初音の甲斐性っ! 投稿者:ゆき
 俺…これを見て目を背けた方、または憤怒された方です。優柔不断な幸せ者です。
 初音…二重人格の美少女です。まさかここまで人気が出るとは、誰も考えつかなかっただろう…。(因みに、貴方とは血の繋がりはないです)
 楓…初音の親友の美少女(項目追加)です。溌剌とした良い娘です。
 ゆき…初音の同級生です。佑紀とは関係ないです。
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 甲斐性っ!(多分)5「初音の憂鬱」

 四時間目の授業が終わり、先生への挨拶が済んだあと、初音──髪の毛が立っているから、おそらくヤンキーだろ
う──は、憂鬱そうにイスに腰掛けた。
 どうやら、何か考え事をしているようである。持参したお弁当を食べる素振りなど全く見せずに、ただ顔を顰めている。
 誰もが(あの楓でさえもっ!)近寄り難く思っている最中、一人の少年が彼女に近寄っていった。──リーフSSコーナ
ーの埃…基、誇る四流駄文書き、ゆきである。
 彼は、気さくに声を掛けた。
「どうかしたの?初音ちゃん」
 それを聴いた初音は、かなり不満そうな顔をして、
「煩い、向こうへ行け」
 と、押し殺した声で行った。だがゆきは動じずに、
「こらこら、喋り方変えちゃダメだよ。いつもの初音ちゃんなら「うっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!だーっっってちれぇぇ
ぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!」でしょうが」
 と、笑いながら言った。が、自分も話し方が変わっているのには気付かない。
 初音は、ゆきがいきなり叫んだ(初音の科白を)のに驚いて、
「お前…最近何か嫌なことでもあったのか…?」
 と、呟いたが、ゆきはそれを受け流すように言った。
「嫌なこととか、悩みがありそうなのは初音ちゃんの方だよ。さぁ、黙って僕に話してみなさい」
「黙ってちゃ話せねえだろ、それともお前、エルクゥだったか?」
 ゆきはそれを聴くと、まさかーっ、と笑って、
「でも、エディフェルみたく初音ちゃんがくれるのなら…」
 と、減らず口をたたいた。どうやら本当に嫌なことがあったらしく、人格すら変貌している。
「…まあ、冗談は抜きにして何悩んでいるのか教えてよ」
 初音は少し迷ってから仕方なさそうに、
「…じゃぁ、頼むわ…」
 と、言った。

 初音が話しづらいと言ったので、二人は中庭に出ることにした。セリスとマルチが二人でお弁当を食べているのに一
瞬ゆきは目くじらを立てたが、すぐに真顔に戻り、取り敢えず適当なベンチに座った。
「実はさ、アイツのことなんだよな」
 ゆきが弁当を開くよりも早く、初音は言った。
 因みに、アイツというのは初音の血のつながらない兄のことである。細かい設定は省く。
「…続けて」
 さっきマルチ達がいた方をちらと見ながら、ゆきは言った。
「…時々思うんだよ。アイツさ、いつものあたしと、今のあたしとどっちが好きなんだろうって──」
 初音は、そう言ってからしょんぼりと顔を俯かせた。ゆきは無言で目を瞑った。返事を考えているようである。
「──って言うか、いつものあたしの方が好きなんじゃないかと思って。あたしは必要ないんじゃないかと思って」
 初音の頬を、涙が伝った。が、初音が俯いていたためゆきにはそれが見えなかったし、そもそも見ようともしなかった。
 ゆきは目を瞑ったまま言った。
「そう考える根拠は?あの人が嫌そうな顔をするとか?」
 それを聴いた初音は、激しく首を振り、
「別に、別にそんなことがあるわけじゃないんだ。ただ、ただ何となく──」
 今度は涙を隠そうとはせずに顔を上げていった。
 ゆきは、漸く目を開け、ポケットからハンカチを出すと、初音の涙を拭った。
「本当はこの役目は、彼の役なんだよ…」
 どうやら、一応立場はわきまえているらしい。
 ゆきは、今度は空を見ていった。
「…だとすれば、それは初音ちゃんの思いこみだよ」
「でも、あたしが嫌われているというのにも根拠はないけど、嫌われていない根拠もないだろ!」 
 初音は、駄々をこねるように言った。
「否、少なくとも君は、多くの人に愛されているよ──」
 ゆきは、そう言って溜息をついた。
「──君が純粋だと思ってくれている人は、リーフのSSコーナーにたくさんいるよ。そしてこの学園にも。君を嫌ってい
る人は、おそらく一握りいるかいないかだと思う」
 初音は、それを聴きながら思った。
──でも、それがアイツに好かれているか否かには関係がない。
「…信じられない?今の話」
 初音は首を横に振った。論点が違う。
「──じゃあ、とっておきの話をしよう、はっきり言って、他言無用だからね」
 ゆきは、そう前置きしてから初音にそっと耳打ちをした。
「彼は君のこと──君たちのことを、間違いなく好きだよ。理由は簡単、君のことが嫌いだったら──」
 ゆきは、そう言いながら微笑んだ。
「──間違いなく、このお話には出てこないよ。そしてそれ以上に、僕は彼の本音をいつも聞いているしね」
 それからゆきは初音から顔を話すと、小さな紙切れを出した。
「そこに言って、黙って「初音の甲斐性っ!」と「いつものお約束」を読みなさい」
 それは、まさた氏のHPのアドレスだった。
 その後初音は、いつもの元気を取り戻したという…(嫌に他人行儀やな)。
                                    … 了 …

 甲斐性っ!(多分)6「家族構成」

 初音はその日、家で留守番をしていた。
 彼と二人暮らしだから、勿論今は一人である。あまりに暇なので、彼女は楓と電話で話していた。
 
 随分と長く話していたのに気付いた初音は、そろそろ話を打ち切ることにした。
「あ、ご免楓。随分長く話しちゃったから…」
 初音がそう言うと、勝手知ったる楓は、
「あ。あんまり長電話だと彼に悪いか」
 と、半分茶化すように言った。
 二人暮らしなだけに、一応お金には気を使うのだ。多分(ゆきは二人暮らしはおろか、一人暮らしをしたことすらない)。
「本当にご免ね、楓。私から掛けたのに──」
 初音がそう謝ったときだった、急にキャッチが入った。
「──あっ!キャッチだっ!」
「あんたもついていないわねえ…。じゃあ、私は切るわよ」
 楓がそう言うのと同時に、初音はキャッチのボタンを押した。回線がぷつっと音を立て、切り替わる(のだろう、僕はよ
く知らない)。
「──あっ!兄ちゃんっ!?」
 女の声で、受話器からそう流れ出た。
 初音は少し驚いて、
「えっ?どなたですか?」
 と、半ば叫ぶように言った。
 すると相手も驚いたようで、あっ!と叫び、そのあとガタっ!という音がして、電話は切れた。
 初音はその電話を耳に当てたまま、呆然としていた。

 俺は、できるだけ速く走っていた。
 もう随分と遅い、初音ちゃんも怒っているだろう。
 あまり、彼女の怒ったかおや困った顔は見たくない、させたくない。
 だから、俺は走った。

 漸く家のドアが見えてきた。
 大急ぎでノブに手を掛け、ドアを引く…鍵は開いていた。
 中にはいると、そこは真っ暗で──。
ずどっ!
 腹に、とてつもなく重いものがぶつかった。一呼吸置いて襲ってくる激痛、俺の意識は吹っ飛んだ。

 目を覚ますと、俺はベッドに寝ていて、寝ている俺を初音ちゃんが怒った目で睨んでいた。
 そ、そんなにまで俺が遅れたことを怒っているのだろうか…。
 俺は、腹の鈍い激痛に耐えながら言った。
「ご…めん…よ…。おく…れて…」
 なかなか場違いな…、一言だった。
 今日は、何かの記念日だっただろうか?誕生日ではない、彼女と暮らし始めた日でもない、記念するようなことはな
い、雛祭りは終わった…。何も思い当たらない。
 俺の一言を聴いた初音ちゃんは、怒ったような、驚いたような、複雑な顔になった。
「お…お前、何を…」
 半ば嗚咽にも近い呟きを、俺は聞き逃さなかった。
──どうやら、遅れたことを怒っているのではないらしい。
 俺は言った。
「…な…何…を、おこっ…ている、の?お…しえて…よ…」
 初音ちゃんの瞳が一瞬ぎらついて、そして元に戻った。彼女は話し始めた。
「今日、お前のことを兄ちゃんとか呼ぶやつから電話があったんだよ」
 俺は心の中で、まさか、と舌打ちをした。
「お前…お前にとってあたしって何なんだ?その女の代償か?」
 果たしてこの状況で、全てを納めることができるのだろうか…?
 でも、誤解されたままでいるのはご免だった。
「あ…アイツは…俺の…妹だよ…」
「そ…そんなことが信じられるかっ!」
どがっ!
 初音ちゃんの肘が、俺の腹に入った。
「ぐぅぅ、しん…じてよ。アイツだよ、初音ちゃんも、前にあっただろ…」
 初音ちゃんは、まさに怒髪天をつくほどの形相であった。
 俺は、奇跡をねが──。
 そのとき、電話が鳴った。
 初音ちゃんは、怒りに満ち満ちた表情で受話器を取った──。

 初音は、興奮冷めやらぬ感じで受話器を取った。
 何故か彼女は確信していた、その電話が、さっきの女であることを。
「…誰だ」
「あっ!貴女初音さんねっ!」
 初音は、何だか拍子抜けした感じで彼の方を見た。
 電話の相手は続けた。
「さっきはご免ねぇっ!受話器落としちゃったんだよね、で、その弾みで切れちゃったと」
 だとすれば、別に初音が出たから切ったのではなかったことになる。初音は何だか赤くなった。
「そのあとすぐかけ直せば良かったんだけどさぁ、いろいろあって遅れちゃったんだぁっ。あ、そうそう、あたしのこと覚え
てる?」
 初音は少し躊躇って、
「悪い、覚えていない…」
 と、言った。
「え〜。もう、忘れないでよ、あたしよあたし、耕一の妹の梓よ」
 そう言って、彼女はからからと笑った。

 数分後。
「ごっ、ご免なさいっ!お兄ちゃんっ!」
 初音ちゃんは、受話器を置くとすぐに俺に謝った。
「正直滅茶苦茶に痛いけど…。初音ちゃんが俺のことを愛してくれている証拠だしね…」
 俺は、できるだけやんわりとそう言った。
 初音ちゃんは、思いっきり俺の腹抱きつくと、わんわんと鳴いた。
──は、腹にすがるのはやめれ…。
 俺は、そう思いながらも彼女の頭をなでつけた。
                          … 了 …
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ゆき:今回は、苦悩するヤンキー初音ちゃんというコンセプトでいってみました。
   いかがでしたか?彼女の切なさが届いたでしょうか?
   つまり、感想を待っています。
   …と?こういう書き方ということは、ゲストがいるのだな?
初音:うん、今日はね、ちょっと訂正が有ってきたの。
ゆき:訂正?
初音:うんとね、ゆきちゃんの独り言の中で、私「あんな悪い子じゃないよ」って言ったでしょう?でもね、あの、ヤンキ
    ーな私も良い娘かな…って思って。
    あと、いろいろな人に「良い娘」って言われてたし。
ゆき:ふーん。…いろいろ気付く娘だねぇ。
初音:えへへ…あっ、楓お姉ちゃんが呼んでるっ!じゃあね、ゆきちゃんっ!
ゆき:おう、じゃあねぇ!
ゆき:…静かになってしまった…。
ゆき:さて、レスにうつるかっ!

ジン・ジャザムさん
 ごめんなさい、もとねたが分からないです(汗)。
>エゴで小説
 目標だったり、願望だったり…。
 『そうしなければ、僕達は生きていけないのか…』ってちゃうわっ!(核爆)
 いろいろな信念は、あるものですよね。

まさたさん
 凄いですよ、初音ちゃんは…。
 ところで、これを書き終わったらそちらに行きますor今度何かカキコに行きます。

久々野彰さん
 自虐の歌と、ミグのお話読みました。
 自虐の歌…呼んで五分くらい放心した。
 ミグのお話(すいません、題名忘れ)で、平和な話が読みたい、邪道な願望でこそあれ。
>百
 おめでとうございます。ご苦労様。ありがとうございます。
 逆境や自分に負けてはいけないです。

無駄口の人さん
 凄い人なんですよ、設定上のルカ君は。
 ぱら・さいと・いぶですかぁー。けらけら(笑)。

UMAさん
 ちょっと他社ネタです。
 ことりちゃん…佑紀ちゃんに対する科白は許す、僕も感じていたことだ…でもっ!
 ミユリちゃんにそれはねえだろぉぉぉぉぉおっっっ!(心の叫び)
>スピード
 床の粉砕で済めばよいですが…。

鐘本さん
 確かに暗い話は書きやすいです、けれど、辛いです。
 だから、書くのには勇気いるです。

 ここに書き込むようになって、もはや二ヶ月が過ぎた…。そして今、漸く気がついた。
 ここの「クマさん」瞬きするんですねっ!なんか嬉しい。

でわでわ・・・