俺…これを見て憤怒した方、もしくはすぐさま目を背けた方です。 初音…二重人格の美少女です。前科がたくさんあります。 佑紀…マルチのストーカーです。僕(筆者)とは無関係です。 ------------------------------------------------------------------------------------------ 甲斐性っ!2「誘拐とメイドロボ」 俺と初音ちゃんが、炬燵で蜜柑を食べているときだった。玄関の方から、まだ幼さの残る少年の声が聞こえてきた。 「あのーっ。すいませぇぇぇぇんっっ」 俺は、このささやかな団欒を壊されたことに少し腹を立てたが、取り敢えず自分を落ち着けさせながら初音ちゃんに 訊いた。 「…なんだろ…初音ちゃんの知り合いか何か?」 言っていて、少し下世話な感じになっていることに気が付いた。──小学生じゃあるまいし、妬いてどうする。 俺の問いに、初音ちゃんは首を振りながら、 「…違うよ。お兄ちゃんのお友達じゃないの?」 と、逆に聞き返した来たが、俺にも覚えがない。だとすると、底抜けに明るいセールスか何かか? 「あの…初音さんいますかぁ…?」 再び、外の男が声を出した。それも初音ちゃんに向かって! 俺は驚いて初音ちゃんを見たが、初音ちゃんも困惑していた。どうやら本当に知らないらし──。 ──かったのだが、初音ちゃんは急に目つきを変え、髪の毛を立たせると、手をぽんと叩き、 「おお、そうだった!思い出したぜぇっ!」 と、叫んだ。 …あちゃー。発作が起こってしまった…。 「な…何なの?」 俺は、初音ちゃんの機嫌を損なわないように訊いてみた。──一歩間違えば、二度と冷めない眠りにつくことが出 来るかもしれないのだ。それだけはどうにか避けたい。 「それがよぉっ!」 初音ちゃんは俺の問いに素直に答えてくれた。どうやら機嫌はいいらしい。 「ええと──あいつ佑紀って言ううんだけどよ、あいつに頼まれたんだよ。何か、どっかの高校にある人形を盗んできて くれってさ。それで、今日が決行の日なんだわ」 初音ちゃんはそう言うと豪快に笑い、炬燵から出た。 ──が、俺の頭の中には「不安」という要素が渦巻いていた。 ──高校にある人形…?それってまさか──。 俺は、ある答えに行き当たってしまい、それを口に出さざるをえなくなった。 「──初音ちゃん、まさかその人形って、メイドロボのことじゃ…?」 すると初音ちゃんは思いだしたように目をぱちくりさせ、 「そう、それだよっ!お前よく知ってたなーっ!!…ん?ってことは、お前まさか…」 と、答えた。それだけで十分だった。 ──でもそれって、誘拐って言うのでは?その上、結構な罪であろうに。 ──などと俺が考えていると、初音ちゃんの怒鳴り声が聞こえてきた。 「…まさか、おめえもああいうのが欲しいとか言うんじゃねえだろうなぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!!」 し、しまった!何だか誤解されてしまったらしい。俺は慌てて仰け反ると、早口に弁解した。 「ちっ、ちがうってっ。俺が好きなのは初音ちゃんだけだよっ!そのことは初音ちゃんも知ってるだろっ!」 全て本音だったのだが、慌てていたから少し言い訳がましくなっていた。でも初音ちゃんはそのことに気が付かなか ったようだ。初音ちゃんはそれを聴いて、満足そうに頷いた。 「うん、そうだよな。悪い悪い」 そしてそう言うと、悠々と玄関に向かって歩き出した。 …俺は初音ちゃんの背中が見えなくなる前に言った。 「…あ、早く帰っておいでよ」 すると初音ちゃんは、くるっと振り返って、 「おうっ!お前に寂しい思いはさせねえぜっ!」 と、力強く言った。そして、その顔は赤く染まっている。 俺は、複雑な気分で手を振った。 ──これからどうなるのだろう…? 初音ちゃんがいなくなってから出たその問いは、してはならない問いであった…。 … 了 … ------------------------------------------------------------------------------------------ と、言うわけで、お試し版の改稿です。もうこれは、ウケルウケナイの問題ではなかった…(苦笑)。 今書いていて、まさに「構想五秒」であったんだなぁ…。と、痛感しました。 でわでわ・・・