<前回までのあらすじ> 慣れない会長の仕事(風呂掃除)に苦戦する耕一。 無理がたたり、王道ギャグによって轟沈されてしまった。 楓の看護により復活した耕一の目の前で、 今度は楓と千鶴の泥沼バトルが展開される・・・。 一見『両手に花』な感じだが、 どっちを選んでも後ろから刺されそう・・・。 どうする鶴来屋新・会長、耕一!! 勝利無き戦いは延々と続いていく・・・。 第三話『偽善とマルチと鶴来屋半壊(5月3日)』 ヒュゥゥゥゥゥゥッーーー!! 「・・・た、高ひ・・・・。」 おれは鶴来の外に設置された『五月だよ!!10メートルこいのぼり!!』 を吊るすための全長100メートルの特設鉄塔台に登っていた・・・。 「な・・なぜ俺がこんな・・・こと・・・。」 ビュゥゥゥーーーーーーッ!! 突如!!突風が吹き荒れる!! 「ってどわぁーーーーっ!!」 落ちる!!絶対に落ちる!!俺にはこの後、絶対にこの前のような 『王道ギャグでひゅぅーーーっって鉄塔から落ちていく』 てなオチがまってるんだぁー−−!! もはや錯乱している俺はこいのぼりどころではなかった・・・。 ドバキッ!! 「姉さん!!耕一さんに何やらせてるの!!」 楓が千鶴の部屋(まだ会長室を使っている)のドアを蹴破って入ってきた。 「何のこと?楓?」 千鶴は平然としている。 ・・・ちょっと怒っているが・・・。 「とぼけないで!!姉さん!!あんなとこに耕一さん行かせたら死んじゃうじゃない!!」 耕一の姿は外からも丸見えだった。 ・・・今日の楓ちゃんは少しヒステリックだ・・・。 この前の決着はまだついていないのか!? 「・・・なんであんなこと・・させてるの・・・?」 少し落ち着いた楓ちゃんが静かに問い掛けた。 「それは・・・。」 部屋の中に沈黙が走る・・・。 「こいのぼりを作ったはいいけど、取り付け方考えてなかったんですぅ。てへっ。」 ・・・次の瞬間、会長室は2人の鬼の修羅場と化した・・・。 「うわぁーーーっ。大きいですぅ。」 5人の旅行客が鶴来屋の前に立っていた。 「そうだろ。マルチ?なんたってここは隆山温泉で一番大きいとこだからな。」 「それにしても浩之ちゃん。いいの?芹香さん達より先に着いちゃって?」 「いいんだよ。先輩は『先に行っててください。』って言ったんだから。」 「そうよあかり。だから私達は先にリゾートをエンジョイしてましょう!」 「わかった・・。志保・・。」 「よし!!先輩達が来る前に俺達4人は遊びまくろうぜ!!」 「オオーーッ!!」 「・・ねえ?僕は・・?」 雅史は忘れ去られていた・・・。 「・・ふうふう・・・やっとてっぺんだ・・・。」 俺はようやくてっぺんに辿り着いた。 とりあえず登ってる途中に『王道的ギャグ』が無かったととにほっとする。 いや!!だがまだ油断は出来ない!! 『下に降りるまでが仕事です』というではないか。 風の無いうちに仕事をする。 「・・よし。後はここをボルトでしめて・・・。」 ・・・・・・・六角レンチが無いっ!! そういえば俺はこいのぼりとボルトしか持ってきていなかったぁーー!! なんてこったい!! これがオチなのかぁ!! 馬鹿だ!!俺は大馬鹿ものだぁ!! そうやって苦悩する俺に、 「耕一さぁ−−ん!!」 という呼び声が聞こえてきた・・・。 遥か下を見ると千鶴さんが俺を呼んでいた。 なんだか服がぼろぼろになっているように見えた・・・。 そのころ人気の無くなった会長室では。 「んんーーっ!!んんーーっ!!」 やはり服がぼろぼろになっている楓ちゃんが、 ロープを使って簀巻きにされていた(酷い)。 「んんーーっ!!んんーーっ!!」 (姉さん!!今度あった時は絶対に許さないから!!) しかしその声は誰にも届かなかった・・・。 「ひっ!!ひろゆきさーーん見てくださぁーーい!!」 「なんだ・・ありゃ・・。」 「大きなおさかなさんが吊るされてますぅ・・・。」 「マルチちゃん・・・あれは『こいのぼり』って言うの。」 「こいのぼり?」 「・・それにしてもでっけえなぁーーー。」 「・・まったくだわ・・・。」 「ひろゆきさん!!見に行きたいですぅ!!」 「・・・しゃーねーな。いってみるか。」 浩之たちはこいのぼりを見に行くことにした。 「ねえ・・?僕は・・?」 雅史はまた忘れられていた・・・。 作者が4人以上一気に使うことが出来ないゆえの悲劇であった・・・。 「千鶴さぁーーん!!俺、六角レンチ忘れちゃったぁ−−!!」 何とか事情を説明しようとする俺。 ・・・まてよ。これで事情を説明したところで 俺が直接取りに行かないとだめじゃないか。 また登らないといけないのか・・・。 俺がそう思っていると・・・。 「わかりましたぁ−−耕一さん!!私が耕一さんに六角レンチを投げますぅ!! ちゃんと受け取って下さいねぇ−−!!」 と叫んできた。 って待てーーーーーーーーーーい!! 俺の(心の)叫びも虚しく千鶴さんは『大○ーグボール1号』 のフォームとともに全力で俺に向かって六角レンチを投げた!! うそだろぉー−−っ!! 俺は『これを顔面に食らって鉄塔から落ちる』 と言う『王道ギャグ』つまり『お約束』となってしまうのか!! それだけはいけない!! そんなオチ誰も望んでいないっ!! そうだ!!キャッチすればいいんだ!! そうすれば万事うまくいく!! レンチは徐々に近づいてくる。 タイミングと間合いを見極めろ!! 後少し・・・。 「いまだぁっ!!」 俺は渾身の力を込めて右手を伸ばす!! 「よしっ!!取れるっ!!」 そう思った瞬間!! レンチが手まで後少しのところで急にカーブした!! 「なにぃっ!!」 やばいっ!!取れないっ!! しかし俺は、 「なめるなぁーーーーーーっ!!!!」 最後の力を振り絞り、左手で俺から逃げていくレンチをつかんだ!! 「よっしゃぁーーーっ!!」 って俺、両手とも鉄塔から離れてるぞ!! とたんにバランスを崩す!! 「どわぁぁぁーーーーーっ!!」 俺は鉄塔から落ちていく・・・。 「・・・そうだ・・・カーブしたんなら避ければよかったんだ・・・。」 その頃地上では、 「くすっ。あまいですよ耕一さん・・・。」 千鶴が笑みを浮かべていた・・・。 「・・・すごいですぅ。」 そのころ浩之たちは鉄塔のそばからこいのぼりを見ていた。 「ほんとに大きいね浩之ちゃん・・・。」 「・・・ああ。」 みんなただただ呆然としていた・・・。 「ひろゆきさぁーーん。私真下で見てきますぅ。」 「気を付けろよ・・・。」 マルチが鉄塔に駆け寄っていく。 「ほんとに大きいですぅ。」 「それに・・だんだん大きくなってるみたいですぅ・・・。」 「・・・ってマルチ!!こいのぼりが落ちてきてるぞっ!!」 「きゃぁぁぁーーーっ!!マルチちゃん!!危ない!!」 「逃げろーーーーー!!マルチィーーーーーっ!!」 「はっ!!はいですぅ!!」 必死に逃げるマルチ!! 「ってマルチ!!そっち側に逃げるんじゃないっ!!」 「きゃぁーーっ!!マルチちゃんが落下地点に!!」 「どっ!!どっちですかーー!!」 そうしているうちに、まるでセリオの正確さのように こいのぼりはマルチの真上に落ちた。 そう・・彼女も『王道ギャグ』の呪いにかかっていたのだ・・。 ズズーーン!! こいのぼり(と耕一)が落下した。 大振動が起こる。後にはぼろぼろになった耕一とマルチが残されていた・・・。 「ううっ・・またこんなオチ・・・。」 「ううっ・・いたいですぅ・・・。」 「・・・・・。」 「・・・・・。」 「・・・・・。」 「・・・・・。」 「・・・・・。」 周りが沈黙に包まれる・・・。 「・・・ねえ?だから僕は・・・?」 出番のない雅史はまだつぶやいていた・・・。 「んんーっ!!んんーっ!!」 そのころ楓はまだ誰にも発見されぬまま簀巻きにされていた・・・。 「んんんっーーーーっ!!」(これがオチ) <次回予告> またまた大暴走した鶴来屋ファイト98!! だがまだゴールデンウィークは続く!! 超能力、格闘、狩猟、貧乏、そしてツッコミ!! 更に増えるTH軍団。 果たして作者は話を収集できるのか!? 「4人以上はうごかせません・・・。」 次回、鶴来屋ファイト98 『異種格闘技タイトルマッチ戦(5月4日)』 『最近の楓は壊れぎみ・・・。』