新世紀マルチエリオン第四話 投稿者:坩堝(るつぼ)
気紛れ連載(をい)新世紀マルチエリオンの第四話です。
相変わらずエヴァのパロになっていません。
次回予告の方をパロってるのが原因なんですけどね(^^;)
話の内容が次回予告に振り回されてるわけだ………


第四話 雨、待ち続けた後(Crane game's Dilemma)


〜OPENING(とり憑かれたゲーマーのテーゼ)〜

とり憑かれたゲーマーと化した
少年よ正気になれ

かわいい彼女が今
部屋のドアを叩いても
ディスプレイをただ見つめて
微笑んでるあなた
まだ見ぬCGを
求めることに夢中で
夜明けさえまだ知らない
徹夜明けの瞳

だけどいつか気付くでしょう
ドアの外には
君の彼女 狙っている
恋敵(とも)もいること

とり憑かれたゲーマーのテーゼ
現実からやがて飛び立つ
ほとばしる熱いパトスで
世の中をなめてるなら
隠れCGを見つけて笑う
少年よ正気になれ


〜Aパート〜

「はぁ……今日で1週間かぁ。」
目の前の朝食を見て浩之はため息をついた。
「きっと私の教え方が悪いせいだね」
マルチに料理を教えはじめて1週間、あかりの熱心な指導にも関わらず、
マルチの料理は1度も成功していなかった。
「ばぁか、そんなことねぇよ。それにしても上達しないなぁ。
  マルチは学習型だから練習すれば上手くなるはずなんだけどなぁ。
  1度、長瀬のおっさんに聞いてみるか。」



   雨、待ち続
                け
                た
   第四話  後



「デンワダゾ!デンワダゾ!サッサトデナイカ、ゴクツブシ!」
「はいはい、今出るよ……誰だ、電話の呼び出し音こんなのにしたのは……って俺か。」
3日連続の徹夜明けでほとんど死人のような顔した長瀬が受話器を取る。
「はい、長瀬ですけど……」
「長瀬主任、外線の電話なんですから社名と部署名も言わないと……」
「ああ、そうだったな………あ、なんだ藤田君か。
  どうだい、マルチは元気にやってるかね。
  え?……う〜ん、なるほどね。そういうことならマルチを連れて来てくれないか?
  調べてみるから……5時だね?わかった、じゃあ待ってるから。」
受話器を置いた長瀬に他の所員が何事かと聞いてくる。
「マルチの学習プログラムに問題があるかもしれないそうだ。」
「え!バグですか?」
「う〜ん、かもしれないなぁ……まあ、今日の5時に来るそうだから
  そん時にわかるだろうさ。」
「そんなぁ……今日こそ家に帰れると思ったのに。今日も徹夜ですかぁ〜」
「ぼやくな、ぼやくな。可愛い娘のためだ、徹夜の1つや2つ何だって言うんだ。
  2時間やるから仮眠してこい。」
「……はぁ、わかりました。」
足取りが危なっかしい所員達を見送った後、長瀬はディスプレイの前に座った。
「……さてと、とりあえずできるとこからやっておくか。」
長瀬はマルチのバックアップの解析を始めた。
目は生き生きと輝き、先ほどまで倒れる寸前だったとはとても思えない。
彼は根っからの研究者だった……

「どうだった?浩之ちゃん。」
「今日の5時にマルチを連れてきてくれってさ。」
「そう、原因が分かるといいね。」
「そうだな。いい加減、味覚音痴になりかけてたところだしな。」
「ところでマルチちゃんは?」
「今日は日直だとかで先に登校したよ。」
「……(じゃあ、今日は2人で学校に行けるんだ。)」
「ん?何か言ったか?」
「ううん。何でもないよ、それよりも早く食べないと遅刻しちゃうよ。」
「待ってくれ。もうちょっとだから……ううっ」
今日の浩之の朝食はガチガチに固まった甘いおにぎりと水洗いされた沢庵、
腹が破裂した子持ちししゃもに、味噌のだまがアクセントになってる味噌汁だった。

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放課後、浩之はマルチを迎えに教室に向かった。
「お〜い、マルチ。今日は里帰りするぞ。」
しかしマルチはいなかった。
「あれ?いつもなら掃除も終わってオレを待ってるはずなのに……
  おい、マルチはまだ掃除やってるのか?」
浩之は教室から出ようとしていた男子に聞いた。
「え?あいつなら昼休みからいませんよ。」
「なにっ!?」
浩之は慌てて教室を飛び出した。
「あいつが授業をサボるなんて……オレはそんな風にお前を育てた覚えはないぞ〜!」
お前はマルチの父親か?
「あれ?ヒロ!廊下を走っちゃいけないんだぞ……って無視するなぁ〜!」
なんか志保の声が聞こえたような気がしたが絶対に気のせいだ!

1時間後、俺は学校中を探し回ったがマルチは見つからなかった。
「おかしいなぁ……家の鍵はオレが持ってるし、
  ひょっとしてあかりから今日のこと聞いて、先に研究所に行ったのかなぁ。」
浩之は研究所に電話をかける事にした。

「そうですか……いえ、きっと迷子になってるんだと思います。
  ええ、少し送れるかもしれませんので……すみません。」
マルチは研究所にもいなかった。
外は雨が降り出してきた。
「どこに行ったんだぁ〜」
「あ、いたいた。お〜い!ヒロ〜!」
「…………」
「こら!人が呼んでるのに返事位しなさいよ。」
「…………」
「志保ちゃんキィ〜ック!!!」
「え?」
考え込んでいた浩之はピンク色の風を見たと思った瞬間、
顔面に凄まじい衝撃を受け吹き飛ばされていた。
「お〜い、ヒロ。」
「…………」
「返事がない、ただの屍のようだ。」
「……をい」
「あ、生きてた。」
「お前の家では人を呼ぶ時に飛び蹴りを食らわす習慣でもあるのか?」
「あたしのことを無視するからよ。」
「それどころじゃねぇんだよ!マルチが見つからねぇんだ!」
「だからそのマルチから手紙を預かってるわよ。」
「なんでお前が持ってるんだ?」
「当然、あたしが1番信用されているからよ!」
「マルチも人を疑うってことを覚えさせないといけないな。」
「どういう意味よ……」
「そんなことより手紙って?」
「これよ。」
志保から受け取った手紙にはこう書かれていた。
「浩之さん、ごめんなさいです。これ以上、ご迷惑はかけられません。
  この1週間、わたしの失敗した料理を無理して食べてくださって
  ありがとうございます。わたしは研究所に帰ります。
  あかりさんにも今までご指導して頂いたのに申し訳ありませんとお伝えください。
                                                                    マルチ」
「マルチ……」
「ふ〜ん、あの娘もついにヒロに愛想を尽かしたか。」
「お前、この手紙のどこ見てそんな台詞が出てくんだ?」
「文面の表しか見えてないあんたにはわかんないでしょうね。
  でもプロのあたしにはこの手紙の本当の意味がわかるのよ。
  無理矢理、料理を作らされて失敗すると折檻される。
  そんな生活にはもう耐えられません。実家に帰らせて頂きます。
  ってね。」
「勝手に解釈するな!」
「あかりもマルチを見習ってこんな甲斐性無し見捨てちゃえばいいのに。」
「…………」
「あ……ちょっと目がまじ……それじゃ手紙は渡したからあたしは帰るね。」
瞬きする間に志保は視界から消えていた。
「……逃げ足の速さは人間の限界越えてんな。
  しかし研究所に帰るって、いなくなったのが昼休みなのに、
  まだ研究室に着いていないって事は迷子になったな。
  さて、どうするか……」

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「で、セリオにマルチを探して欲しいと?」
浩之は寺女から帰宅するところだった綾香とセリオに頼み込んでいた。
「ま、そういうことだ。たのむぜ、セリオ」
「はい……」
「しかし、君もだらしがないわね。メイドロボットに逃げられるなんて。
  やっぱり、君に任せたのは間違いだったかな?」
「オレの力不足だったのは認めるよ。でももう1度だけチャンスをくれ。」
「素直じゃない。」
「あいつが不安だった事に気付いてやれなかった……
  表面だけ取り繕ってもあいつにはちゃんとわかっていたんだ。
  オレ、あいつのことロボットだって見くびっていたのかもしれない。」
「そんなことないでしょ?一人の女の子として見てくれていたからこそ、
  あの娘も君の側にいられなくなったんだと思うわ。
  正確には、君と彼女の側にね……」
「……オレは3人で楽しくやっていけるんじゃないかって思っていたんだ。」
「それは君の勝手な思い込み。他の2人はそうじゃなかったかもしれないわよ?」
「ちゃんと3人で話し合うさ。」
「そうね……」
「ピピッ!マルチさんを発見しました。」
「よし!迷子の小猫ちゃんを助けに行くとするか。」

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「あうう〜、ここはどこでしょう?」
雨でずぶ濡れのマルチは途方に暮れていた。
「お〜い!マルチ〜!」
「あ、浩之さ〜ん!」
「こんなとこにいたのか。」
「ううっ、ずびばぜぇ〜ん。」
「しかし、こんなとこで迷子になっていたなんてねぇ〜」
綾香は呆れ顔でマルチを見た。
「え?」
「お前、ここって学校の裏門の前だぞ?」
「ええ〜!」
驚くマルチに一同は苦笑するしかなかった。



         新世紀
   MULTIELION
   マルチエリオン



〜CM〜
志保ちゃんShopping!(^o^)b
志保  「今日、紹介するのはこの万能モップ!」
あかり「万能モップ?」
志保  「そう!このモップはねえ、なんと机を動かさずに掃除ができるの!」
あかり「ええ!?机を動かさないで、どうやってモップ掛けするの?」
志保  「実はこのモップ、空間歪曲によるフィールド形成で
        ゴミだけをフィールド内に残す事ができるのよ。
        ゴミを回収した後にフィールドを閉じれば掃除終了ってわけ。」
あかり「へぇ、すごいねぇ。でも空間歪曲なんて凄いことするモップなんて
        ものすごく高いんでしょう?」
志保  「大丈夫!高校生でも買える値段よ!
        今日、紹介したこの万能モップ、限定1本限りでなんと1万円!」
あかり「ええ!?1万円!ちょっと高いよ。」
志保  「う〜ん、そんじゃ半分の5千円だ!
        それとおまけに、このモップを使って代わりに掃除をしてくれる
        メイドロボットも付けちゃおう!」
(志保の指差したところには大きな袋が……中で何かもぞもぞと動いている)
あかり「すごい!メイドロボット付きで5千円なんて私が欲しいなぁ。」
志保  「ふふふ、限定1本限りだから希望者多数の場合は抽選になります。
        購入ご希望の方は、特報美少女こと長岡志保まで直接言いに来てね。」
浩之  「お〜い、マルチ見なかったか?さっきまで掃除してたんだけど……」
あかり「え?マルチちゃん?……ひょっとしてこの袋。」
袋    「む〜、む〜」
あかり「あれ?志保?」
(いつのまにか志保がいなくなっている)
マルチ「あうう、お掃除してたらすごいショックを受けてブレーカーが落ちちゃって、
        気が付いたら袋詰めにされていて……」
浩之  「志保の奴……」
あかり「ええと、この万能モップですが諸事情により販売中止となりました。
        大変申し訳ありませんがご了承ください。」
浩之  「校内放送で商売やるなよ……」
マルチ「早く袋から出してくださ〜い。」



   LITHIUM ION 
   BATTERY
   MULTIELION
  
   EPISODE:3
             Crane Game’s Dilemma



〜Bパート〜

「マルチ……お前、オレが迷惑してたと思っていたのか?」
「…………」
「お前はオレやあかりに迷惑をかかるのが辛くって逃げ出した……
  行動に出る前にオレ達に話して欲しかったよ。」
「ううっ、ずびばぜぇ〜ん。」
「あの手紙を見た時がっかりしたよ……なんで志保なんだ!?」
「え?」
「せめて、あかりにしとけばいいものを、あいつに渡すなんて……」
「あの〜?」
「いいか!志保はなぁ、歩くゴシップ誌なんだ。
  明日、学校中にオレがマルチに捨てられたって噂が広まってるだろうな。」
「そ、そんな、わたしが浩之さんを捨てるだなんて……
  わたしは浩之さんに研究所に帰れって言われるのが恐かったんですぅ〜
  それで、わたし浩之さんの下駄箱に手紙を入れて……」
「ちょっと待て……手紙は志保に渡したんじゃないのか?」
「いいえ?メイドロボットのわたしが人に頼むなんて恐れ多い事できません。」
「志保の奴〜、勝手に人の下駄箱から手紙を取ってやがったのか!
  明日覚えてろよ〜。」
「あの〜?」
「藤田君、話がずれてるわよ……今、人に頼むのが恐れ多いって言ったわよね?」
今まで黙って聞いていた綾香がマルチに話し掛けた。
「はい、わたしは人のお役に立つために作られました。
  そのわたしが人に頼むなんてことはできません。」
「できない?プロテクトでもかかってるの?」
「いいえ。」
「だよなぁ、現にあかりに料理を教えてもらってるんだし……」
「禁止されているわけでもないのに、親しい人以外には頼めない。
  結局、あなたは人に頼むのが恐いのよ。頼んで断られるのが……」
「そんな……」
「結局は自分が傷つくのを恐れているだけなんじゃない。」
「ちょっと、言い過ぎじゃないか?
  マルチは単に人に迷惑をかけたくないだけだよ。」
「そうやって甘やかすだけじゃ駄目よ。
  時には厳しく叱ってやる事も必要なの。
  いい?怖がって何もしないのは逃げてるだけ……
  思い切ってぶつかってみなさい。
  たとえ傷ついたとしてもそれがあなたのためになるのよ。」
「…………」
「すぐには無理みたいだな……」
「まったく、長瀬のおじさまもなんでこんなに気の弱い性格にしたんだか……」
「まあまあ……おっと、もう6時じゃないか。
  長瀬のおっさんもいい加減待ちくたびれてるぞ。」
「え?」
「マルチには言ってなかったけど、もともと今日は研究所に行くつもりだったんだ。」
「や、やっぱり浩之さんはわたしを……」
「違う、違う。ちょっと調べてもらうだけだよ。」
「何をですか?」
「ちょっとな……」
不安がるマルチを連れてオレ達は研究所に向かった。

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「おっ!やっと来たな?」
「すみません。遅くなりました。」
「おや?綾香君とセリオも一緒か?」
「一体、何のためにマルチをここに?」
綾香は長瀬に尋ねる。
「いやねぇ、藤田君からマルチの学習プログラムに問題があるんじゃないかって
  相談を受けてね。それじゃあ、一度見てみようってことになったんだよ。」
「やっぱり、わたしは欠陥ロボットなんですか〜?」
「まあまあ、藤田君の予想が外れていなければ……」
「予想?」
綾香は浩之に訝しげな視線を向けたが、浩之は曖昧に笑うだけだった。
「で、プログラムの方に問題は無かったんですね?」
浩之の言葉に長瀬は頷く。
「ああ、学習した内容は問題無くフィードバックされていたよ。
  さっそく調べてみようか……マルチ、コネクタを出してくれ。」
「はい。」
マルチの手首からコネクタが出てくる。
長瀬はそのコネクタをパソコンに接続した。
「これよりセーフティーモードに入ります……」
マルチはそう言うと眠ったように動かなくなった。
「さてと……ほう、この1週間でかなり学習したようだね。
  データを整理しきれてないものもあるようだ……」
「じゃあ、許容以上のデータによる処理落ちが原因なんですか?」
浩之が尋ねるが長瀬は否定する。
「いや、この程度なら問題無いはずだ。
  う〜ん、信じられんがそうなのかなぁ……」
長瀬は更に深層のデータを調べる……

「ふあぁ……もう3時間よ。私、明日も朝早いから先に帰るわね。」
「ああ、つき合わせちゃってごめんな。
  送っていけないけど、気を付けて帰れよ。」
「ありがとう。でも大丈夫よ。これでも私って強いのよ。」
「へぇ……」
「今度、手合わせしてみる?」
信用してない浩之に綾香はにっこりと微笑んだ。
「いや、止めとく。」
「そう、残念ね。それじゃ、長瀬のおじさまも無視なさらないでね。」
「おお……」
モニターから目を離さず答える長瀬。

綾香とセリオが部屋を出てから、長瀬は浩之に言った。
「綾香君は本当に強いぞ。護衛モードのセリオに勝つくらいだからなぁ。」
「げっ!まじっすか?」
「ああ、女だからってなめられるのが一番嫌いだそうだから、
  藤田君もあまり彼女を刺激しないようにね。」
「……そうします。」
浩之は心の底から思った。

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東の空が明るくなる頃、長瀬はため息をついて浩之に言った。
「どうやら君の予想は間違ってなかったようだよ。」
「じゃあ、やっぱり……」
「ああ、マルチは半ば無意識に失敗するような行動を取っている。
  それも料理に関する事だけ。」
「原因はあかりですか……」
「マルチは君と同じくらい、そのあかり君が好きなようだな。
  彼女との料理教室をずっと続けていたい。そんなところだ……」
「それに、あかりのポジションを奪う事を恐れていた……」
「ああ、全くこの娘は凄いよ。こんなことになるとは予想外だ。」
「そういうことなら手はあります。」
「ほう、どうするんだい?」
「長瀬さん、オレって欲張りなんですよ。」
浩之は志保から聞いたクレーンゲームのジレンマのことを話した。
「う〜ん、マルチかあかり君かの二者択一か……
  で、藤田君はどちらをとるんだい?」
「当然、両方さ!」
「ふっ、こうも堂々と二股宣言するなんてねぇ……」
「あかりじゃなかったらできないだろうけどね。」
「一度、会ってみたいもんだ。」
「今度、うちに招待しますよ。2人の料理を食べに来てください。」
「ああ、楽しみにしてるよ。」

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浩之とマルチは白む空を眺めながら帰宅の途についていた。
「なあ、マルチ……」
「はい、なんですか?」
「お前、あかりとの料理教室楽しいか?」
「はい!」
「でも、お前の料理の腕が上がったらあかりは用無しだなぁ……」
「そ、そんな……」
「なんて言うと思ったのか?」
「え?」
「炊事洗濯ってのは大変だよな。でも2人でやるのは楽しいとは思わないか?」
「…………」
「な?」
「気付いていたんですね?」
「……あかりもお前と一緒にいたいって思ってるよ。」
「浩之さんとあかりさんの間に割り込むような真似はしたくなかったんです。
  でも……」
「でも?」
「それって、傲慢な思い込みですよね。
  浩之さん達がわたしを人間みたいに接してくれるから勘違いしてました。」
「ロボットだから、人間だから、って区別する必要があるのかなぁ……」
「え?」
「男だから、女だから……人間って区別するのが好きだよな……
  区別するのは構わないけど、それでマルチが劣等感を持つ必要はないよ。
  そんなこと言う奴がいたらオレが叩き潰してやる!」
「浩之さん……」
「だから、何も心配する事はないんだよ。
  それにあかりの料理のレパートリーは半端じゃないし、まだまだ増えていくぞ。
  余計な事考えていると、オーバーフロー起こしちまうぞ!」
「はい!」
やっとマルチに笑顔が戻った。
うん、やっぱり女の子は笑っている方が良い。

「あれ?鍵が空いてる……」
不信に思いながらもドアを開けると奥から良い匂いがしてきた。
「あ、浩之ちゃん、マルチちゃん、お帰りなさい。
  ご飯ができてるよ。早く食べないと遅刻しちゃうよ。」
鍋を持って出てきたあかりにオレとマルチは笑顔で答える。
「ただいま!」


つづく


〜ENDING(LEND ME ”TO HEART”)〜

Lend me "To Heart"
And let me play among ourselves
Let me see what Akari is like My sister and mother
In other words, Holy Mother!
In other words, a lunch, give me

Fill my heart with joy
And let me cook forevermore
She is all I long for all I worship and adore
In other words, please be true!
In actual fact, I love Chiduru!!


〜予告〜
他人との接点を最小限にとどめ生きていく保科智子。
彼女が心を開くのは神戸の親友だけだった。
自分より排他的な少女に、浩之は惑う。
次回、智子、心のむこうに。


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坩堝「………………」
志保「返事がない、ただの屍のようだ。」
坩堝「………………」
志保「あれ?何だろうこの鍋……
      美味しそう、ちょうどお腹がすいていたのよね。
      ……(誰もいないわね)それじゃあ一口だけ……」

……数分後、新たな屍が横たわっていた。
教訓、拾い食いはやめよう!(笑)

??「……何が言いたいんですか?(にっこり)」