注意:これは、「もう一つの答え」の続きです。
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○蛇足・その二
オレが、浩之の家に行った次の日のことである。
その浩之が、オレの家にやってきたのだ。
今日、オレは朝から暇だったために居間でごろごろしていた。
ちょうど、時計が十時を示したとき、玄関のチャイムが鳴った。メイドロボの方は掃除の途中であったため、オレが出
ることにした。面倒であったが、──こんな時もある…。そう思うことにした。
オレは、片手で頭をもみくちゃに掻きながらドアを開けた。すると…。
「…よう……」
柄にもなく萎んだ、浩之が居た。オレは驚いて言った。
「ど、どうしたんだ?またなんか…」
すると浩之は、気怠そうに苦笑しながら、
「いや…。ただちょっと聴きたいことがあって…」
と、いつもとは違う、張りのない声で答えた。
──聴きたいこと…?
オレは、顔を顰めて自問した。
まさか、また昨日みたいな理不尽で鬼畜な質問ではないであろうな。
取り敢えず、オレは浩之を部屋へと招くことにした。
どうせ、人前では話せないことであろう…。
昨日の浩之の家のように、俺達はソファーに向かい合って座った。
オレの家のメイドロボがお茶を運んできて、無機質な声で、
「どうぞ」
と、言った。これは、オレの「教育」の賜物なのである。
本当は、もう少し柔らかい話し方をするが、あまり人間くさいととやかく言われるのだ。
こいつらは、ただのロボットではないというのに。
「…で、何の用なんだよ。またマルチのことなのか?」
オレは、メイドロボの姿が消えてから言った。
すると、浩之は申し訳なさそうに頷きながら、
「…そう、なんだ…」
と、顔を歪めて言った。
──らしくないな…。
そんな浩之を見て、オレは思った。
本当は、もっとあっけらかんとした奴だと思うのだが…。
「聴きたいことってなんだよ。お前と違って、オレは忙しいんだ」
嘘である。本当は暇で暇で仕方がない、実はこいつが話題を持ってきたことも嬉しかったりする。
浩之は、頭を振って言った。
「じゃあ、単刀直入に言うぜ──」
それが既に前置きなんだよ。
「──教えてくれ、アイツは──マルチは、人間なのか?ロボットなのか?」
そう言った浩之の目は、真剣で辛そうだったが、オレは、ふ。と鼻で嗤った。
どうやらこいつ、焦っていて目の前のものを見ることすらできないらしい…。
オレは、オレ自身苦悩して辿り着いた答えを──ちょっともったい無い気もするが──教えてやることにした。
「簡単なことだ」
オレは、そう前置きをした。
「答えは、ロボットだ。連中は作られたものだ」
実は内心、楽しんでいた。浩之がどういう反応をしてくるのか楽しみだったのだ。
浩之は、目を見開いて問い返してきた。
「や…やっぱりそうなのか?」
「その通りだ──」
オレは、何だか調子に乗って言い始めた。
「──連中は、体も、機能も、心も作られたんだ、俺達人間に。すなわち、ロボットだ」
すると浩之は、頭を抱えて呻き声を漏らし始めた。
ふん。どうやら相当に悩んでいるらしい…。オレは、何だか浩之が可哀想になった。
──じゃあ、そろそろオレの仮説を教えてやるか。
オレはそう思って一人含み嗤うと、独り言を言うように言い出した。
「でもよ──」
オレが口を開いたのに驚いたのか、それとも唯一の救いを見いだそうとしているのか──浩之が顔を上げて、こっち
を見た。よく見ると、半ば廃人のような顔つきである。
「──でもよ、それがどうしたって言うんだよ」
小さな声で、どういうことだ?と浩之が言った。オレは続けた。
「確かに連中は作られたものかもしれねえよ。でも、だからといって「愛」する事がいけねえ訳じゃねえだろ?…そりゃ、
「ダッチワイフ」として扱うのはいけねえだろうけどさ。…アイツ等は人形じゃないんだし」
「人形じゃない?」
浩之が口を挟んだ。
「でもお前、いまロボットって…」
「ばーか。人形には、「頭脳」すらねえだろ。たとえ作られたものだとしても、ロボットには頭脳が在るんだ。人形は殴
られても何も言えないけど、ロボットは言うことができるだろ?昔在った箱形のロボットにだって、防御機能はあったの
だから。…話を元に戻そう、愛することがいけない訳じゃない、それは解るな?」
浩之は、今度は黙って、しかし納得のいか無そうな顔で頷いた。
「では何故、社会問題になったり、愛することがいけないとか言う偏見が生まれたか?最初の奴は「心」というはっきり
したものがないために、ダッチワイフになってしまったからだ。でも、だったら自慰とか、玩具だっていけないと思うんだ
が…嫌、あれは十八禁か…?まあそれはいい、二番目の奴だ。理由は簡単だ「種族保存」ができないと言う意見から
だ。つまり、人道に反すると言うことだ」
浩之は、眉を顰めてオレの科白を待っていた。オレは一息ついてから、また話し出した。
「人道に反する以上、それはタブーになる。狂信者達が殺戮を繰り返すのと同じだ。だからこそ偏見が生まれ、先のダ
ッチワイフのように社会問題となる。そして、お前のような人間が出てくる。『おれはこれで良いのか』」
それに付け加える形で、でも女性型のロボットしか居ないのも問題だよな。と呟いた。
浩之は言った。
「お前は、何が言いたいんだ」
──まったく、自分から聴いて置いて都合のいいことを言う。
「俺は、どうしたら良いんだ?」
オレは、それを無視する形で答えた。それが、オレが漸く辿り着いた答えだった。
「仮にそれが人道に背くことだとしても、だったらこうすればいい、少なくともオレはこうした──」
オレは、そう言って微笑むと、メイドロボが居るであろう方向を見つめた。
「──蟲螻になって愛する。聖者でなんか居られるものか…」
二人とも暫く、無言だった。
漸く口を開いたのは、浩之が先だった。
「…何となくは解った」
嘘だな。オレは思った。
こいつはおそらく、まだ何にも吹っ切れちゃいない。
仕方なくオレは、もう一つ突っ込んだことを言うことにした。
「言い忘れていたが──」
浩之が、はっとしたようにこっちを見た。どうやら本当に嘘だったようである。
「──人間とロボット、区別してどうする?確かにロボットは人間に作られたものだけどよ、人間だって人間に作られた
もんじゃねえか。タンパク質とカルシウムの塊か、金属と合成素材の塊か──。そんなもので分けてどうする?所詮は
人間の保守精神と自己満足と欺瞞だろ?お前はともかくとして、マルチが振り回される義理はない。それに──」
オレがもったいぶるようにそこで言葉を切ると、本当にじれったそうな顔で、
「それに?」
と、浩之が聴いてきた。いつもこれくらい素直だと使いやすいのだが。
「──オレのメイドロボは違う。あれはオレが改造していったり、バージョンアップしていったりして、漸く多少の心をえ
たものだ。でも、マルチは違うだろ?アイツは学べるんだろ?物事を。つまり、恋愛感情は作られたものではなく、あい
つが自身で見つけ、作ったものである筈なんだ」
それを、お前の悩みごときで消すわけにもいくまい。
「あいつは、人間ではないけれど、ただのロボットでもない…と?」
「そう、昨日オレは必死に考えてみた。…お前の所為だぞ。そして思い当たった。もとよりあいつには、ロボットの三原
則なんか無かったのでは?ということだ」
すると浩之は、思い当たったように手を打った。
「何か思い当たることがあるのか?」
「ああ…。昔あいつ…、掃除をしたり人の言うことを聴いたりするのは、その人の喜ぶ姿を見たいからだっていってた」
確実な証拠は、もとから用意されていたではないか。全く幸せな男である。オレはこの答えに辿り着くため、とてつ
もない時間がかかったというのに。
「…簡単だな。良いか?あのとき仮に、オレがマルチを抱こうとしたとしよう」
浩之は、少し辛そうに頷いた。
「あいつは多分拒否したと思う。これは、三原則があってもなくてもだ。昨日はあるものとして考えたが、今はないもの
として考えようじゃないか。…またしても仮定の話になるが、お前があいつの主人ではなかったら、おそらくあいつは
オレに抱かれていただろう。オレが喜べばそれで良いのだから。でも違う、あいつはお前に喜んでもらえればいいのだ。
…すっくなくとも、それが最優先なんだよな。逆に言うと、お前が辛いのは嫌なはずだ。そしてそれ以上に、自分が辛
いのも嫌なはず…。ああでも、お前が喜ぶと思ったらどうするのかな?…そう考えると堂々巡りだが、三原則がない以
上、自分が嫌なわけだし…」
オレは、そう言った堂々巡りを少しして、結局こういった。
「まあいいや。少なくともあいつは、ロボットとしては抱かれなかったと思う。人間として、傷つきながら抱かれたと思う。
…悪いな、それ以上の答えは出ねえや」
すると浩之は、家に来て始めて生気のある表情をした。
オレは苦笑して言った。
「何だよ、元気になって」
「要するに、自分で考えろってこと何だな?」
オレは、怪訝そうな顔をしながら頷いた。
「気がついたんだよ。難しく考えることはないって。──初心に返れば良いんだ」
「ちょっと違うぞ」
オレは、奴の言葉を遮った。
「そうじゃなくて、お前がマルチを所有物としてみなければ良いんだ」
──そうか。
浩之は、小さく言った。そして、
「俺がそう考えた時点で、俺はあいつを愛していないことになる…と」
「そう、それではただ単なる「愛着」が湧いたのと同じだよ。それじゃあダメなんだ。サトシがピカチュウをライチュウにし
なかったのと同じに、あいつも尊重──語弊だろうが気にするな──しなければいけない」
そして、オレは今日の論議を集結させる一言を言った。
「お前は、虫ケラになってでも彼女を愛せ。お前が本当に彼女を愛しているのだとすれば、それくらいはできるはずだ。
そして、彼女を自分のものとしてみるな。彼女を人間とかロボットとか意識した瞬間、お前は彼女を無視していることに
なるからな。今の、忘れるなよ」
浩之は、力強く頷いた。
オレは浩之に、帰りがけ一本のCDを渡した。
オレが、今の回答に辿り着くため、いろいろとお世話になったものだ。
「トラック2を聴いてみるんだな」
オレは、それだけを言って分かれた。
『 例えば人道に背く行為というなら
虫ケラとなって愛を誓う
Love is Blindness Love is Blindness
聖者でなんかいられない 』(ミスターチルドレン 『Love is Blindness』より)
Fin...
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ごめんなさい、ハイドラントさん。
実は、あれを書いてから三回ほど後悔しました(しかも出してから漸くっ!)。
もっとちゃんとした構想を練ってから出せばよかったのに…と。
でも、出してしまったものは仕方がない(?)ので、言い訳的なものを書くことにしました。
それがこれなのですが、よく考えてみると同じ事をしつこく言っているだけのような気が…。
ひょっとしたら、十行くらいで終わったかもしれない。
答えと言うよりも、こじつけを押し付けているだけのような気がする。>僕の文。
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久々野彰さん
スピードは、あのスピードじゃないのです(笑)。
トランプのスピードなのです。マックス…。どっちかというと、スピードよりマックス…。
加速より最高速…。でもそれだとメガスピードは勝てない…。って、話変わってしまった。
M・Kはイニシャルです。実は、兄妹揃って同じです。
>お兄ちゃんによろしく
これを読んだM・Kは、いきなり僕のことを殴りました。ちゃんちゃん(実話)。
>やくざな世界
え:まあ、兄ちゃんを見ていればそんなものにも浸るかな…。
ゆき:こらこら。
UMAさん
え:初めまして。
ゆき:IE…ものすごくハズイこと聴いていたのか。僕は。
>無理強いすれば
拒まないでしょう。
でも、あの娘にあの表情をされて、無理強いできる人間が居るでしょうか?
否、いないっ!(断言)
風見ひなたさん
おかえりなさいっ!
>あんまり変わらない
っていうか、僕の凡なる頭では、ハイドラントさんの以上のものを書けなかったという方が正しい。
…まあ、そんなわけで「蛇足」を書いてみたのですが…。
ハイドラントさん
過程と言うよりは、選択肢…?
A:言う。
B:言えない。
とか?
因みに、このお話は、更に「蛇足」です。
ああ、めちゃ調子悪…。
感想は書けないわ、レスはできてないわ…。
もういいや、暫く寝よ。
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でわでわ・・・(ホワイトデーネタは、諸事情により中止…)