「セ…セリオ?」 突然、セリオがタイトルそのままの暴言を吐いた。 何が起こったのか理解できず、呆然と立ち尽くす綾香。 「それで空手から寝技のあるエクストリームへ行ったのね…」 いつの間にやら、坂下が。 「それでいつも寝技中心の試合展開になるんですね…」 同じく、葵も。 綾香はようやく状況が飲み込め… 「あ…ち…違うのよ! 別に寝技あるからエクストリームってわけじゃなくて… ほら、もしそうだったら柔道とか行くじゃない普通! それに葵! 寝技多いのは 私、打撃系出身だから相手が密着距離狙ってくるのよ! 不可抗力! そう、 不可抗力なのよぉ!!」 「必要以上に慌ててるわね…」 「はい…」 まったく信用する素振りを見せない二人。 「ほら! セリオ! あんたも本当の事言いなさいよっ!」 「綾香様が同性愛者と言うのは嘘です」 「…ってもっと誠意こめていいなさぁぁぁい!!」 メイドロボ相手に無茶をいう。 見事なまでの泥沼っぷりに、坂下と葵は苦笑し、言った。 「…なーんてね」 「…へ?」 呆気に取られる綾香に、続けて言う。 「あんたがそんな趣味無いことくらいわかってるわよ(がっかり)」 「はい。わたしも綾香さんがそんな気持ちでエクストリームに参加してるんじゃ ないって信じてます(がっかり)」 と、微笑む二人に綾香も安心し… 「…って…『がっかり』って…なに…?」 …なかった。 「え…あ…そ…それは…(汗)」 「あの…その…(汗)」 ぽっ。×2 「『ぽっ』てのもなによぉぉぉぉぉぉっ!!!(泣)」 「…ばれたらしょうがないわねぇ…ねえ綾香…」 ぬがせぬがせ。 「ひっ!?」 「綾香さんのことずっと憧れてて…だから…」 ぬぎぬぎ。 「…『嘘から出た真』というやつですね。綾香様?」 「たっ…助けてセリオぉぉぉ!!」 流石に二人がかりでは手も足も出ず、セリオに助けを求めるが、返ってきたのは、 合掌するセリオの姿のみであった…。 「うわぁぁぁぁぁぁんっ!! お母さぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」 と、目が覚めた。 「ゆ…夢…。夢オチなのね…。よ…よかった…本当に…」 と思わず涙に揺れる視界に大きな物体が浮かぶ。目を凝らしてみれば… ビデオカメラを構えたセリオ。 じぃぃ…。 「な…なにしてんのセリオ…」 「綾香様のあられもない寝姿を盗撮(と)っていました」 即答である。平然と。 「…でそのテープどうすんの…?」 「売ります」 ぷち。 「誰に頼まれたぁ! …浩之ねっ!! 自分にセリオがなついてるからって…」 「いいえ」 「他に誰がいるって言うの!? あいつ以外いないじゃ…」 「坂下様と松原様です」 ぴたり。 綾香が止まる。 ビデオの所為で忘れることのできていた夢の記憶が蘇る… 「もっと言うなら、エクストリームを始め格闘系女性の方々で…」 綾香完全に沈黙。 のち。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!?」 号泣。 「では失礼します」 ビデオをもって逃げるセリオ。しかし綾香は。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」 なおも、号泣。 来栖川邸、外。 「盗撮ってきました」 「お、さんきゅ、セリオ。言ったとおりにしたか?」 セリオがテープを渡した相手は、綾香の予想通り、浩之だった。 「はい。ちゃんと女性に頼まれたことに…」 「よし、偉いぞ。あいつも女に人気あるからまんざら嘘とも思えまい(嬉)」 やはりこの男、邪悪である。 「あの…代金を頂きたいのですが」 「お、悪い悪い。ほら頭寄せて…」 なでりなでり。 「あっ…ありがとうございます…」 しかも、メイドロボさえ陥落する恐るべきサオ師。 「さあて、これ、ダビングして売りさばくかぁ!」 「…お手伝いします…」 後日、来栖川綾香のエクストリーム引退が発表された。 曰く、「寝技恐い」 さもありなんさもありなん。