してしまうこと」を阻止するには?
 カミュの記憶。事実の改ざんと、改ざんされた事実。「無い」とはどういうことなのか?


第6話『安定を欲す、心』


 心地よい風が、吹いていた。
 その風が、一本道の端っこに咲く ちいさなたんぽぽの頭を 優しく撫でていった。
「ミレイアおねーちゃぁーん? あそぼぉー?」
 一本道の行き着く先。
 赤い屋根の可愛らしい家から 今日もあかるい声が聞こえる。

「うにょ なにするにょ?」
「えへへ〜 おままごとぉ」
「うみゅぅ……ルミー ここのつにもなって まだそんな幼稚な ごっこ遊びぃ!?」
「へっへ〜。 九年の歳月をなめてもらっちゃこまるなぁ。シナリオはできてるわっ」

 ばっっ!!!

「しシナリオぉ!?」
「そう。あらすじだけ説明するとぉ、
 昔あるところに器量よしのお后(キサキ)様がいてぇ、
 いぶかしげな魔法の鏡に向かってこういうの
『鏡よ鏡よ鏡さん、この世でいちばん美しいのはだぁ〜れ?』」
「……るみぃ、それってぇ……白雪姫ってんじゃないにょ?」
「う〜ん。元ネタはね。でも少し違うの。
 ある日お后様はみちゃうのよね。鏡に映されたもの……
 そこには 死んだ前后の残した子供である白雪姫(満9才)に乱暴な行いを振る舞う夫の姿がぁ」
「平べったく言うと 乱暴な行いってゆ〜にょはぁ……」
「そうっ! つまりせぇーてきぎゃくたいってヤツね。
 最近愛が感じられなくなった夫が 実はろり〜で、しかもその矛先の向けられたのが……
 前妻の子供っ(であり、実の娘)!!!」
「お后様、まさにダブルパンチにゅうね」
「そりゃぁもう、愛のライバルである前妻の面影残る 幼い顔したコラーゲンの失われていない
 ぷにぷに肌に、アミノ酸・保湿完璧シルクの輝きさらさらヘアーの 小学校低学年児に
 負けたんじゃぁ、日に日に年老いてゆく器量よしのお后様のメンツ・プライド丸つぶれよぉ!」
「恨みも倍増にゃぁ」
「で、ココが重要なんだけどぉ……」ルミーは声のトーンを落としていった。
「まだ幼気な心と身体を汚された白雪姫ちゃんは その瞳になみだをいっぱいためながら
 夜な夜な、独り残されたベットの上、まだ震えの止まらない手で べたべたになった体を拭い……」
「るみぃちゃん? そういうのは……9才の健全なあそびじゃなくてよですよ?」
 にこやかにカミュが立っていた。
「え〜? でもぉ ルミー、せっかく昨日てつやでぇ……」

 しゅいーんっ!!!

「あわわわ ふあ〜い……。ミレイアおねえちゃん、お おえかきしよう……」
「う、うん。ミレイア、ばけねこ描くの!」
 ふたりは 足早に二階へと駆けていった。
「ふふっ ふたりともなかよしさんですねぇ」
 カミュは、そういって微笑むと、洗濯物のかごを持って あかるいひかりの中へと一歩、足を踏み出した。

 自身も少女でありながら、まるで二児の母親であるかのような そんな彼女の優しい、微笑み。

  ・
  ・
  ・

 夜。まどろみの夜道。
 心地よい風で、あるはずだった。
 その風が、暗い一本道の端っこに咲く ちいさなたんぽぽのつぼみを 大きく左右に揺らした。
「カミュおねえちゃん……敵?」
 一本道の行き着く先。
 赤い屋根の可愛らしい家の外、三人の少女はその光 一点を凝視した。
 庭に ひとつ浮かぶ 青白い光。
 それはあたかも 三人から距離を置き、こちらの様子を伺っているかのようだった。
「どうする?」
 ルミーが呟く。
「初めての戦いに……なりそうですわね」
 カミュが その目を細くすぼめた。
「姉さんは戦えないんだから集中的に狙われるかもしれない……安全なところに隠れてて」
 そう言ってカミュはすっと手を伸ばす。
 ミレイアは おろおろしながらも木の陰に隠れた。

 ふたつのオーパーツから、新しい光が二つ。
 それぞれの光から、爪……弓が現れる。
 ソレは、ふたりの身長に見合わないほど 巨大な武器(パーツ)だった。
 地面と水平にウデを広げる弓。
 少女は左手を すい、と伸ばし、その先にあった何か をつかむと
 いきおいをつけて後方へと引く。
 右利きの彼女に、なんら違和感はなかった。
 爆風。
 一瞬、その身体は圧力に押しのめされ、だが 一歩引いた左足が、強く地面をつかむ。
 同時に 乱れた髪は ふたたび静寂を求め、やさしく弧を描いて沈黙。
 引いたその左手には、温かいひかりの帯が絡みついていた。
 細い腕とならび 一直線に、弓と十字をとって交差する。そして、
 少女の 瞳、腕、パーツ その直線上に 青く光る……敵。
 冷たい(閉ざした)視線を放つ、敵。

 ざわり。
 今、すでに今にも地につきそうな右手をもちあげる。
 ぬるくなった辺りの空気を 静かに切り裂いてゆく 爪。
 光の 爪。
 その動きについてこられない小柄な身体は
 関節から ゆらり、と頼りなく流れる。
 しかし、少女の瞳は、
 青く光る敵を 静かに、だが確実に見据える。 眼球の中心に映るそのひかりは 決して
 その中心からずれることはなく、
 あえぐ体はまるで それがひとつのリズム、それが唯一の「正解」であるかのように
 ゆっくりと、背筋を重心に移動させ そして
 少女は最後までうなだれていた手首を伸ばし、顔の高さで ぎゃらりと 構える。
 知っていたかのように。
 まるで 初めから知っていたかのようにパーツをクミタテた ルミーとカミュ。
 落ち着き放った瞳。白い光をまとった ふたりの少女。
 それはまるで
「きたっ!!!」
 ルミーの声が早いか、次の瞬間には すでにその声はかき消され、地面は寸断された。

 がきゅり

 交わし、体勢を立て直すルミー。そのルミーのオーパーツが軋む。……合図。
「くぅらえぇぇぇっ!!!」

 どん!

 圧縮された空気が 突然破裂したかのような衝撃。
 ルミーは、半分地面にめり込んだ青い光に 正確に矢を撃ち放った。
 矢は、まるで槍のように 一本の光の筋となり 空気を吹き飛ばし、真空をまとい
 唸りをあげて 光に叩き
 叩き叩き叩き叩き叩き叩き叩き叩き叩き込まれた。
 沈黙。
 静寂。
 吹き飛んだ地面。
 粉塵が舞い、
 静かに
 空を漂う。気味が悪いぐらいに ゆっくりと、静かに。……来る!?。……来る!!。
 ……来る。
 変化、
 ――青い光。

 青い光は、痛いと思った。
 しかし、
 それが、心が押し潰されそうなほど「淋しい」からだとは
 気づけなかった。
 急速に圧縮されてゆく頭の中で、ただ ひとつの言葉だけを反復し続けた。
 反復しながら、連呼しながら、ゆっくりと立ち上がる。
 霞む視界に映るものは、
 二人分の、見慣れた眼。

 あの眼、知ってる。
 ――ワタシニ 向ケラレルノハ イツモ アノ 眼 ダッタ。
 ――コッチ 向イテルノハ アノ 眼 バカリダッタ。

 反復の速度が速まってゆく。
 それはまるで 心臓の鼓動のように
 止められない衝動、神経をパルスが通り過ぎる前に、
 次のパルスが押し寄せてくる。視神経に ちかちかと痛みが走る。収縮する血管。
 どくん。どくん。どくん。どくん。
 どくどくどくどく
 どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど、

 どくん。

 全てが恐怖の対象。
 リピートのかかる、過去の自分の声。頭の中で聞こえる、ソノ言葉を何度も何度も叫んでいる反復している、
 それは次第に速くなってゆく速くなってゆく速く速く速く速く
 速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く速く
 速くなってゆ速くなってゆく

「、怖イ」

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なんとなく初めて戦ってるし。
しかも言葉の連続多用してるし。
ちょっと『パラサイトイヴ』的表現なの。

【問1】
 牛乳風呂とねるじぇら風呂との相違点について、次の言葉を用いて50字以内でまとめなさい。
 ただし、語句の使用順序は問わないものとする。
 (大量,いささか,JISマーク)

学生にはテストがあるの。人生は永遠に勉強なんだって偉い人が言ってた。
ちなみにねるじぇら風呂ですが、ねるじぇら自体くったことねぇんで分かりません。
なんとなくふたりで入ると危なそう……ってことだけ解ります。

http://www.grn.mmtr.or.jp/~nowaku/attop.htm