赤い斜陽の光が、横顔を照らした。 …ただでさえ鋭い俺の面差しが、いっそう切れ味を増す。 ふっ、と泡沫のように淡い笑みを浮べながら、俺は眼前の標的へ視線を向けた。 「………我慢などせずに、受け入れたらどうだ?…楽になるぞ」 甘い言葉で動揺を誘う。 だが、標的は俺から視線をそらし、あらぬ方を見詰めた。 ふん、なかなか強情な奴だ。 だがな、俺から逃れる事はできんよ…。 「受け入れろと言っている、それがお前の本性だ」 「……知らん…」 「知らん…だと?」 「ああっ!俺はそんな事は知らないっ、やった覚えもないっ!」 たいした呆けぶりに、俺は声を立てて笑った。 「ははははっ!俺は何も知らない?やった覚えはないだと? ふざけるのも休み休み言え、 お前は、お前の意志において、この惨劇を産み出したのだ」 「違うっ!」 「違わない。これがお前の本当の本性だ。今までは意識の底で厳重に封じられていた“鬼”。お前はその鬼を解き放ってしまったのだっ!」 眼鏡を通した蔑みの眼差しを男に向けて、恫喝する。 男は身体を震わせた。 ……もうすぐだ。 …もうすぐ、こいつは……落ちる。 自己の鬼を認知してしまった時、こいつは俺のように、落ちるのだ。 「さあ解き放てっ、全てを解放しろ。俺の言う言葉を受け入れろっ!!」 俺はおもむろに立ち上がると、俯く男の背後にまわり込んだ。 そして肩に手を置く。 「……受け入れた先は…、快楽が待っているぞ……」 それが俺の決めの一手だ。 男は、声にならない悲鳴を上げて、机に突っ伏した。 ……落ちた。 「………そう…だ…。俺だ……すべて俺が………」 「俺が、万引きをしたんだぁっ!!」 ……ふっ…。 胸ポケットから、煙草を一本取り出すと、口に咥えた。 「……ちゃんと記帳したな、君」 俺は、ドアの傍らに置かれたデスクに座る、新米の婦警に、言葉を送った。 「はいっ、自供まで二分ジャスト、さすがですね柳川先輩」 「これぐらい、簡単な事さ…」 尊敬の眼差しを、軽く流して、煙草に火を付ける。 紫煙が辺りに漂った。 「俺は、プロだからな」 そう、俺は隆山署における落し屋。 落しの柳川だ。 俺の前では誰もが真実を曝け出す。 「でも、柳川先輩……」 なんだ、まだ俺を誉めたりないのか…。 「なんで盗犯科に、転属させられちゃったんですか?」 …………。 「ふっ……」 ―――――――――――――――――――――――――――― どもっ、二回目の書き込みになります、遊真です。 久々野 彰さん 『吉井さんの事情』 表裏の激しい吉井さんが良い味だしてますね。 たぶん他の二人も同じような事を考えているのだろうなぁ。 いちさん 『少年時代』 いちさんの作品は一応全て読ましてもらっとります。 なんか作風が、僕好みなんですよ。 この作品も、ほのぼのとしていて好きです。