旅情−初日− 投稿者:未樹 祥
この作品は 旅情−始まり−の続編です。
先にそちらを読まれることをお薦めします。
(数個下に有るかと思います)
別に読まなくても楽しめる作りと成ってはいます。

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 クー― スヤスヤ

 まったく、よく寝てるよ。志保の奴。身動き取れないんだけどな。

「…大変お待たせしました。当機はまもなく着陸態勢に…」

「ほら、志保、起きろ。もうすぐ着陸だぞ」
「う〜ん、なに?」
「着陸だって。あ、涎でてるぞ。ほら」
「え、ウソ。あ…ありがと」

  ハンカチを受け取りながら志保は顔を赤らめる。

「いいって。ほら、シートベルトしろ」
「うん」
「ヒロ、私が寝ている間、変なことしなかったでしょうね?」
「するか」

  そう、いま俺と志保は飛行機の機内に居る。で、いままで志保は俺の肩に持たれかかって
寝ていたわけだ。
もともとなんでこうなったかというと、話は2月前に遡る…




 「ねえ、ヒロ、旅行しない?」

   そう志保は缶ビール片手に切り出した。

 「あ、何いってんだ?」

   おれはいま、大学へのレポートのワープロ打ちでろくに聞いていなかった。
 ま、志保の話をまともに聞くとろくな事がないからな。
 しかし、俺の部屋は休憩場所じゃねえぞ。
 俺と雅史は4年制の工学部に入学したが、あかりと志保の奴は付属の短大に入学している。
 そして、志保は大学が終わるとなんとは無しに俺の部屋へ来て
 ボーとして(俺んちのビールを飲んで)帰るのが当たり前となっていた。
 ま、別に彼女ってわけでもないんだが。要は気があうって感じで。
 ま、雅史はクラブが有るから滅多に来ないが、あかりもよく来る。
 3人で夕飯を食べるなんてもはや定番となりつつある。

 「旅行よ。海外旅行」
 「そんな金ねえよ」
 「やーねえ。話聞いてなかったの?  ほらこの懸賞。4泊6日。ペア1組。
 ご招待よ。ご招待。ロハよ、ロ・ハ」

   そう言いながら志保の奴、俺の背中から抱き付いてもたれかかってきた。

 「やめろ。重い」

   ん? 志保、以外と胸あるんだな。

 「ほら見て、スイートよ。南の島、青い海、青い空、ご招待よ〜。私を呼んでるわ〜」

  そう言いながら雑誌のページを見せてくる。

 「だいたいこんな懸賞、当たる訳が……ん、いつの雑誌だ? 昔のじゃないか?
 まさか、志保……」

   嫌な感じが…
 ニマーと志保は笑うと、一枚の葉書をだした。
 そう、そこにはこう書かれていた。

 『祝。御当選!! 長岡志保様』

  ぐあ、まじかよ。

 「…あかりといけ、あかりと」
 「それが駄目なのよね〜。ほらここに書かれているでしょ。『男女ペア』って。
 だから、あんたを誘っているんじゃない?」
 「雅史は?」
 「サッカーの試合、あるのよ。この時期には」

  そうだった。あいつはこの時期はリーグ選でまず無理。

 「それに、ヒロ、あんたと行きたいから誘ってるのよ」

  う〜ん、ま、いいか。どれどれ、

 『…前後半年以内にご結婚またはご予定の男女ペア3組に…』

   あ、ほんとだ。男女ペアって書いてある。って、あれ、違和感が…

 『…ご結婚またはご予定の…』

   な、なに〜

 「…おい、志保、ここ…」
 「あ、気が付いた? いいじゃない。『偽装』で」
 「偽装って…」
 「応募条件に『結婚しろ』ってあるわけじゃないし。第一、当たっちゃってるわよ。
 もったいないじゃない。」
 「おまえ…」

   志保はニコニコ笑ってやがる。まったく。ま、たしかに『ただ』だしな。


 そう、その時俺は『ただより高いものは無い』ってことを忘れていた…





  入国審査を済ませ、ロビーに出ると…
(ちなみに入国審査は志保にまかせた。こいつ、何時の間にこんな語学力を…
そういえば、ちゃんと進学したんだな、こいつも)
あちゃぁ、ヤッパリ。カップルばっかり。

「ふ〜ん、カップルばっかりね」
「カップルってよりは、『新婚』ばっかりが正解だな。これは」

  ま、こんな時期に来るのは新婚さんだな。

「ねえ、私達もそう見えてるのかな?」

  腕を絡めてくるな。腕を。…あ、胸が…こいつ、わざとやってるな。

「ほら、荷物かせよ。持ってやるよ」

  志保の奴、一瞬驚いた顔をしたが、満面の笑みで

「はい、…ありがと」

  えらく素直だな。調子が狂うぞ。これは。

「…いやはや、見せつけてくれますね」
「…なに言ってんですか。川名さん。そちらこそ、平均気温を上げてますよ」

 ふと横を見ると川名夫妻がいた。(もちろん新婚だそうだ)

「…ねえ、こちら誰?」
「ああ、志保が寝ている間に飛行機の中で知り合った川名夫妻。今回はハネムーンだって」
「わあ、おめでとうございます」
「なにを言ってらっしゃいます。奥さんこそ」
「…奥さんだなんて」
 志保の奴、恥ずかしがってやがる。まったく、猫被りの上手いやつだ。
  
「−日本から来た藤田様ですね−」

  ん、いつのまにか人が…いや、ちがうHM−13だな。

「そうですが」
「−ようこそいらっしゃいました。私、来栖川トラベルのクリスティです。
クリスとお呼びください−」

  来栖川? そういえば、この懸賞旅行は来栖川が主催だったな。
それならセリオタイプを使っているのも頷ける。
まだ海外じゃそんなに普及してないからな。メイドロボは。

「おや、お迎えが来た様ですね。じゃ、ここで」
「よい旅を」

 そんなことを言いながら川名夫妻はいった。しかし、あの奥さん、綺麗だったな…

 ガツン
 
 いってえ、何しやがる。

「ふん、なによ。でれでれしちゃってさ」
「志保こそ、『奥様』ってよばれて…」
「あ、あれは、その…」
「−あの、よろしいでしょうか?−」

 あ、まずい。そういえばお迎えが来ていたんだ。

「あ、はい」
「−では、こちらへ。お車をご用意しております。
式場のほうの準備も整っておりますので−」



  ん? 式場? なんのことだ?
志保はニコニコ笑いながらクリスについて行くし。しょうがねえ。
車(さすがに先輩の送迎車には劣るが高級車だ)に乗り込む。
…さすが。すべる様に発進する。

「なあ、会場ってなんの事だ?」

  クラシック音楽が響く車内で志保に耳打ちすると、

「ヒロ、何言ってるの?」
 
  小馬鹿したような返事。だが、こいつらしいのでなんか安心する。

「解らないから聞いてるんだよ」
「ねえ、クリス、あとどれくらいで着くかしら?」

  人の事、無視しやがる。

「−右前方にまもなく…あ、見えました−」

  右前方? あれ、十字架? ってことは教会か?

「式場って、教会か?」
「そうよ、ヒロ」
「なにがあるんだ?」

  志保は はあ〜と溜息をつくと、

「結婚式に決まってるじゃない」
「結婚式? だれが結婚するんだ?」

  俺の記憶じゃ、とくにそんな奴はいないが…

「なに言ってんのよ。わたしたちがあげるんじゃない」

  …ワタシタチガアゲルンジャナイ…

…変換 …私達が挙げるんじゃない…

ああ、俺と志保ね、なんだ…な、なんだと〜

「−式場に着きました−」

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感想&レスです

The Day of Multi DOMさん

 とうとう転校。しかしそうなると「佐々木浩」がどっかいっちゃいますね。これだと。
またラブレターの嵐。しかもセバスチャン送迎付き?

ふきふき99 AEさん

 元がよくわからないので、ついていけませんでした。
うーん。?

王道の狗福 狗福さん

 感想どうもありがとう。
 DOMさんにも言えることですが、まだ読み違えているかも。
(今回でわかったかな?)
−始まりーは正直、「引っかけ」がコンセプトでしたから
狙い道理で、レスを読んだ瞬間、「よっしゃー」て言ってしまいましたよ。