矢島悲劇・周りは喜劇  悲(喜)劇その2 中編 投稿者:吉兼 言 投稿日:4月19日(水)10時59分
 「はぁはぁはぁ、あの大志とか言う奴といい由宇と言う女といい一体なんなんだよここは」
 彼は正直こみパでも「特に」濃い二人に出会ってしまったのが不幸ではあるがこれから
 もっと不幸な事があること彼は知らない。
 「また、変なところに行ったんじゃねーのか、まぁあの状況じゃしゃーねけど。おっと
  現在地、現在地と」
 そう言って彼はまた例のカタログを見た。
 「少し、近づいたぞ。早いところいかなきゃ」
 そう言って彼が動き出そうとした時、その視線には薄幸系な少女とどう見ても怪しい
 魔法使いの衣装を着た少女が並んで座っていた。
 「あれって、家の学校の来栖川先輩じゃねーのか」
 魔法使いの衣装の少女を見て「あの」来栖川芹香さんと気づいた。矢島(浩之達)の学校で
 は来栖川芹香と言えば、来栖川財閥のお嬢様であり、変な「オカルトマニア」でも有名で
 あった。
 「なんかやばそうだ、とっとと逃げよう」
 矢島は身の危険を察知しすぐに芹香と薄幸系美少女のサークルから逃げ出そうとしたがすでに
 遅く、後ろには異常に我体のいい礼服を着た馬面な爺さんが立っていた。そして矢島が逃げ
 ようと振り向いた瞬間。その爺さんは叫んだ。
 「喝ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ」
 「うわぁぁぁぁぁ」
 「きさまぁ、お嬢様を見て逃げようとしたなぁ」
 「そうだよ、これ以上面倒なことは御免だ」
 「なにが面倒なことじゃ、貴様ぁ、お嬢様とその御親友がお出しになられた同人誌を読んでいけ!!」
 「やだぁぁぁぁぁぁぁ」
 矢島は逃げようとしたが、すぐにその爺さんにガッチリと取り押さえられて芹香達のサークル
 まで「強制連行」された。
 「芹香お嬢様、彩様、お客様を連れて参りました」
 「誰が、お客様だ」
 「喝ぁぁつ、黙れ下郎」
 「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
 芹香と彩と言う女の子がセバスチャン向かって話したが、なにせコンマ数ミリのレベルで口が
 動いているし声は全然聞こえなかった。
 『なんだ、声が全然聞こえ無いじゃねーか』 
 矢島が思っている事はごもっとも、皆様知っている通り。芹香と彩のは声異常に小さく、
 その声を完全に聞き取ることの出来るのは「綾香以下来栖川の親族」「セバスチャン」以下
 来栖川関係者、「浩之と愉快な仲間達」と「和樹とイカ○た仲間達」ぐらいなものである。
 「ありがとう、セバスチャンで御座いますか。私めもお客様を連れてきた価値がありました」
 『なにが、連れてきただ、ほとんど「強制連行」じゃねーか』
 矢島は心でそう思っていたが、セバスチャンはそんなこと気にもせずに矢島をテーブルの前に
 立たせた。あきらめたかのようにそのテーブルにある同人誌に目をやった。
 「さっきのサークルの本とは随分違うようですけど」
 矢島は、辛味亭で見た同人誌と違う事に気づいた。辛味亭の本はそれなりに装飾もあり、糊付け
 されたようにしっかり挟まれていた本に対し、彩&芹香の本はどう見てもB5サイズの用紙にホ
 チキスで止めてある、修学旅行や体育祭のパンフレットのような感じがした、そして矢島の疑問
 に彩が答えた。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「それは、コピー本です。多分前に見たのはオフセット本です、とおっしゃっている」
 又、彩と言う少女が話している事をセバスチャンが訳してた。
 「確かに、そんな感じがする」
 「ええぃ、能書きはいいからさっさと読まんか」
 「わかったよ、読むよ」
 セバスチャンがよけいなことを言うなって感じで矢島に悪態をついた。
 「なになに」
 矢島は彩&芹香の同人誌を読んでみた。
 『なんだ、なんだ、この地味な展開は』
 それは一人の魔法使いが邪神を復活させてしまい、それをその魔法使いの「最愛」の人とその
 「下僕」達と一緒に邪神を倒そうとする話なのだが、これってLeaf Fight97の「ガティム事件」
 を芹香から聞いた彩が二人でアレンジした作品であるが、かなり芹香の思考が反映されてたり
 、彩がこう言うバトル物が苦手な為どっちかというと主人公と魔法使いの恋愛関係に重視され
 ている事からかなりじみ〜な話になっていた。
 「・・・・・・・・」
 「おもしろいですか、と言っておっしゃるどうだ小僧」
 矢島も、変な答えを言ったらどんな事になるのかが怖くて冷や汗までかいていた。
 「どうした小僧、早く答えんか」
 「それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「もしかして、つまらんというのか」
 「そんなことは」
 「つまらないと言うのかぁぁぁぁぁぁぁぁ、お嬢様と彩さまがお作りになられた物をつまら
  ないというのかぁぁ」
 セバスチャンが烈火のように怒りだし、彩は泣き出しそうな顔なり、芹香はその無表情の顔が
 微妙に怒りの色を表していた。
 「この本がつまらないと言う奴は万死に値する。ここで死んで御二人にお詫びせよ」
 「そんな無茶苦茶なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 「問答無用じゃぁぁぁぁぁぁぁx、芹香お嬢様が間違って召還された『魔獣』達を黙らせた。
  長瀬流交殺法滅殺技『刃拳』じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 セバスチャンはそのたくましすぎるほどの肉体から、「魔獣」まで倒したと言う「鉄拳」矢島に
 向かって飛んできた。
 「またですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 セバスの拳をよけきれず、矢島の顔面に劇中。セバスの拳で矢島の顔はめり込み、その直後向こう
 の壁までふっとばされた。
 「なんでだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
 セバスに殴られた瞬間。芹香と彩が人が聞こえる大きさの声で話していた事を彼は知らない。
 その言葉とは・・・・。

 「「死ねばいいのに」」

 矢島哀れ。


 セバスに殴られた後、矢島は反対側の壁際に激突して気を失っていたが、しばらくして気を
 取り戻した。
 「なんだよ、まったくよ〜。あのジジイ思いっ切り殴りやがって」
 彼の話には間違いがある。セバスは一応「手を抜いていた」事を。なにせ全力で殴っていたら
 矢島は殴られた瞬間即死だろう。
 「ここはどこだ」
 その横から、なにか騒々しい声が聞こえた。
 「えいみちゃんさまの本は」
 「世界イチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ」
 「温泉パンダの本は」
 「無駄、無駄、無駄、無駄ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 「なんだ、あの怪しげな集団は」
 そこには、言動が小学生ぐらいの少女とむさ苦しい男どもがテーブルを向かいあって叫んでいた。
 「前より遙かにやばそうだ、逃げよっと」
 逃げようとした矢島を、えいみちゃんさまとか言う女が気が付いた。
 「ちょっとそこの、ぬらりひょん。来なさいよ〜〜〜〜」
 と言うとむさ苦しい男達に取り押さえられて、詠美ちゃんさまとか言う女の前に連れていかれた。
 「このちょ〜じょおうさまの詠美ちゃんさまのサークルを無視するなんていいどきょうどむね
  じゃない」
 えいみちゃん様とか言う女は、かなり期限が悪そうだった。矢島に対してこう話しかけた。
 「あんた、このあたしを誰だとおもってるの」
 「あんただれ」
 「むきぃぃぃぃぃぃぃぃ、なによこのぬらりひょん。もしかしてあの温泉パンダのしたぼく」
 「なに、詠美ちゃんさまを知らない非国民めぇぇぇ」
 「こいつを袋にしちまえ」
 「そうだ、そうだ」
 詠美ちゃんさまとか言う女が怒りし話した途端、周りのむさ苦しい男どもまで俺を「袋」に
 しようとまで感情がヒートアップしていた。さすがにやばいと感じた矢島は自分が同人即売会
 が初めてと言うことを答えた。
 「なにその温泉パンダってよ!、それに俺はここには始めてきたんだからわからね〜よ」
 「えっ、そうなの、そうといってよ」
 矢島が同人即売会が初めてと言うことを聞くと、その女は途端に機嫌が良くなった。
 「そうよね、このじょうていえいみちゃんさまをしらないなんてはじめてのにんげんじゃないと
  しらないわよね〜〜〜」
 『なんなんだ、この女』
 矢島がそう思っているのを無視して、えいみちゃんさまとか言う女の話は続いた。
 「じゃぁ教えてあげる。このあたしは同人界のきんぐおぶきんぐす『大庭詠美』ちゃんさまよぉぉ」
 詠美が話した後それにつられて、野郎どもも一緒に。
 「わぁぁぁぁぁぁ、詠美ちゃんさまばんざぁぁぁぁぁい」
 「詠美ちゃんさまさいこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 「詠美ちゃんさますてきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
 『なんなんだ、こいつら』
 矢島はなにがなんだか分からなくなりぼーぜんとしていた。なにせこんな「日本語」が無茶苦茶
 な女にこれほどまでのファンがいること自体、矢島には不思議以外なんでもなかった。なにせ矢
 島の心は「あかり」一筋だからよけいである。
 「なに、ぼーとしてるのよ、もしかしてこのあたしのびかおにみとれていたの」
 詠美の問いかけでやっと正気に戻った矢島であるが。最初に聞いたセリフがなんか気になったの
 で1つ聞いてみた。
 「あのぉぉぉぉぉぉぉぉ、詠美さん」
 「詠美ちゃんさまといいなさいよ」
 「詠美ちゃんさま、女性なのに『きんぐおぶきんぐす』は間違いでは・・・・・」
 それを聞いた、詠美とその下僕どもは一気に顔色を変えて。そして詠美は泣きながら激怒した。
 「むきぃぃぃぃぃぃぃ、なによ。ちょっとまちがえただけじゃない。それをつっこむなんて、
  あんたやっぱり温泉パンダのスパイ」
 「なんでそうなるんだよ」
 あまりの理不尽にさすがの矢島も怒りだしたが周りの男どもがそれを許さなかった。
 「詠美ちゃんさまを泣かせたなぁ」
 「温泉パンダの下僕め」
 「貴様、やっぱり『袋』だ」
 「そうだ、そうだ」
 むさい男どもはそう言って矢島の周りに集まり、矢島を囲った。
 「なんだ、なんだ」
 「貴様、ちょっと来い。これから我らの『制裁』を受けてもらうぞ」
 「なんで、そうなるんだあぐぐぐぐぐぐぐ」
 そう言っている矢島を男ども口をガムテープで塞ぎ、体を羽交い締めにしすぐ近くの「トイレ」
 に連行された。


 「もごもごもごもごごごごごご」
 (なんでやねぇぇぇぇぇぇぇぇん)

 ご愁傷様。


後編に続く