ふう あたしはため息をついた。 梅雨前の土曜日の午後。明日は模擬試験だというのに勉強に身が入らない。 あたしと浩之(こう呼ぶとなんかはずかしい)はこの春に3年に進級。 とうとう受験生となってしまった…が、身が入らない。 あの、「神戸にかえるんや!!」と息巻いていた頃がウソみたい。 ふう 今日何度目か解らないため息。 「あかん、身が入らん……よっしゃ」 思い立ったが吉日。あたしは早速着替えて出かけることにする。 「いってきま〜す」 …誰もいない家に対して声を掛けて… あたしが目的の場所に近づくと目的地から小柄な人が出てきた。 「あ、保科先輩」 「こんちは、松原さん…もう終わったん?」 「いえ、私は用事があって先に帰るんです。藤田先輩ならまだいますよ」 「ありがと」 「じゃ、いそぎますんで」 二年生となっていくらかマシにはなったんやけど、あいかわらず 丁寧な子やな。松原さんは。 …しかし、相変わらず急な階段やな。ここは。 「でや!」 「ハッ!!」 バシィ 階段を登るにつれてかけ声がよく聞こえる様になる。 相変わらず何やけど、ようやるわ。ほんまに。 ……声を追いかける様に神社の裏へ回る。 ……いた。浩之が。 来栖川さんと手合いをしているんやけど…一方的にやられてへんか? バシィ! バシィ! …あかん、やっぱ、見てられへん。 「ハッ!」 ドゴォ!! あ、やられてもた。もちょっとしっかりして欲しい。 「ふう。あ、保科さん。ほら、浩之、しっかりして。彼女が来たわよ」 「…よう、智子。はは、情けないとこ見せちまったな」 「何ゆうてんねん。来栖川さんが強すぎるだけや」 「…そうかもな」 「あ、ひっど〜い。人をばけものみたいに」 「智子、もうちょっとまってて。すぐ終わるから」 「うん、ええよ」 「…ああ、もう夏ね。暑いわ〜」 なんか来栖川さんが言っているようやけど、私たちは無視した。 ……下手に対応すると墓穴を掘ってしまう。 「さて、どこ行こうか?」 来栖川さんと別れ、二人きりになったら、浩之がそう言って来た。 「どこでもええよ。浩之と話できるんやったら」 「う〜ん、じゃ、ヤックだな。…でも珍しい。今日は勉強してるんじゃなかったのか? 明日模試だし」 「…模試前日にクラブ活動してる人に言われとうないわ」 「そりゃねえだろう?」 「ふふ、ちょっとした息抜きや。なんか身が入らんでな。でも浩之もがんばってるんやな」 「そうかな?」 「そうや」 彼女であるあたしが見ても頑張っていると思う。クラブに勉強。 事実、去年の夏前から成績は上がり始め、今では理系のトップクラス。 去年のエクスリーム大会ではそこそこ(ベスト16)の成績。 『やればできるんだぜ』 そういう言葉を実行して見せた。 ま、長岡さんに言わせると、 『学校の七不思議ね』 と言うことらしんやけど。 「ま、今はできる限るのことをやることにしてるんだ」 去年、知りおうた頃とは違う言葉。 …今、目標が抜けているあたしとは違う言葉 …ちゃう、今のあたしの目標は 『浩之と一緒にいること』 ……結局、その日はヤックに行かず、浩之の家で あたしの手料理を二人で食べることとなった。 …ちなみにあたしを食べさせてはいない。念のため。 続く 感想、レス LF98 借貸天さま >ずばり、『外気功』では? うそです。間違えました。 「3x3」のハーンが使ったやつですね。元ネタ。 まさか、自分のレスを改定することとなろうとは…… 他のレス等をくれた方々、ありがとうございます。 また、性懲りもなく続き物ですが、よろしく。