<前回までのあらすじ> 今までごく普通?な大学生だった柏木耕一。 しかし従姉妹の千鶴からの電話によって彼の人生は大きく変わろうとしていた。 突如知らされる鶴来屋会長(あれ?)の真実。 そして千鶴は彼に鶴来屋会長(あれれ?)を継げと言ってきた。 吹き荒れる偽善の嵐。 果たして耕一は生き延びることが出来るのか? そして気づく作者!! 「社長じゃなくて会長だった・・・。」 どかーーん!! 自爆。 「まさたさんあのまま図書館に入れないで−−っ!!(涙)」 もうだめかも・・・。 第二話『広がる不安』 ・・・カポーーン ゴシ・・ゴシ・・ゴシ・・ ここは鶴来屋自慢の温泉浴槽である。 その入り口の前には『準備中』の看板が立っており、 中では一つの人影がせわしなく動き回っていた・・・。 ゴシ・・ゴシ・・ゴシ・・ シャッ・・シャッ・・シャッ・・ ザザ−−−−。 「・・・ふう。ここはこれで良しと・・・。」 ようやく一つの風呂の掃除が終わりその男・・柏木耕一は休憩をいれる。 「・・・それにしても、まだこんなにやらないといけないのか・・・。」 周りにはあと五つ風呂が残っている。 到底、一人では丸一日かけても出来ない広さである。 「・・・なんで俺がこんなことしなくちゃいけないんだ・・・?」 もっともな意見である。 千鶴さんの独断だけで新・鶴来屋会長となった俺。 鶴来屋が千鶴さんの独裁運営でないかぎり不満が来ない方がおかしい。 とりあえず(強引に)社員達を納得させ、 俺は『会長代行補佐心得見習い』通称『ホサ』となった。 しかしこのままではいつまで経っても社員達との絆は生まれない。 千鶴さんは、 「今までは私の美貌が社員達を虜にしていたんですが・・・。」 と言っていた。 自分で言うなよ・・・。 俺はそう思いつつも千鶴さんの話を聞く。 「耕一さんが社員達との絆を作るためには『偽善』しかありません。」 「偽善ですか・・・。」 「そうです・・・。だから耕一さんは『会長の立場でありながら熱心に下っぱ労働』をポリシーにして下さい。」 「・・・はい。」 千鶴さんのもっともらしい意見?に納得する俺。 「頑張ってくれよ・・・。」 足立さんが励ましてくれる。 (・・・この人も鶴来屋会長の真実を知っていたのだろうか・・・。) 俺は不意にそう思い、足立さんの笑顔に恐怖を憶えた・・・。 「耕一さーーーん。」 休憩をしていた俺に千鶴さんが会いに来てくれた。 「ほんとに大丈夫ですかぁ。無理しないで下さいねぇ。」 笑顔で話し掛けてくる。 ・・・そういえば千鶴さん、会長を辞めてから元気になったなあ・・・。 とっても笑顔が似合ってるし・・・。 「・・・そんなに見つめちゃイヤですぅ。」 ・・・けどこれは少し明るすぎだぞ。 精神年齢が一桁に戻っちゃったんじゃないのか? 「何考えてるんですかぁ?」 「い、いえ、何も・・・。もう仕事を再開しないと・・・。」 「そうですかぁ?それじゃぁ頑張ってくださぁい。」 ・・・これはこれでいいかも・・・。 「さてと・・あっ千鶴さん!せっけんとってくれない?」 「はいですぅ。」 側のせっけん入れに近づいていく。 突如、 「きゃぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」 いったい、どうやったらそんなこと出来るのかというくらいに せっけん入れをまるごとぶちまける千鶴さん。 「だっ!大丈夫ですか千鶴さん!!」 そう叫ぶ俺の前に転がってくる沢山のせっけん。 当然の如く、そのせっけんを踏みつける俺。 「って、どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」 当たり前のようにせっけんに乗ったまま滑っていく俺。 当たり前のようにたらい置き場に突っ込んでいく。 ドガシャァー−−−−ン!! カランカラン(たらいの音) カポッ!!(俺の頭にたらいがはまる音) 「・・・ってド○フかい・・・こくっ。」 「だいじょうぶですかぁーー耕一さぁん?」 王道的ネタで轟沈された俺は静かに息をひきとっていった・・。 ・・・目が醒めた。 なぜか俺は布団で寝かされていた。 ・・・一体何があったんだ・・・? ・・・そうか、俺は王道的ギャグによって撃沈されたんだった・・・。 ・・・今時、あんなオチはひどいよな・・・。 だんだんと意識がはっきりしていく。 「・・・大丈夫ですか・・・耕一さん・・・。」 楓ちゃんの声がした。 「ん・・・楓ちゃん?・・・ずっと看病してくれてたの・・・?」 コクン 楓ちゃんはうなずいた。 「楓ちゃん・・・君はなんて優しいんだ・・・。」 「・・・耕一さん・・・。」 「君を見ていると何か心が・・・。」 「・・・耕一さん。(ポッ)」 いいムードになってきた時。 「耕一さぁーーん。もう大丈夫ですかぁ?」 千鶴さんが乱入してきた。 楓ちゃんは一瞬恐い顔をして「チッ」と舌を打った。 オイオイ楓ちゃん・・・。(困惑) 「俺はもう大丈夫。」 「・・・私がつきっきりで看病してましたから・・・。」 楓ちゃんが少し睨みながら千鶴さんに言う。 「きっと疲れてたんですよ−−。」 千鶴さんは楓ちゃんを無視して会話を続ける。 き、気まずい・・・。 「だから私が『千鶴特製!!スタミナ満点スッポンキムチローヤルゼリー鍋』を・・・。」 「姉さん!!これ以上耕一さんを苦しめないで!!」 楓ちゃんのその言葉により戦いの火蓋が切っておとされた!! 「なっ!!何ですって楓!!私のどこが耕一さんを苦しめるっていうのっ!!」 「そんなもの耕一さんに食べさせたら耕一さん死んじゃうじゃない!!」 「『こんなもの』ですって!!楓には料理が出来るっていうの!!」 「姉さんよりマシよ!!」 ・・・まずいぞ。これは・・・。 止めさせないと血を見る事になるのはあきらかだ・・・。 「と、とりあえず2人とも落ち着いて・・・。」 「耕一さんは黙っていて!!!。」 2人の声がハモる。 「・・・楓。あなたとは決着をつけなくてはいけないわね・・・。」 「・・・たとえ姉さんだからといって容赦はしない・・・。」 「勝者が耕一さんを手にすることができる・・・いいわね。」 「・・・ええ。」 2人は表に出ていった・・・。 ・・・また寝よ。 今はこの事も鶴来屋の事も忘れたい・・・。 俺はゆっくりと眠りについていった・・・。 一体、鶴来屋はどうなったんだ!!(読者の声) 聞こえない・・聞こえない・・。 <次回予告> 結局、事件が起きぬまま泥沼と化した第二話。 しかし次こそは事件が起ころうとしている。 稼ぎ時のゴールデンウィーク。 観光に来るTH御一行。 はたして無事に終われようか、いやない!!(反語) 次回、鶴来屋ファイト98 『偽善とマルチと鶴来屋半壊!!』 『君の偽善は打ち砕かれる・・・。』