五月に・・・ <こみパSS:第5話> 投稿者:見ずかみ
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五月に事起こり迷惑こうむるは我と愛子とその仲間達 

<こみパSS:第5話>

by 見ずかみ
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<ここまでのあらすじ>

物語は綾END後、GWを少し過ぎた頃に始まります。

大手ゲームメーカー「ゼガ」開発の「最新型体感ネットワークゲーム」の業界関係
者Onlyのテストプレイ会への一般人特別参加チケットをGETした九品物大志は、
和樹・綾・詠美・由宇を招集し、半ば参加を強要する。
実は参加に対する交換条件として、このゲームの宣伝を兼ねた同人誌を大手同
人作家に作成させる事をメーカー側から言い渡されていたのである!
一同は経費一切をメーカー側が持つ等の好条件から参加を了解するのであった

ちゃんちゃん。

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ゲーム世界にダイブした俺たちがいたのは、薄暗い穴倉の中であった。
大志をと綾を除く一同は顔が引きつった。

「大志・・・ここはどこだ?」
「ふむ、ごくごく一般的な洞窟だが?」
「いや、それはわかるんだがな・・・なんと言うか、その・・・」
「何かな、まいぶらざ〜?」
「いや、普通、まずは街中で情報収集とか、何かこう・・・」
「そーやな。なんかな、こう・・・いきなりすぎんか大志はん?」
「申し訳ない。」

大志は、この上なく申し訳ない表情でこう述べた
「何しろスタート予定時刻を”大幅”に過ぎていたので、他のパーティーとの差を縮
めるために”致し方なく”途中は省かせてもらったのです。猪名川女史。
レベルUPやアイテムは数値を操作してありますので、クリアレベルに達していま
す。どうぞご心配なく。飛ばしてきたイベント情報や途中経過に関しては、エクスプ
ローラーを参照して頂きたい」

申し訳ない顔をしてはいるが、発言はいたって(得に2つの単語に対しては、強調
して)冷淡である。 こいつ、おたくの道に浸かってはいるが、時間や金銭感覚等は
極めてシビアであることを俺は知っている。 同人を初めた頃など、こいつの厳しい
スケジュールチェックと印刷の為の財務管理で、俺の自由になる時間と金は皆無
だったものだ…。

「ま、まぁ、それやったらしゃ〜ないなぁ?
ほれ詠美、とっとと現状確認でもしようやないか☆」

さすがに悪かったと思ったのだろう。 何か文句を言い出す直前の詠美の口を片
手で素早く塞いで、由宇は目の前の空間にエクスプローラーを表示させ、いままで
の経過とアイテムの確認を始めた。

>イベント内容:洞窟の中に住み着いた怪物の退治。
>報酬:100G
>期間:2週間
>参加パーティー:1組

お約束のようなイベント内容である。
まぁ、初めてプレイするのだから、こんなものかと思ったのだが・・・

「なにこれ!なにこれ!!なにこれぇー」
案の定、詠美が騒ぎ出した。

「仮にもこの詠美ちゃんさまが参加するのよ! こんなの、超超超超低レベルなイ
ベントなんて、下々の輩にまかせればいいじゃな・・・・」

最後の「い」を大志の言葉が遮った。
「大庭女史! こんなイベントだからこそ、こんなイベントだからこそです!!
一般の愚民どもは、お姫様の救出やドラゴン退治など、マイナーなイベントに我先
に飛びつくのは明白です!  たしかにそれも道でしょう!しかし、貴方はあの冬の
陣以降、あの星に誓ったのではありませんか!」
「はぁ?」
「真に人々を感動させる!そんな同人誌を作るのだと誓われたのではないのです
か!」
「うっ・・・」
「そのためにはあえて地を這い、底辺のイベントをこなし、人々の信頼を得るのが
もっとも確かな道なのであります!
今は耐えるときです! いかに他のパーティーが今栄華を極めいようとも、真の信
望と実力に裏打ちされたものに追い落とされるのは世の必然!
貴方は真にこみパを照らす陽光になれる女帝なのですから!」

大志は大げさな演説をぶってみせた。
ご丁寧なことに、大志が指差した先には、岩石の天井に変わり、サンサンと太陽が
輝いている。 ついでに、閉鎖空間での反響まで再現されている為、洞窟内に響く
こと響くこと・・・・。
詠美は大志の発言内容をZ80な頭でたっぷり3分間ほど解析していた。
結果・・・

「・・・そ、そぉーよね! 下々が見向きもしないことをきっちりやって、臣民の信頼を
得てこそ女帝よね! そうよそうよ!
じゃ、いくわよぉー!!
<詠美ちゃんとその従者達>出発ぁーつ!」
「だれが従者や!またんかいコラ!!」
由宇の突っ込みなど気にもせずに、詠美は洞窟の奥へ進んでいく。


「さて、当面の問題は解決した」
「そーだな」
「でわ、我輩たちもいくとしよう」
「・・・そうだな」
なにか大志の手のひらで踊らされているような気がしなくもないが、俺は綾を連れ
て歩き出した。

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「またんかい詠美!」
「うるさいわねー。人間様はパンダに合わせて歩く必要がないって、法律で決まっ
てんのよ!」

バシィー

「ああっ ちょっと! パンダが人さまを叩い・・・」

バシ
ゲシ
ドゴ
「ふえぇぇぇぇぇぇぇん〜」

由宇の情け容赦ないハリセン3連撃に襲われ、HPがいきなり半分まで減ったのを
ステータスで告知された詠美は泣き声を上げた。

「あんたが何も考えずに先進むさかい、和樹たちとははぐれたやないか!」
「へ?」
「迷子や迷子! こんなときに怪物と出会ったらどないすんや、ボケ!」
「ふふふ」
「なっ、なんや?」
ちっちっちっ
人差し指を振りながら、詠美は豪語した。
「この詠美ちゃんさまが、こんな本来下々のクリアすべきイベントに出てくる怪物ご
ときにやられちゃうわけないじゃない!
 もし出てきても、このムチでチョチョイとノシちゃうんだから☆」 
「そんな簡単にいくかいな・・・」
この根拠のない自信は何処から来るのだか・・・
由宇は心底あきれて深いため息をつく。
「何?それとも和樹がいないと不安なのパンダ?
だめよぉ〜パンダは人間とフリンできないって国連憲章で決まってるんだから〜」

バシィー
「ふえぇぇぇぇぇぇぇん〜」
詠美のHPは残り1pになった・・・。

「しょ〜もない突っ込み対するバツや・・・」
ステータスを見ながら泣く詠美を尻目にそう言い放ち、由宇は周囲を見渡した。
岩石が剥き出しだったはずの壁や地面は、いつのまにかレンガが敷き詰められ、
この先には何かありますよぉ〜と言わんばかりである。

「なんかベタな展開やなぁ・・・」
ドシン ドシン
言わなきゃ良いのに、そのベタベタな展開に拍車をかけるように奥から重い足音と
共に何かがこちらに歩み寄ってきていた・・・。

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「綾、どうした?」
下を向いたまま、とぼとぼと和樹の後を歩いていた綾は、顔を上げずにふるふると
首を横に振る。
綾が物静かなのは知っているが、洞窟に入ってから一言も発していないのが正
直、気になっていた。

いや、理由はわかっている・・・。
自分のせいでゲーム開始が遅れたことを気にしているのだろう。
都合40分遅れでスタートしたのだ、その内20分は綾が体の線がしっかり出るセン
サースーツに着替えるのを躊躇したためらしい。由宇曰く、そう言うことに成ってい
る。・・・が、多分詠美と二人して何かやらかしたのだと俺は見ている。

そこに大志の先の発言だ。
大志も(一応)悪気はないのだろうが、周囲への配慮が足り無すぎる・・・。
そう思いつつ、俺は諸悪の根源を殺意の視線を向ける。

ひょい
大志は、いきなりサイドステップで俺の視線を外した。
「たぁ〜いぃ〜しぃ〜」
俺は青筋マークが3コと共に発生した攻撃衝動を押さえつつ、大志に退去命令を
含んだ言霊を投げかける。
「ふむ・・・我輩は先行した女性陣を探しに行くとしよう
同志和樹、後詰めを頼む」
とっとと行け・・・と電波を飛ばすと、大志はケムール人の様に疾走していった。
ネタが古いぞ、大志・・・・

「綾」
そう呼びながら、肩越しに見たのだが、やはり下を向いたまま。
仕方ないので、そのまま綾の手を掴んで引き寄せた。
「キャ」
足をもつれさせながら、綾は俺の腕にしがみ付くようにして横に並んだ。
そして、手を繋いだまま、しばらく歩いた。

「・・・ません」
「ん?」
「すみ・・・ま・・・せん」
綾が搾り出すように声を発する。
あの日、雨の夜のときのように・・・。

「人にはさ、」
「?」
「人にはさ、それぞれ速さがあるから」
「・・・・はい」
「やっぱりね
人の速さに合わせるのは、大切なことだよ」

ビク
綾の震えが、繋いだ手から伝わったような気が、した。

「でもね」
そう言って手を握りなおす・・・少し強く。
「急に”それ”は上げられないし、
自分の”それ”を忘れてまで、合わせても意味はないから」
「・・・」
「だから、綾の速さで、少しずつでも相手に合わせていけるなら、それでいいよ」
「・・・」
「俺はそう思ってる」
「はい・・・」

やり取りはそれだけだった。
でも、これだけでも、俺たちは通じ合える・・・。
そう思えた・・・。

「でもさ・・・」
「はい?」
「そんなに体の線がしっかりでたの?」
「もう・・・」

綾がそう言って少し頬を膨らませたのを見て、もう大丈夫かな?
・・・笑いながら、そう思った。

・・・が・・・

ドドドドドドドドドドド

そんな和やかな雰囲気も、奥から聞こえてきた騒音の中に、消えた(怒)

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「ムカツク!ムカツク!!ムカツク!!!ムカツク!!!!ムカツク!!!!!」
「おーおー、そこまでムカツクんならここ置いてったるさかい、ビシィ〜っとあの化けモンに焼き入れたり!」
脇に詠美を抱えて逃げダッシュする由宇はそう言いつつ、散発的な攻撃を紙一重
で回避している。

洞窟の奥から現れた「リビングメイル」に追いかける二人(実質的には1人)は、既
に小1時間走りっぱなしである。

「だぁーって、どこかの脳みそヘタレパンダが、なぁ〜にも考えずに詠美ちゃんの
HP減らしちゃうもんだから、戦闘なんてできないしぃ〜」
「ピキィ」
<由宇の殺気が5Pアップした>

「それなら心配ご無用!」
突如、詠美の真横に大志の「顔」が出現した。
「・・・っわぁ! どこから沸いて出たのよ九品物大志!」
「その程度のことを気にしてはいけません、大庭女史」
「気にするわよ!」
それは気にするだろう。
なにせ、スポットライトに照らされつつ、地面から迫り出しながら現れたのだ。
「なに、我輩のスキルの一つです」
「・・・いいわね、それ・・・」
なんとなく、目立てそうなスキルを羨ましがる詠美である。
「何言うとるんやボケ!
大志はんも、なにか現状に対して有益なスキルつこうてんか!」
「ふむ・・・では、大庭女史には<エリクサ〜>」
<詠美のHPは全快した>

「大志はんナイス!・・・・気張ってこいや詠美ぃ〜!!」
トリャ・・・っと、詠美を片手で持ち上げた由宇は、クルっと後方に向きを変えた。
そのまま、片足を大リーグボール1号の投球ホームよろしくを高くあげると、詠美を
容赦無く「リビングメイル」に投げつけた。

その直後、再びダッシュを開始したした2名は、詠美の絶叫と、鈍い音を聞いたと
いう。
「こ、こ、ここの裏切り者ぉ〜」

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「・・・で、詠美がノビているわけか・・・」
俺は棺桶の中からぶつくさ文句を言う詠美を横目に由宇に言った。
「ったく、1個100Gもする薬使うても、大して役たたんやっちゃ!」
由宇は自分の所業を棚に上げ、苦々しげにそう言い放った。

状況は好転していない。
俺は、綾を抱きかかえて
大志は、戦闘不能で棺桶に入っている詠美を脇に抱えて
由宇はムカツク思いを胸に抱えて
袋小路に追い詰められていた。
ここに至るまで何度か戦闘が行われたが、ハッキリ言って話にならない。
レベル等の操作をしてると大志は言っていたが、相手のHPは気持ちしか減少して
いないのだ。

「致し方が無い、最終手段をば・・・」
大志は、なにやらエクスプローラーを操作しはじめた。
途端に・・・
俺の体は自由を失い、抱きかかえていた綾を降ろした。・・・かと思うと、勇ましく「リ
ビングメイル」に戦いを挑んだ!

「おっしゃ!綾ちゃんにいいとこ見せたってや!」
由宇の声援を受けつつ、俺の身体は勝手に攻撃・回避運動を繰り返した。
「大志!何したぁ!!」
「同志和樹・・・我が傀儡となって踊るがよい!」
そう言い放った大志の手には、PSのコントローラーが握られていた。
そこから伸びるコードは俺の背中に・・・
「やめぇーーーーーーいぃぃぃぃぃ〜!」
俺の叫びが洞窟に木霊した・・・。

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<次回予告>
大志により傀儡とかした和樹の攻撃にたじろぐ敵モンスタ−。
だが、真の切り札は別にあった!
我々の前に現れた、あの赤毛の物体は何だ?!
世界が白き閃光に包まれるとき、全ての物質は灰燼へと帰す!

<こみパSS>NEXT!
「紅の滅殺神」
次回もこの印刷所に、ギリギリ入稿了OK!

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くるっく〜
数日振りです、見ずかみです。
比較的まともに見えるよう書いたSSの続きです。
タイトルが徐々に伸びておりますが、めでたくこれ以上伸びません(決定)

前回の予告でギャグと言いましたが、たいしてギャグにも成ってないです。
修行不足です。ついでに長たらしくなりました。やはり途中で切ればよかったかな?
精進しなければ・・・
ここに書き込む毎に「レベルが上がった!」と言われる様になりたいですね、ホント。

でわぁ〜

こみパ/一応ALL/ギャグ