鶴来屋ファイト98 その3 投稿者:結城 光(紫音)
<前回までのあらすじ>
慣れない会長の仕事(風呂掃除)に苦戦する耕一。
無理がたたり、王道ギャグによって轟沈されてしまった。
楓の看護により復活した耕一の目の前で、
今度は楓と千鶴の泥沼バトルが展開される・・・。
一見『両手に花』な感じだが、
どっちを選んでも後ろから刺されそう・・・。
どうする鶴来屋新・会長、耕一!!
勝利無き戦いは延々と続いていく・・・。

第三話『偽善とマルチと鶴来屋半壊(5月3日)』

ヒュゥゥゥゥゥゥッーーー!!
「・・・た、高ひ・・・・。」
おれは鶴来の外に設置された『五月だよ!!10メートルこいのぼり!!』
を吊るすための全長100メートルの特設鉄塔台に登っていた・・・。
「な・・なぜ俺がこんな・・・こと・・・。」
ビュゥゥゥーーーーーーッ!!
突如!!突風が吹き荒れる!!
「ってどわぁーーーーっ!!」

落ちる!!絶対に落ちる!!俺にはこの後、絶対にこの前のような
『王道ギャグでひゅぅーーーっって鉄塔から落ちていく』
てなオチがまってるんだぁー−−!!
もはや錯乱している俺はこいのぼりどころではなかった・・・。

ドバキッ!!
「姉さん!!耕一さんに何やらせてるの!!」
楓が千鶴の部屋(まだ会長室を使っている)のドアを蹴破って入ってきた。
「何のこと?楓?」
千鶴は平然としている。
・・・ちょっと怒っているが・・・。
「とぼけないで!!姉さん!!あんなとこに耕一さん行かせたら死んじゃうじゃない!!」
耕一の姿は外からも丸見えだった。
・・・今日の楓ちゃんは少しヒステリックだ・・・。
この前の決着はまだついていないのか!?
「・・・なんであんなこと・・させてるの・・・?」
少し落ち着いた楓ちゃんが静かに問い掛けた。
「それは・・・。」
部屋の中に沈黙が走る・・・。
「こいのぼりを作ったはいいけど、取り付け方考えてなかったんですぅ。てへっ。」
・・・次の瞬間、会長室は2人の鬼の修羅場と化した・・・。

「うわぁーーーっ。大きいですぅ。」
5人の旅行客が鶴来屋の前に立っていた。
「そうだろ。マルチ?なんたってここは隆山温泉で一番大きいとこだからな。」
「それにしても浩之ちゃん。いいの?芹香さん達より先に着いちゃって?」
「いいんだよ。先輩は『先に行っててください。』って言ったんだから。」
「そうよあかり。だから私達は先にリゾートをエンジョイしてましょう!」
「わかった・・。志保・・。」
「よし!!先輩達が来る前に俺達4人は遊びまくろうぜ!!」
「オオーーッ!!」
「・・ねえ?僕は・・?」
雅史は忘れ去られていた・・・。

「・・ふうふう・・・やっとてっぺんだ・・・。」
俺はようやくてっぺんに辿り着いた。
とりあえず登ってる途中に『王道的ギャグ』が無かったととにほっとする。
いや!!だがまだ油断は出来ない!!
『下に降りるまでが仕事です』というではないか。
風の無いうちに仕事をする。
「・・よし。後はここをボルトでしめて・・・。」
・・・・・・・六角レンチが無いっ!!
そういえば俺はこいのぼりとボルトしか持ってきていなかったぁーー!!
なんてこったい!!
これがオチなのかぁ!!
馬鹿だ!!俺は大馬鹿ものだぁ!!
そうやって苦悩する俺に、
「耕一さぁ−−ん!!」
という呼び声が聞こえてきた・・・。
遥か下を見ると千鶴さんが俺を呼んでいた。
なんだか服がぼろぼろになっているように見えた・・・。

そのころ人気の無くなった会長室では。
「んんーーっ!!んんーーっ!!」
やはり服がぼろぼろになっている楓ちゃんが、
ロープを使って簀巻きにされていた(酷い)。
「んんーーっ!!んんーーっ!!」
(姉さん!!今度あった時は絶対に許さないから!!)
しかしその声は誰にも届かなかった・・・。

「ひっ!!ひろゆきさーーん見てくださぁーーい!!」
「なんだ・・ありゃ・・。」
「大きなおさかなさんが吊るされてますぅ・・・。」
「マルチちゃん・・・あれは『こいのぼり』って言うの。」
「こいのぼり?」
「・・それにしてもでっけえなぁーーー。」
「・・まったくだわ・・・。」  
「ひろゆきさん!!見に行きたいですぅ!!」
「・・・しゃーねーな。いってみるか。」
浩之たちはこいのぼりを見に行くことにした。
「ねえ・・?僕は・・?」
雅史はまた忘れられていた・・・。
作者が4人以上一気に使うことが出来ないゆえの悲劇であった・・・。

「千鶴さぁーーん!!俺、六角レンチ忘れちゃったぁ−−!!」
何とか事情を説明しようとする俺。
・・・まてよ。これで事情を説明したところで
俺が直接取りに行かないとだめじゃないか。
また登らないといけないのか・・・。
俺がそう思っていると・・・。
「わかりましたぁ−−耕一さん!!私が耕一さんに六角レンチを投げますぅ!!
ちゃんと受け取って下さいねぇ−−!!」
と叫んできた。
って待てーーーーーーーーーーい!!
俺の(心の)叫びも虚しく千鶴さんは『大○ーグボール1号』
のフォームとともに全力で俺に向かって六角レンチを投げた!!
うそだろぉー−−っ!!
俺は『これを顔面に食らって鉄塔から落ちる』
と言う『王道ギャグ』つまり『お約束』となってしまうのか!!
それだけはいけない!!
そんなオチ誰も望んでいないっ!!
そうだ!!キャッチすればいいんだ!!
そうすれば万事うまくいく!!
レンチは徐々に近づいてくる。
タイミングと間合いを見極めろ!!
後少し・・・。
「いまだぁっ!!」
俺は渾身の力を込めて右手を伸ばす!!
「よしっ!!取れるっ!!」
そう思った瞬間!!
レンチが手まで後少しのところで急にカーブした!!
「なにぃっ!!」
やばいっ!!取れないっ!!
しかし俺は、
「なめるなぁーーーーーーっ!!!!」
最後の力を振り絞り、左手で俺から逃げていくレンチをつかんだ!!
「よっしゃぁーーーっ!!」
って俺、両手とも鉄塔から離れてるぞ!!
とたんにバランスを崩す!!
「どわぁぁぁーーーーーっ!!」
俺は鉄塔から落ちていく・・・。
「・・・そうだ・・・カーブしたんなら避ければよかったんだ・・・。」
その頃地上では、
「くすっ。あまいですよ耕一さん・・・。」
千鶴が笑みを浮かべていた・・・。

「・・・すごいですぅ。」
そのころ浩之たちは鉄塔のそばからこいのぼりを見ていた。
「ほんとに大きいね浩之ちゃん・・・。」
「・・・ああ。」
みんなただただ呆然としていた・・・。
「ひろゆきさぁーーん。私真下で見てきますぅ。」
「気を付けろよ・・・。」
マルチが鉄塔に駆け寄っていく。
「ほんとに大きいですぅ。」
「それに・・だんだん大きくなってるみたいですぅ・・・。」
「・・・ってマルチ!!こいのぼりが落ちてきてるぞっ!!」
「きゃぁぁぁーーーっ!!マルチちゃん!!危ない!!」
「逃げろーーーーー!!マルチィーーーーーっ!!」
「はっ!!はいですぅ!!」
必死に逃げるマルチ!!
「ってマルチ!!そっち側に逃げるんじゃないっ!!」
「きゃぁーーっ!!マルチちゃんが落下地点に!!」
「どっ!!どっちですかーー!!」
そうしているうちに、まるでセリオの正確さのように
こいのぼりはマルチの真上に落ちた。
そう・・彼女も『王道ギャグ』の呪いにかかっていたのだ・・。

ズズーーン!!
こいのぼり(と耕一)が落下した。
大振動が起こる。後にはぼろぼろになった耕一とマルチが残されていた・・・。
「ううっ・・またこんなオチ・・・。」
「ううっ・・いたいですぅ・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
周りが沈黙に包まれる・・・。
「・・・ねえ?だから僕は・・・?」
出番のない雅史はまだつぶやいていた・・・。

「んんーっ!!んんーっ!!」
そのころ楓はまだ誰にも発見されぬまま簀巻きにされていた・・・。
「んんんっーーーーっ!!」(これがオチ)

<次回予告>
またまた大暴走した鶴来屋ファイト98!!
だがまだゴールデンウィークは続く!!
超能力、格闘、狩猟、貧乏、そしてツッコミ!!
更に増えるTH軍団。
果たして作者は話を収集できるのか!?
「4人以上はうごかせません・・・。」
次回、鶴来屋ファイト98
『異種格闘技タイトルマッチ戦(5月4日)』
『最近の楓は壊れぎみ・・・。』