魔術士ヒロユキ・失敗編(2a) 投稿者: 八塚崇乃

  はじめに断わっておきますが、これは某富士見ファンタジア文庫の
 『魔●士オー●ェ●・●謀編』のぱくりであり、著作権の問題などは
 全くクリアしておりません。読む時は細心の注意(特に背後)を払って
 お読みください(笑)。


  第2回「いちいちオレを巻き込むな!
       ――いや、巻き込まないでください……」Aパート

 ドクン、ドクン、ドクン、ドクン……
 音が聞こえる。心臓の音。彼にしか聞こえない彼自身の心臓の音が。
 もう一つ聞こえる。一定のリズムでこの暗い夜の路地裏を歩く時に鳴
り響く音、足音が。
 そして――
「あと、数10m、だな」
 彼は――藤田浩之は路地裏の物陰で小さく呟いた。それと同時に、額
から流れる汗を拭い、右手に持っていた木刀を両手で上段に構え直す。
 ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ……
 浩之の心臓が、これから起こる事への緊張のためか、だんだんと速く
動き出す。比例するかのように、足音も大きくなっている。近づいてい
るのだから当然だろう。
(ああっ、名も知らぬ男キャラよ!  どうかオレを恨まず、『作者』を
恨んでくれっ!)
 そんな自分勝手な事を自らの胸の中で呟く浩之。彼は手の中のエモノ
を強く、強く握り締めた。
 さらに近づいてくる足音。少しづつ心の中で広がっていく罪悪感。そ
れを振り払うために浩之は足音に集中した。
 その足音の主を、襲撃するために。
(あと5m。4、3、2、1、いまだっ!)
 浩之はいきなり足音の主の前に姿を見せた。そのまま手に持っている
木刀を、一気に、相手の頭に、振り下ろした。
「っ!!」
「うぉおおおりゃぁあああーーーーーー!!」


 いまから一時間前……

「この前の続きぃ!?」
 浩之のいつもより数段大きい声が、その町で一番客のこないという設
定の宿屋兼食堂、『フランクズ・イン』に響き渡った。
「そーよ」
 テーブルの上に置かれたサラダスパゲティをフォークでつつきながら
冷静に答える志保。言葉を続ける。
「あんた、『第1回』の時に『作者』の意向を無視してトンズラしたで
しょ。だから『作者』は今回、この前の続きと新しい話をムリヤリ組み
合わせるつもりらしいわよぉ」
「あぁーーー」
 頭を抱えながらうめく浩之。まるで人生で一番不幸な場面に遭遇した
とでもいうような顔をしている。ついでに身体をひねりながらも、
「なんてこった。オレの日頃の行いが悪いからって、『作者』はまだこ
んなふざけたSSを書くというのか……オレはまたこんなふざけた役を
しなきゃならねーのか……」
 ふと身体を止める。浩之は少しの時間、かなり無理のある体勢で思案
した。そして身体を姿勢を直立に戻しながら、サラダスパゲティをせっ
せと口に運んでいる正面の志保に聞く。
「なあ、志保」
「なに?」
「それ、ガセじゃないのか?」
  聞いたとたん、志保は、
「ちょっとヒロ!  志保ちゃんニュースが信じられないっての!?」
 勢いよく立ちあがり、おもいっきりドスンと両手でテーブルを叩く。
「当り前だろ?  いつもいつもいつもいつも……ほとんど不正確な情報
ばっかり持ち込みやがって!  そのせいで苦労するのは大抵オレだけじ
ゃねえのか?  いいかげん人の迷惑ってもんを考えろ!!」
 それを聞くと志保は、左手を腰に添え、右手にサラダスパゲティをつ
ついていたフォークを持ち、指差すかのようにそれの先を浩之に向けた。
「ふっふーーーん♪」
 機嫌が良さそうな志保。口を開く。
「あんたねぇ……わたしや自分の格好を見ても、そんなこと言える訳?」
 ハッとする浩之。彼は志保の服装を見つめる。そして――
「・・・・・・」
 彼の場が、凍りつく。彼女の服装は、ぱりっとした、きっちりとした、
こざっぱりとした例の青いスーツだった。
「・・・・・・」
 完全に凍りついたと思われていた浩之。しかし彼の首は、視線が自分
の服装の方に向く。
「・・・・・・」
 彼の頭の中では、今の自分の服装が黒ずくめであることを認識した。
 その瞬間――
「なにいぃぃぃぃぃぃーーーーーーー!!」
 全てを理解した。

 志保はサラダスパゲティが物足りなかったのか、バグ●ッ●役のフラ
ンク長瀬に作らせた新しい料理――ピザトーストをかじりながら、色々
と虫の息である浩之に話しかけていた。後40分ぐらいしたら彼女の上
司という設定の●イアン役であるキャラが来るという事、男であるとい
う事、その男が来なければ話が進まない事。……という事。……な事。
……事。
 いきなり浩之が立ち上がる。顔には薄笑いなどを浮かべながら。
「どーしたの、ヒロ?」
 コップに注がれた氷入りの水を一口飲みながら志保は聞く。
「トイレ」
 そのまま宿屋の入り口のドアを開ける。浩之の背中にマ●ク役の佐藤
雅史が、
「浩之、トイレなら宿屋の中に――」
 その言葉に答えることなく、浩之は宿屋を飛び出した。

「そうだよな。その男をオレが叩きのめせば、こんな茶番が終わるんだ
よな……」
 狂気の扉を半分開きかけたようなことを言いながら、浩之はどこから
持ち出したかわからない木刀を手に持ち、路地裏を走り出した。
 ほどなくして、浩之は目標を捕捉した。


 そして時間は戻る……

「っ!!」
「うぉおおおりゃぁあああーーーーーー!!」
 浩之の木刀が『男』の頭に直撃する瞬間、紙一重で『男』はその攻撃
を躱し、背中からハリセン(何故?)を取り出した。そのまま『男』は
カウンターの要領でハリセンを浩之の顔面に叩きつけ、
――バッチィィィン!!
 という擬音語があったかどうかは知らないが、とにかくそんな音をだ
しながら、浩之は5mぐらい後方へと吹っ飛んだ。そして地面に落ちる。
「ぐぁっ!!」
 地面と激突する衝撃、それが『男』のハリセンで叩かれて意識が朦朧
としていた浩之を現実の世界へと呼び戻した。
 しかし浩之が立ち上がろうとするよりも速く、『男』は彼の腹に、ヤ
クザキックを1発。
「ギャッ!」
 悲鳴が聞こえなかったかのように『男』はさらに1発、1発、1発、
1発、1発……。

 阿鼻叫喚。

 とうとう悲鳴をあげることもできなくなった浩之。
 『男』は乱れた服装を直し、浩之の頭の辺りでかがみ込み、彼に言う。
「藤田くん、これ、なんの冗談?」
 半分意識を失いかけた浩之の目に映ったのは、黒っぽいトレンチコート
に身を包んだ――
(黒いトレンチコートに三つ編み……三つ編み!?)
「も、もしかして……委員長?」
「そうや」
 そう、『男』は男ではなく女であった。そしてその女――彼女は、2B
のクラス委員長、保科智子だった。

     つづくっ!!(本当に?)                 98/08/01
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≪アトガキ≫
 刹那「ちわっす。八塚の首根っこに万物のエネルギーを
    吸収できる《吸剣ティンエルン》を突きつけて、
    アシスタントやらせろと脅し、もとい、お願いしている刹那久遠です。」
 八塚「(おびえながら)こ、こんにちわぁ。八塚崇乃ですぅ。
    (立ち直り)それより刹那、俺とオマエにしか理解できない内輪ネタはやめてくれ(怒)」
 刹那「すまん(と言いつつ《ティンエルン》をしまう)」
 八塚「今回の『魔術士ヒロユキ・失敗編 第2回 Aパート』、いかがだったでしょうか?」
 刹那「セバスと長瀬主任のファンの方達、期待させてゴメン!!」
 八塚「代りと言っちゃ何だが、保科委員長を登場させました」
 刹那「委員長といえば今回、なんでハリセンなの?」
 八塚「関西人だから」
 刹那「それって偏見じゃない?(と言いながら再び《ティンエルン》を出そうとする)」
 八塚「かっ、関西出身の皆さんっ、申し訳ございませんでしたぁ!!」
 刹那「これで良し、と(《ティンエルン》をしまう)。
    そーいえばさあ、委員長もいいけど、僕たちのあかりはいつ出るの?」
 八塚「・・・・・・」
 刹那「考えてないな?」
 八塚「うん!!」
 刹那「・・・・・・」
――ガスッ!!
 八塚「げぶぅ!(倒れる)」
 刹那「さて、愚か者も僕の鉄拳制裁で沈黙したことだし、恒例の感想コーナー、いってみましょうー!!
    最初は睦月周さんの『夏夜の子守唄』です。八塚の馬鹿が日頃から、そして今回も
     雅史をないがしろにしてるので、雅史の語りで進んでいる話には新鮮さを感じました。
    次はvladさんの『関東藤田組』です。おもいきり笑わせてもらいました。
     一つだけ言わせてもらいますが……里緒ちゃんいつでるの?  セバスは?  長瀬主任は?
    久々野彰さんは二つあります。まずは『自虐の唄』。
     ドラえ●んの対ねずみ用兵器《地球破壊爆弾》よりも効きました。
    もう一つは『ESCAPE』です。
     理奈ちゃん。どーなったんだろう……。
    さて次に――」
 八塚「えーかげん、黙れぇぇぇーーー!!」
――バキッ!!
 刹那「ふっ、いいパンチだったぜ……」
 八塚「俺からも感想です。西山英志さんの『さよなら、夏の日。』。
     とても深くのめり込んで読ませていただきました。いつの日か、梓と初音の後日談が読みたいです。
    次はアクシズさんの『シュラク隊の防壁』、『星のくず作戦』。
     おもしろいのですが……『志保』が『志穂』になってるのはわざとでしょうか?
    みっつ目は――」
 刹那「さて、そろそろお別れの時間となりました」
 八塚「なにを言う。まだ俺の感想が残って――」
 刹那「次回の作品でまた僕がここに出るため、八塚にはユ●ケル飲ませてでも書かせようと考えてますので」
 八塚「おいちょっと!  なんだ?  あの、今にも上から落ちてきそうな幕は!?」
 刹那「パーソナリティはヘボSS書き、八塚崇乃と、アシスタントの刹那久遠でしたー。では再見☆」
 八塚「終わるなーーー!!」
ストンと幕が落ちる。
そして聞こえるか聞こえないかぐらいの声。言い争っているようにも聞こえる。
2,3秒ほど静かになった後、
――ベキャッ!!
――ボフッ!!
金槌で殴り合ったと思われる音が同時に聞こえ――沈黙。

 P.S.
  おばQさま、こんなお馬鹿な文章に感想なんて……
  ありがとうございました。