まだ未発表の私のHPのSS〜Life of Heart 第20話〜  投稿者:水野謙泉


夕日が照らす川原沿いの道。車の通りが少なく、よく散歩をする人を見かける。
そんな道を綾香と歩く。綾香は自分の知っていることをすべて話してくれた。
マルチの異常部分、異常発生の理由・・・
そしてセリオが僕の家には来なくなったこと。
「・・・で、セリオは人間不信になっちゃったのね?」
綾香が立ち止まりながら言う。僕も立ち止まる。
「うん。そういうこと。」
「原因は浩之かぁ・・・」
「そうらしいね。でも浩之に『お前マルチに・・・』なんて聞けないでしょ??」
「そうね。だから私が・・・」
「それはだめだって。間接的に言うのは良いかもしれないけど、直接言ったり
 したら返ってごたごたするよ。綾香は知らないことになっているんだから。」
「そうだけど、じゃぁ薫は言えるの??」
「言わざる得ないだろう?何とかするさ。」
「うん・・・」
歩き出す二人。ふとこっちを見る綾香。
「セリオ・・・」
「・・・・」
「薫の気持ちはどうだったの??」
「・・・よく解からない。考えれば考えるほど自分の気持ちを疑ってしまうんだ。
 そりゃあ、好きさ。でも・・・あのとき本当に・・・って考えると・・・」
「そう・・・。」
「うん。」
そんな会話が続く。寂しい・・・そんな気持ちが無くなる事を僕は恐れた。
あの日、いや、あのときセリオを愛していたこの気持ちが無くなる事を・・・
「ねぇ、薫?」
「うん?なに?」
綾香が立ち止まる。
「私に勉強を教える気無い??」
「なんで??十分綾香は出来るだろ、勉強。」
「それがね、一応、私、帰国でしょ??英語は出来るのよ。」
「うん。それで??もしかして・・・理系科目が・・・」
「そう・・・駄目なのよ。向こうと全然やり方が違うのよ。」
綾香は帰国子女だ。今年の四月までアメリカにいたらしい。向こうで英語の知識と
生活方式を学んできたらしい。なんたって英語ペラペラ。
数学や物理、化学は日本のやり方と相当違うことは前から聞いていた。
「それで、教えてくれと。」
「そういうこと。どう?話に乗らない?給料ももちろん・・・」
「実は綾香、僕、引っ越そうと考えてたんだ。」
「え?どういうこと?」
僕の家はあまりにも僕一人が住むには大きすぎる。
だからどこかのアパートかマンションに引っ越そうかと考えていた。
「僕の家、僕一人には大きすぎるでしょ?だから・・・」
綾香は何か思いついたように手をぽんっと叩く。
「そうだ!!!じゃぁ住みこみ家庭教師ってのはどうかしら??」
「へ??」
「だから、引っ越すんなら私の家に引っ越してきなさいと言っているの!」
だめだ、意味がわからない。なんで僕が綾香の家に??
「あの、よく解からないんですけど。なんで僕が来栖川のお屋敷に??」
「いい?よく聞いて。あなたは今、引越しを考えています。引越し先の部屋とかは
 まだ何も考えていません。そうよね?」
「うん。」
うんうん。それで??
「私は今、あなたを必要としています。解かるわね?」
「うん。でも僕で役に立つかどうか・・・」
「役に立つ立たないの問題じゃ・・・まあいいわ。それで、今私の家には部屋が幾
 つも空いています。だから、いらっしゃいよ。ね??」
なるほど・・・でもさぁ・・・
「でも、ひとつ屋根の下、君の家族と一緒なんだろう??
                       他人はまずいんじゃない??」
「薫?あなた、家政婦とか執事とか家に居なかったの??」
僕の家はまだ僕が家に居た頃は大きくなかったんだ。事業が成功し、
それからは・・・アメリカ行っちゃったし・・・。
「うん。居ない。」
「私の家にはいっぱい居るのよ。だからあなた一人ぐらいたいしたこと無いの。」
「なるほど。でもなぁ・・・」
そのときだった後ろから大きな黒い車が砂煙を上げてやって来た。
ゴオオオオオオオっ!!!ききっー!!!
「綾香お嬢さま!!!!!」
「げっセバスチャン・・・薫逃げるわよ!!!!」
「え?え?何???」
走り出す綾香。
「早く!!!!」
「お嬢様!!!!どこへいらっしゃるのですか!!!先生がお待ちですぞ!!!」
僕は何が何だか解からなかったけど、綾香に手を引かれ走っていた。
後ろからはゴツイ白髪のおじさんが追いかけてくる・・・
追いつくのはあっという間だった。
「小僧!!!お嬢様から手を離せ!!!かあぁぁぁっつ!!!!」
どぎゃっ!!!!!
「きゃあ!セバスチャン、痛いわよ!!!」
「痛て!!!何だこのおっさんは???」
僕は変なおっさんを睨みつける。
「いい度胸だ小僧!私は来栖川家執事長セバスチャンだ!!!」
「セバスだかなんだか知らないけど、綾香はこんなに嫌がってるんだぜ??」
「ウルサイ小僧!!!」
どがっ!!!!デカイ手が僕の体を地面に叩きつける。
「行きますぞ。お嬢様。」
すぐに体制を立て直し、セバスチャンと綾香の間に入りこむ。
「ちょーっと待てよ。セバス?」
「ほう。小僧、若い癖してなかなかしぶといじゃないか??」
「そりゃあ、若くて無謀ですから!!!」
睨みを利かせる。数分睨み合い。そして・・・
「お嬢様?」
セバスが口を開く。
「何よ??」
「芹香お嬢様が車の中でお待ちです。」
「嘘。居ないじゃない。よく見て御覧なさい??」
セバスは車に振りかえりながら口を開く。
「綾香お嬢様の嘘には・・・えぇ???芹香お嬢様まで!!!」
血相を変え車に走り出すセバスチャン。
「芹香お嬢様ああぁあぁぁ!!!どこへいってしまわれたのですかぁああぁ??」
車を越え捜しまわるセバス。
つんつんっ
はっ!!!
芹香さんは僕の真後ろに隠れていた。。綾香と一緒に息を殺して笑っている。
「ふふふふっ、行くわよ薫。」
そう綾香が言い、3人はこそこそ逃げ出した。

                          (続く)

続きと前話はぼくのHPで。

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