「…初音ちゃん、どうする?何かして遊ぶ?」 ルカからの忠告を敢えて無視した俺は、ぎこちない笑みを浮かべながら言った。 ルカ達は『移動』の疲れが出てさっさと寝てしまったが、時間的にはまだあまり遅くはない。(取り敢えず、静かにとい う忠告は受け入れるとして)何かやっている時間くらいはあるはずだ。 俺の科白を聴いた初音ちゃんは、嬉しそうに頷いてから、 「…お兄ちゃんの好きなことで良いよ」 と、顔を真っ赤にして呟いた。 ──うっ、うわっ、やめてくれっ!初音ちゃんっ!どうしても思考が向こう側にいっちゃうでしょうがっ! 俺はそう心の中で、もはや歓喜に変わりつつある叫び声をあげながら、 「じゃあ、…そうだな、スピードでもやる?」 と、できるだけ平静を装いながら言った。 「えっ?お兄ちゃん、スピードできるようになったの?」 初音ちゃんは、半分驚いて、半分感心したように言った。ところで、他の人に言われると皮肉にしか聞こえないような ことが、初音ちゃんに言われると素直な驚きとして受け取れるのは何故だろう。 そんなことを考えながら、俺は胸を張っていった。 「神経衰弱じゃあ勝ち目がないから、勝てそうなのを見つけて練習した来たのだっ!」 …考えてみると、俺ってかなり暇なやつである。 因みに、練習はだいたい一人でやってた。 スピードをやっていて感じたのだが、これは神経衰弱と違い、随分「計算」がものを言うと思う。 次に出すやつの、そのまた三手先まで計算しながら、相手に手札を出させないようにして、俊敏な動きで手札を… (以下自己陶酔モード)。 と、今のができれば絶対に勝てる。俺にはできないが(如何せん、勝負の回数が少なすぎた)。 ──あれあれ? 俺は漸く「あること」に気が付いた。 スピードは、かなり煩いのだ(札を出すとき、思いっきり叩きつけるから…)。 俺が初音ちゃんにそう伝えると、 「大丈夫だよ、クッション(理想的なのは座布団)を下に引いておけば、あんまり煩くならないし」 と、初音ちゃんはにっこり笑いながら返した。 初戦、はっきり言って俺は初音ちゃんを嘗めすぎていた。 はじめは結構いい感じだったのに、後半に良い手札が出ずに足踏みしてしまい、そのうちに初音ちゃんに負けてしま った。神経衰弱のような「歴然」とした力の差はないが、手を抜くとかなり不味い。 二戦目、俺は容赦なく攻めて最初にあがったが、そのあと「いっせーの」無しで初音ちゃんもあがり、その勝負は引き 分けとなった。(同じターンであがったと言うこと。めちゃめちゃに悔しい) 三戦目、運のいいことに(正確に言うとうまく切れていない)ダブル(重ねるやつ)が連発し、俺はかなりの差で圧勝、 今回は初音ちゃんも「いっせーの」してしまい、俺の勝ちとなった。 「…都合のいい展開だし、次でラストにしようか?」 俺は、これ以上やると負けそうなのでそう言った。 「…あ、もうこんなにやっていたんだ。じゃあ、次で終わりだね」 初音ちゃんもそれに同意して、最後の勝負となった(五歳も下の女の子に熱くなる(恋愛でならまだしも)俺っていっ たい…?)。 最終戦、俺は最初っから初音ちゃんの動きを封じる手に出たが、あっさりそれをかわされ(ことごとく手札から良いの を出された)、逆に封じられてしまう展開となった。…何とかそのあと巻き返したが、気が付いたら負けていた。 「私の勝ちだねっ!」 俺が肩を竦めて手札を投げるのを見て、初音ちゃんは嬉しそうに言った。 「ううん、俺も練習したつもりだったんだけどなあ」 取り敢えず悔しいんだぞと意志表示してから、俺は照れを隠すように言った。 初音ちゃんは、右手を口元に当てて微笑みながら、 「スピードって、迫力がなきゃダメなんだって。だから私はあんまり強くないんだ…。お兄ちゃんならすぐに強くなれると 思うよ」 と、アドバイスをくれた。 「…じゃあ、そろそろ寝ようか?」 片づけが終わってから、俺は言った。 初音ちゃんは照れながら、 「うん」 と、頷いた。 ──や、やべっ!初音ちゃんがあんまり可愛いから…。 俺は、案の定元気になっていた。…ご、誤解されかねんなぁ…。 俺は、そんな身体の変化に気がつかれないように注意しながらベッドのなかに──。 そのときだった、ドアが思いっきり開かれ、 「二人ともっ!子供作ってる暇はないですよっ!」 と、とんでもないことを言いながらルカが入ってきた。 初音ちゃんは(子作り云々を敢えて無視して)驚いていった。 「どうしたの?なにかあったの?」 「何かも何も、二人とも「これ」に気が付かないんですか?」 ルカの叫びを聴いて、俺は漸く気が付いた。 ──とんでもない数の「鬼」が、すぐ近くにいることに。 そして、猿と冷房の戦いで、やっと一匹目を倒したあと、「百体のメタル冷房」が出てくることに。 俺は、自分のあほさ加減と、劇場版のスタッフを呪った。 … 続く … ------------------------------------------------------------------------------------------ 設定協力、我が妹(笑)。 しかし、最近また自分の書くペースがあがってきているような…。 今週はたまたま時間があったから書いていたけれど、これからもこのペースで書いていたら大変なことになってしま うな…。もはや、自粛云々の問題ではないよねぇ。 >ビスケットの日。 初音ちゃんと楓ちゃんが、ビスケットで太るとは思えないぞぉー。…そんだけ。 久々野彰さん 確かに。流れに遅れないようにたくさん書くと、更に流れを進める結果になってしまう。 ──僕も、乱ペースで投稿しているものの一人ですが──でも、書く理由ってそれぞれですし(正当化しているわけ ではないです)、たとえば調子の善し悪しとか、ネタの量、書く時間の有無。理由は一つではないですよね。 何にせよ、量が増えれば時間のない人はレスができず、読んだら読んだでかく時間ができず…。というのは事実だし…。 何だかジレンマですね。僕はあまり考えないようにして逃げているのですが(↑なんか箇条書き)。 >ダーク 安易…なんですか?今まで読んできた中で、安易と言えるのはなかった気がするのですが。 やっぱり、ダークには「暗さを隠す優しさと説得力」があると思います。少なくとも、それのあるダークは安易ではない と思う。もっとも、ある駄文書きは露骨な優しさでしか表せず、それを未だに引きずっていますが。 安易といえばこの発言か…(苦笑)。 …ただ、こうやって悩むことは、醜かったり惨めだったりはしないと思います。 悩むことが醜かったら、何もやりたくなくなってしまいますから。 >Lメモ 完結させる必要があるのか…? 暫く続けても良いような(ネタ切れ時の悪あがきでも。少なくとも僕は楽しんでいるし)。 でわでわ・・・(自分が嫌いになったらアウトだぜっ!とか叫んでます)