五月に事起こり迷惑こうむるは我と愛子・・・ <こみパSS:第4話> 投稿者:見ずかみ
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五月に事起こり迷惑こうむるは我と愛子・・・ 

<こみパSS:第4話>

by 見ずかみ
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「本日はゼガが社運を掛けて送りだします<空想大陸 マチュ=ピューア>テスト
プレイ大会」にお集まり頂き、誠にありがとうございます。それでは〜」

5/14・15・16の3日間、ゼガの本社において大規模なテストプレイが開催された。
「ゼガ」の役員・間発担当者によるレセプションを眠たげに聞きながら、和樹はここ
数日間のことを思い出していた。

まず、最も張り気っていたのが詠美だった。
権威失墜後、紆余曲折をへた彼女は、同人誌を描くことに事更熱心になった。
・・・ただ、流行者に飛びつきやすい性癖がたまに傷ではある。
(外傷例:こみパ前日に発売されたビデオを鑑賞、周囲を巻き込んでコピー本を作
成する。)
今回もこのテストプレイに関する同人誌を出すべく、事前準備に没頭していたよう
だ。 一般教養の授業で隣に座っていた綾は、彼女が授業中に身を起した状態で
爆睡している様子を不安そうに話してくれた。 一度、授業に潜り込んだのだが、
教授の言葉の要所ではご丁寧なことちゃんと「こくこく」と相槌うっていた。
これで、最終的には綾のノートを当てにしているのかと思うと腹が立ったので、額
に「肉」のシールをはってやった(ちょっと悪魔)。ちなみに、家に帰るまで気づかな
かったそうだ・・・・。

由宇は、前々から出す予定だった本があるので、それを急ピッチで描き上げてい
る・・・とメールやFAXで近状報告があった。 最初はメールだったが、テストプレイ
開催が近づくにつれて、泣きの入ったFAXに変わっていった。
「ベタをべったら漬でベタべぇ〜た」など意味不明なものから、「うち、何で生きとん
のやろぉ〜」、「独り身のばかやろぉ〜」。 終いには「和樹SOS至急来ったって
やぁ〜(涙目イラスト付属)」、「アシスタント募集、報酬はウチ☆(お色気イラスト付
属)」etcなど、ホントにキレた内容のFAXが最短5分置きに流れてくる始末・・・。
とくに綾がお泊りに来ている日(なんで知ってる由宇・・・)の夜中に集中していた
で、茶化されるのを承知で怒鳴りつけてやろうかと思った。・・・・のだが、ここで綾
が電話線を壁から引っこ抜く強攻策を実行した。直前に受信した「ウチを和樹の好
きにしたってぇ〜〜〜」というFAXに対する、彼女のささやかな報復だったよう
だ・・・。
強くなったな、綾・・・・

綾は慣れないジャンルなので、俺と合作本と言うことにした。ただいま一生懸命に
世界観とゲーム用に用意された登場人物などを勉強中である。
いつもの様に自分で全て決められるわけではないので手間取っているが、綾とし
ては、自分の作った話が多くの人々にプレイしてもらえるかもしれない期待感も手
伝って、嬉々として励んでいる。
先日など、風呂場から綾の鼻歌が聞こえてきたものだから、ノってるなぁ〜・・・など
と、苦笑したものだった。
 
大志は、テストプレイ前日までキャンパス内でその姿を見ることは無かった。
一緒に選択している授業には時折顔を出しているのだが、ロクに話をする事もな
い。連絡はメールやFAXが殆どで、FAXの奥付が「ゼガ」になっていたので、テスト
プレイの件で駈けずり回っているのだろうと理解した。 誇大妄想癖の固まりかと
思っていたものだが、今回の件でよほど「ゼガ」と親密なパイプでもできたのだろう
か?・・・っと正直、感心したものだった。

くいくい
「和樹さん?」
「ん?」
まどろみの中でここ数日のことを思い出していると、綾が現実へ引き戻してくれた。
「なに?」
「これ・・・記入してください・・・って」
そう言いながら、綾はゲームのエントリーシートを渡してくれた。
由宇や詠美はすでに記入を始めている。
辺りを見れば、既に書き終えて席を立つ人もいる。

「・・・では、皆様エントリーシートのご記入が済み次第、先ほどお渡しいたしました
番号札毎に割り
振ってあります更衣室でインナースーツの着用をお願いします」

俺はあわてて記入を始めた。

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「それでは、キャラメイクを開始します」

インナースーツに着替え、一人一人専用筐体に入った俺たちはキャラメイクを始め
た。

様はTRPGや一般のオンラインゲームのように自分の分身を作成していくのだ
が、このゲーム、やたらと選択できる職種が豊富だった。
合わせて、服装の変更も(選んだ職種から極端に逸脱しない限り)変更が可能な
為、女性陣のメイク完了にはかなりの時間を要した。
女性の衣装会わせは、とかく時間がかかるものである・・・。

「・・・遅いな、女性陣は・・・」
「ああ・・・」

そう言って、紙コップのなかのコーヒーを飲む大志と俺は、時計を見、続いて壁に
設置された液晶画面に映し出された「Please Wait」の文字を見つめた。
俺達二人は、許可をとって筐体から出て、ドリンクコーナーで一服していた。もう、
かれこれ20分は経っているのだが、女性陣のメイクは終了していない。実のとこ
ろ、綾がインナースーツに着替えるのを躊躇したため(体の線がモロに出るのだ)、
他の参加者に比べ更に20分遅れている。
一緒に幾つかのモニターがあるのだが、そこではすでに戦闘に突入しているもの、
迷宮をさ迷っているものなど、ゲームがそれぞれ進行している様子が映し出されて
いる。

「大志、お前どの職種を選んだ?」
「ふむ、<策士>と<?>だ」
「・・・へ?」
「どうした魂のぶらざ〜?」
「おまえ、<策士>なんて職業あったか?」

事前に渡されたパンフにも、今日メイキング中にも見かけなかったのだが・・・。

「β版のゲームで、データの変更が行われるのは日常茶飯事だ。後から追加した
のだろう?」
「そー言うもんかな?」
「そー言うものだ・・・」

しかし・・・こいつのキャラそのまんまだな・・・

「で、スキルは? それに<?>って何の職業なんだ?」
「うむ・・・実はな・・・」
そう言って、耳を貸すように手で合図する。
こいつのことだ、ちょろまかした極秘資料から、隠しキャラでも見つけのだろうと
思って耳を近づけると・・・

「ふぅ〜」
「ずぅぅぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

俺はその場から3mほど飛びのいて硬直した。 全身鳥肌状態で大志を敵性体に
認識・・・

「ボク達、友達だよね?」

・・・の「ね」を言い終わった瞬間、俺の蹴りで大志が数m先の壁まで弾丸のように
吹き飛ぶ。

ズドォォォォォン

「・・・うむ、良い蹴りだ・・・」
「だぁぁんまれぇぇー」

爆塵の中から立ち上がった大志に仕掛けた追い討ちのカカト落としは、周りの社
員の制止でキャンセルされた。
チィ!

「それ、お嬢様方の着替えが終った、そろそろ我々も冒険の世界へ旅立とうではな
いか!」

そう言うと、大志は大音響で笑いながら首の位置を手で修正しつつ、筐体のほうへ
消えていった。 
画面には何時の間にか女性陣がスタンバっているようすが映し出されている。

「まったく・・・」
おれは先ほどの悪寒を振り切る為に筐体に向った。

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「現在、185体の「AXY」が「QY」と偶発接触可能の状態にあります。
これより、選別ルーチンA-1121起動。
必然接触に適した「AXY」のマーキングセットを開始します。

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数日振りです、見ずかみです。
比較的まともに見えるよう書いたSSの続きです。
タイトルが徐々に伸びておりますが、その内、止まるかもしれません(仮定)

何か無駄な部分が多いのですが、なかなか削れません。
まだまだ精進しなければ・・・

次回は多分ギャグになると思います。
もし、こんなお話でも読むのを楽しみにされている奇特な(お゛い・・・)方がいらっ
しゃいましたら、気長にお待ち下さい。

でわぁ〜