旅情−最終日− 投稿者:未樹 祥
このSSは
  旅情−始まり− −初日− −結婚〜初夜− −2日目− −3日目−
より続いています。先にそちらを読まれることをお勧めします。
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「あ、ヒロ、そこ」

 うなじから胸の頂にかけてゆっくり唇でなぞっていく…

「あ゛あああー」

 俺の腕の中で過敏に反応する志保…


「こら、ヒロ、起きろ」


『旅情−最終日−』


 …夢…か、やけにリアルだったが…



「本当にいいの? 印鑑おさなくて?」
「いいんです、川名さん。よく考えたら結婚届すら出してませんから」

 志保の手の中には離婚届…もちろん無効だが…

「でも本当にいいんですか? あんなこと言いましたけど、結婚って悪くないですよ?」
「でもよく印鑑なんて持っていましたね」
「結婚って色々手続きがあるから、持ち歩くのが習慣になっちゃった」

 …実感、こもってるな……
…南の島に離婚届…この組み合わせの不釣り合いな事と言ったら…
なんか、こう、変な感じだよな… 全てが終わってしまいそうで…


「ヒロ、泳ご! 最終日なんだから」

 …志保に言われるまで忘れていた。そうか、もう…そうなんだ…


「じゃじゃーん、志保ちゃんとっておきの水着だよ〜」

 そういって現れた志保の水着はこれでもかというぐらいのハイレグ・ビキニ
おいおいって突っ込みたくなる。

「どう?」
「まあ、いいんじゃない?」
「まあ、いいか。ヒロ、こっちこっち、かわいい魚がいるのよ」

「ヒロ〜、そっちいったよ〜」

 どれどれ…

「うわ〜〜〜〜〜〜」

 不用意に水中を覗いた俺の目の前に、醜悪な顔をした魚…
ピラニアの顔を正面からUPでみてくれ。きっと同じ気持ちが味わえるから…

「この島で餌づけしている魚だって。名前は耕一なんだって」
「…まさか、変身するとか…」

 けらけら笑う志保。まったく…




「あ、カラオケがあるよ。ヒロ、歌おうよ?」
「まじか?」
「ふっふっふ、勝負よ」
「ベッドを賭けてか?」
「当然」

 志保の奴、歌上手いからな。…ま、例の必殺技があるから、なんとかなるだろ…

「じゃあ、私からね」
「ああ、勝手にしろ」
「ふふ、それじゃあ」

 そう言って志保が選んだのは『Feeling Heart』

偶然がいくつも かさなりあって……
………………………

 やっぱり、上手い。いや、さらに上手くなっている。

………………………
……Feeling Heart

「さて、点数はと…」

 88点

「いえ〜い」

 く、かなりヤバイが…例の必殺技 カラオケ採点機の盲点を突く で…
ん? 採点システムをよく見てみると
『KASSS』……Kurusugawa Advanced Sound Sensor System……
確か、メイドロボのセンサーを応用した感情すら考慮するシステム‥‥終わった‥‥

 結果? 聞くな。そんなもの。



「やっぱり、ベッドは私のモノね〜‥‥きゃー、キャー、可愛いー。
ベッドで寝るのがもったいない〜」

 部屋に戻ってみるとベッドには花壇から取って来たのだろう。
南国特有の花でベッドメイクされていた。

「ねえ、ヒロ、床は冷えてて気持ちいいわよ」
「…ベッドは渡さんぞ。絶対」
「ひっどーい。じゃあ、私は何処で寝ればいいのよ〜」

 ひどいのはお前だ。志保。こら、タオルを引っ張るな。

 ドーン! バラバラバラ
 ドーン! バラバラバラ

 なんだ?

「ねえヒロ、みてみて、花火よ、は・な・び」
「へえ… まさかここで見れるとは…な」

 テラスから望む打ち上げ花火

「たまや〜」
「…志保、景色にあってないぞ」
「そうかな?」
「ああ」

ドーン! バラバラバラ

 さすがに日本で見るほどの迫力はない…が、十分に奇麗だ。
ベランダからは海に向かって上がる花火が見える。

 コツン

 志保が後ろ頭を俺に預けながら花火を見てる。

 ドクン

 なんだ? やけに志保が奇麗に見える‥
…落ち着け、落ち着け。

「ねえ、ヒロ」
「…なんだ?」
「キス‥しよっか?」
「‥え゛?」
「…それ位だったら‥いいよね…」

 そう言って目を閉じる志保…
そっと唇に触れる…

 あ、柔らかな匂い‥ 香水を使わない志保の匂い‥

「ヒロ、私の裸、見たでしょ。知ってるんだから…」

 そう言って腕を回してくる志保。
俺も、そっと志保の背中に腕を回した…

 そう、たったそれだけ。
たったそれだけの‥きっかけ‥


「んん‥」
「んあんっ」

 二人の唇の間からもれる声
志保の舌を責めながら服を脱がしていく。
そしてうなじから胸の頂にかけてゆっくり唇でなぞっていく…

「あ゛あああー」

 俺の腕の中で過敏に反応する志保…
いつも聞いている声じゃない、だけど心地よい声…

「‥やだ‥こんな声‥」
「可愛いよ‥もっと聞かせて」
「ばか‥‥んぁっ」

 そっとベッドに寝かす。

「ヒロ‥ お願いぃ‥ ヒロー」

 志保の中は熱く、そして、優しかった。


 …二人の‥8年分の想い‥それを確認したかの様な‥
ただ、貪欲にお互いを‥求めた‥






 朝、朝食の席。いつもと変わらない朝。
いや、二人とも、焦点の定まらない顔。呆気ーとしている。

「おはようございます。藤田さん」
「早いですね〜。もう出発ですよ。私たちこれからシンガポールへ回って観光するんですよ」

 対応する元気すらない。あ、

「花…付いてる」

 志保の髪に花が付いていた…





 俺らと本当の夫婦とにたいした違いなんてーーないと思う。
あるとすればーそれは…

「ありがとね、ヒロ。旅行に付き合ってくれて」

 空港で妙にすっきりした顔で志保がそう言って来た。

「ねえ、ヒロ、あたしたち、偽装だよね」
「あ、おい」

 これからだろ、俺達には…ここで別れたらどうなるんだ?

「ヒロ…ありがとう」

 全て‥達観したかのような志保の顔。その顔に…
すべての言葉を飲み込む…

 あーあ、しょうがねーよな。あいつは…

 そして、志保とは空港で別れた。
それが、志保との別れとなるとは知らずに…





 志保はその後、学校すら辞めた。あかりにもなんの相談すらなかったそうだ。
後から思うと、あの旅行すら志保の企みだったのではないかと思えてしまう。





 後日、来栖川トラベルから一枚の写真が届いた。
その写真には、緊張した俺と、真っ白なドレスをきて、幸せそうな顔をした志保が写っていた…



 結局、あの旅行で得た物は

たった一枚の写真と…

たった一晩だけの………情

 
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ぐあー、おわった〜。しかし、何書いてんだ? なんか、元ネタそのまんま。
切なさが少しでも伝われば、幸いです。


感想・レスです

開発3   R/D 様

 スケルトン・マルチ? もちろん、セリオも?!
 でも、来栖川に、内部模型で有りそうで、恐い…
>暗い話しか書けないんですよ
 その才能、分けてください。(マジ)


ジャンル シリアル/To Heart/志保
     最終回のみ18禁
コメント 旅行が当選した志保