感想&レスとおまけのSS  投稿者:山浦


――――わああああああああああ――――

 さざなみのように響く歓声を背中に感じながら、来栖川綾香はリングに上がる。
 この瞬間の緊張と興奮。これこそが彼女ともう一人……対戦相手だ……にのみ与えられ
た愉楽の瞬間。この一瞬のために彼女は格闘技をやっていると言っても過言ではないだろ
う。

――――うおおおおおおおおおお――――

 再び、歓声が大きくなる。
 真正面、人混みを掻き分けるように栗色の髪がやってくる……柏木梓……格闘技経験一
年以下というキャリアにも関わらず、その驚異的な身体能力で決勝まで駒を進めた、まさ
に今大会の台風の目。準決勝での坂下好恵との壮絶な打撃戦は大会史上でも類を見ない一
戦であった。

……相手にとって不足はないわね……

 恐らくは生涯最強の敵を前に綾香は酷薄な笑みを漏らす。彼女の中の獣の血が、爆発す
る先を求め沸々と爆ぜる。

……さあ! 早く! 早く早く早く! 早く上がって来なさい! 早く拳を構えなさい!
 あなただって待ってられないでしょう!? あんな楽しい事を! 早く始めましょう
よ! あなたとアタシ、二人の命の炎をぶつけ合って!

 待ちきれない気持ちを、拳を握って耐える。いつしか、梓は綾香の前にいた。

……ふふ。そう、その目よ。そんなおっかない目でアタシを見るんだもの。ふふふ、あん
たって最高だわ…………

「……るすがわ…………」
 ぼそ、と梓が呟く。声が僅かに上擦っている……梓もまた、躯の内から吹き出してくる
『何か』を押さえている。そんな声。
「なにかしら?」
「…………幸せだな…………」
 一瞬、梓が笑みを浮かべる。鬼でも逃げ出しそうな笑みを。
「そうね……全力で…………戦えるなんて……」

 感慨深げに二人は微笑み
――――カァーン――――
 そして、ゴングは鳴った。

「……あぁ…………来栖川…………アンタの…………命の炎を見せてよ…………」

 梓は、拳を構え、そして…………

――――手からびーむ――――

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 ヴェネツィアの姉さん元気ですか? アタシは……いろいろ無事じゃない場所がありま
すがおおむね元気です。そう言うことにしておいて頂戴。
 修行の方は順調ですか? ねえさんは身体が弱いからと、母さんが心配してました。

…………つーか助けて姉さん…………
 波紋法だろーが、『弓と矢』だろーが……この際石仮面でもいいわ…………


「逃げるナァ! あやカ!」
「サ○ヤ人と喧嘩なんかしてられるかぁあああああああああああああああ!!」
「――綾香さま。発電所の特訓を思い出して下さい……」
「そんなもんはやってないっ!」


…………マジで助けてねえさん…………
				綾香より