たれまるち  投稿者:山岡


 薄暗い通路をいく二人の男。 
 通路の両脇に有る扉に記された「研究室」の文字がここがどこかの
研究室であることを知らしめている。
 だがしかし、二人の発する雰囲気は刑務所を訪れた者のそれに等しい。

 一人は白衣を着た―この研究所の研究者であろうか―馬面の男。
 一人は眼光の鋭い―幾度も死線を潜り抜けてきたような―高校生。

 やがて通路も鈍く光る大きな扉へと収束する。
 その前で二人の男は立ち止まる。
「…ここだ、藤田君」
 馬面の男がつぶやく。
 その貌には、疲れのような、喜びのような、混沌とした色が浮かぶ。
 藤田と呼ばれた男は何も答えず、扉へと手を掛けた。

 ギイィッ…

 淡い光とともに藤田の目に飛び込んできたもの。
 信じられない、いや、信じてはいけない光景。
 己の愛したメイドロボの悲痛な姿。
 もはやその愛しい姿は一切の原型をとどめず。
 
 だらしなく垂れ下がった肢体。
 意思の感じられぬ死魚のような瞳。
 
 もはやそれは藤田の愛したHMXー12ではなく…
 
 
「たれぱ○だじゃねえかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「いいやちがうぞ藤田君。たれまるちだよ、たれまるち」
「一緒だぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「どうです、可愛いでしょ?」
「気色悪いわ! 一メートル半はある生々しいたれぱん◯なぞッ!」
「ほらちょっと触ってみて」
「うおぉぉぉぉぉぉ! プニプニして気色悪いぃぃぃぃぃ!」
 吠える浩之。
 だが長瀬の目はその叫びの奥に眠る喜悦を見逃さない。
 だってほっぺたプニプニやめないし。
 
  はわわわわぁ いたいですぅ

「うおっ! 喋った!? …いやこれはッ!?」
「そうです。たれまるちには「たれ」らしさを出すために『電波』
による対話機能を完備! たれまるちの声は心に直接響くんです!
君に届けテレパシー! 脳への負荷による障害なんてなんて糞食らえ!」
「そんな危ねえもん人のマルチにつけんじゃねえ!」
 つっこむ浩之。
 だが長瀬の目はそのつっこみの奥に眠る喜悦を見逃さない。
 だってまだほっぺたプニプニしてるし。
 

「とにかく! マルチはこのまま連れて帰る!」
 
 はわわっ
 
 がばっとたれまるちを抱え、立ち上がる浩之。
 ほっぺたプニプニしたままだけど。
「このままここに置いといちゃ、何されるかわかったもんじゃねえからな!」
 喜色満面では、説得力のかけらもない。
「どおぞどおぞ」
 予想どうりの好評に気を良くする長瀬主任。
「あ、そうそう、あまり頬をいじり過ぎると硬くなってきちゃうから
メンテはこまめに、ここで受けるようにね」 
「うるせえ! もうこんなとこには来ねえよッ!」


 三日で来たのは言うまでもない。


                                    
             
次回予告!

 長瀬の知らないところで秘密裏に進む「たれせりお」計画!
 裏で蠕く黒幕はエクストリームの女王!
 
   ぷにぷにぷにぷに。

    やめてくださいあやかさま

  「ああやっぱこのセリオ可愛いっ!」
 
 しかし神は残酷な運命を少女にあたえる!
 その運命の名はおたふく風邪!

  「ち…ちょっとセリオ…なによその目…!」

    たれあやかさまですね

  「!?」

    ぷにぷにですね
  
  「!!!!」

 命運は尽きたのか!?
 最後の大逆転はあるのか!?
 全て次回を待て!!(嘘)