神に聞け 投稿者: 里茄野のわく
「ちっ。 なにがトゥー・ハートPS化だ」
 オレ、本名藤田浩之は道ばたに転がっていた空き缶を蹴り飛ばした。
 力無く円弧を描いて飛んでいく。
 その向こうではピンクの服を着た、可愛い小柄な女の子が車を蹴り飛ばしていたのだが、
 それは別の世界キャラクターの話だと感づいたので 見て見ぬ振りをした。
 オレはオレの道を歩けばいい。
 結局その女の子は、ひょろい中年オヤジに援助交際を持ちかけられながらも
 彼氏とおぼわしきパツキン兄ちゃんに助けられていた。
 はあ。
 あいつらも大変だな。

 オレはまた腹が立ってきた。
 自分が想像上の人間だということは素直に認めよう。
 だが、だからといってその私生活をゲームやら本やらにされてもてあそばれた上、
 わけの分からん味付けをされて二次創造物にまでされて黙っていられようか。
 あかりは
「私は浩之ちゃんといられるんならそれでいいよ」
 なんていって話にならねえし、雅史は
「僕はサブキャラだからなんともいえないなぁ」
 と、人ごとのように言う。
 ちょっとアニメで髪の色がハムスターカラーになったからって浮かれやがって。
 オレなんか主役まであかりにとらてちまって……。
 なんであいつはのっけからパジャマでテレビにでれるのか オレには理解できん。
 テレビだから服は脱がなくていいと思って安心してるんじゃないだろうか。
 それは違うぞ。
 日本の深夜番組はそれほど甘くはない。
 あかりは結構ファンがいるからな。
 そのせいでオレが命を狙われるかもしれん。
 せめて 銃の携帯を許可してもらいたいもんだ。
 あかりのファンといえば雅史も怪しくないとは言えない。
 昔からやけにしつこくくっついてきたからな。
 あいつ、女の子には全く興味ないような顔して 実はなに考えてんだかわかりゃしない。
 実際、ハムスターに『あかり』とか名前つけて愛撫してるんじゃないのか?
 もしかしたら実は俺のことが好きだった というオチかもしれん。

 世の中
 信じられるのは自分だけだ。
 だが その『自分』という感性は脳の中のわずかな組成の違いだけであり、
 それを本当に信じていいのかどうかは 誰にも解らないのだ。
 ん? どこからがSSなのかって?
 だから言っただろう。人を頼るなと。 そういうことは
 神に聞け。


『神に聞け』     里茄野のわく

 オレとあかりは学校の屋上。
 放課後の優しい夕日を浴びながら二人の愛を確認し合う。
「ねえ、浩之ちゃん 今なに考えてる?」
 オレの腕の中であかりが呟く。
 その子猫のように甘える姿を見て、オレはまた、あかりが好きだと思った。

長年続けられた幼なじみという関係。
それは成長してゆく二人にとって、とても曖昧な壁であった。
次から次に襲いかかる苦難を乗り越え、
二人はお互いの存在意義をあらためて確認し、
晴れて彼氏彼女の関係へといたったのである。

「浩之ちゃんこんにちはっ」
 日曜日、あかりがオレの家に遊びに来た。
 あかりはすぐ、オレの隣にすわっている女の子に気づいた。
「だれ?」
 オレはあかりにクッションを渡しながら言う。
「おお。オレのいとこの菜香ちゃん。
 いとこがいるってことは知ってたんだけど、あったのは今回が初めて」
 菜香ちゃんはこくりとおじぎをした。
「なんかおじさんの仕事の都合で一週間オレん家であずかることになってんだ」
 一週間。
 その言葉にあかりの表情が少し曇る。
 一週間 浩之ちゃんのおうちじゃHできないんだ……と思ったのだろう。 か。
 しかし、すぐにあかりはいつものほえほえ顔で菜香ちゃんに声をかけた。
「菜香ちゃん、小学生?」
 菜香はすぐに答えた。
「うん。4年生なの」
 菜香は人見知りすることもなくあかりと楽しそうに話した。
「ひとりでよそのおうちに泊まるのって、淋しくない?」
 おいおい。あかり。お前は何でそう人に『淋しい』と言わせたがるんだ?
 菜香ちゃんはふるふると首を横に振って、あかるく 元気に答えた。
「浩之お兄ちゃんと一緒に寝るからぜんぜん平気なのっ(はあと)」

 ぴきぃーーーーーーーーーーーーーん

 オレはがくがく震える歯をかみしめて菜香ちゃんにひそひそ声で言った。
「ななな菜香ちゃんっ そそれは言っちゃいけないってあわわわわわ……」
 無言でうつむくあかり。
 その背後にはドス黒いオーラが発せられている。
 菜香ちゃんもさすがにその状況を察して、なんとか場を取り繕おうと、
 ひとこと。
「あ、あのっ 言っちゃいけないのは
 一緒におふろにはいったこと……じゃなかったんですか? あれっ?」

長年続けられた幼なじみという関係。
それは成長してゆく二人にとって、とても曖昧な壁であった。
次から次に襲いかかる苦難を乗り越え、
二人はお互いの存在意義をあらためて確認し、
晴れて彼氏彼女の関係へといたったのである。
そしてその数ヶ月後、新たなる第三者の手助けを受け、
二人は晴れて最終的なる関係、『他人』へとステップアップしたのであった。

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こんにちは。そしてごめんなさい(笑)
菜香ちゃんの設定は、別に狙ったわけじゃなく ただ単に自分のしゅ(ごふっ)
古典調なオチのストーリーをかきたいなーとおもって(汗)それでいて導入が長い。
車をけ飛ばす女の子は大体分かりますね。可愛いです(あの頃は)

PS. Leaf図書館に主体を置くことにしました。だからこっちは多分これでおしまい。読みには来ますが。
    (http://www.asahi-net.or.jp/~iz7m-ymd/leaf/masata.htm)
    毎週どようびに必ず一本だしたいなーと。

http://www.grn.mmtr.or.jp/~nowaku/attop.htm