旅情−始まり− 投稿者:未樹 祥
「ねえ、ヒロ」
「ひろってば〜」

 う、う〜ん
「こら〜、ヒロ、早く起きなさい!」

 ガバァ

 さ、寒い。その寒さに目がばっちり冴えた俺が見た先には…
布団を剥ぎとった志保がいた。

「なんでお前がいるんだ? 志保?」
「え、何?」
「なんでお前が朝からいるんだ?」

 俺の言葉に志保は驚愕している。

「…やだ、ヒロ、覚えてないの? ねえ、嘘でしょう?」
「何のことだ?」

 ジワーとその目に涙をためる志保。な、なんだ?
「夕べ、ヒロ……」

 そして涙声で語りだした…



 「もうこんな時間ね」

  もう時刻は午後9時。最近、毎日ってわけでは無いけど、
 ヒロの家によってから帰るってのが普通になっていた。
 ま、お互い好きなことをやっている、っていう関係。
 今日も今日で二人でビールを飲んでいた。
 この間、短大に入ってからの友人にこの事を話すと、

 「なにそれ〜。若い男女が二人っきりですごして何も無し? 変態よ〜」
 「そうかな。割と普通なんだけど」
 「絶対おかしいって」

 とか言われたけど。ん、なに? ヒロがこっちをじっと見てる。な、何?
 ち、ちょっと、あんなこと言われたから意識しちゃうじゃない。

 「なあ、志保」
 「な、な、なに?」

  な、なんでどもっちゃうのよ。ヒロは私の腕をつかみ、抱き寄せた。

 「ちょ、ちょっと…」

  あたしは抵抗しようとしたが、腕力ではかなわない。

 ん、んーー

  唇にヒロの感触。あっという間。
  いつの間にかヒロの腕が優しく私を抱きしめている。
  あたしはもう、抵抗しなかった。いや、できなかった。
 ドサッ。あたしは押し倒された。そんな、ヒロが…

 ぷは

 「…ヒ、ヒロ…」

  やっと口が開放されたが、そんなことしか言えなかった。

 「どうした?」

  そんなことをいいながらもヒロの手は私の体を…

 「きゃ」

  ヒロの息があたしの首筋にかかり、そして手は服の上からわき腹から胸にかけて…優しく愛撫する。

 はあ、はあ。

  あたしの鼓動が早くなる。正直、何も考えられない。ただヒロになされるまま。
 普段からは考えられないヒロ。そして体から沸き上がる初めての感覚。
 ただ、ヒロと触れている所だけが敏感になっている。

 「志保、俺のこと、好きか?」
 「…ずるい。こんなことしといて。ねえ、…ベッド…」
 「ああ」
 「きゃ」

  ヒロがあたしの体を軽々と抱える。あたしは、ヒロの胸に顔を埋めて赤くなった顔を
 見られないようにするのが精一杯。

 ドサァ

 「…志保…」

  ベッドに横たえられた私。おかしい。自分が自分じゃない。こんな自分がいたなんて…

 「ヒロ、優しくして。そして今だけでいい。あかりのことは…忘れて」


「それからヒロ、あたしにあんなことやそんなことまで…
…まだ、少し痛いんだからね」

 志保は俯きながらそんなことを言った。顔が赤くなってるのが見て取れる。
まったく、朝っぱらからよく言うよ。こいつ。
そう、志保の話を聞きながら俺は思い出していた。
…志保が家に泊った本当の訳を。

「はいはい、で、時間はいいのか?」

 俺はベッドから降りながら声をかけると、

「あ、いっけな〜い。ヒロ、早く起きて。朝ご飯できてるし」

 さっきまで泣いていたのはどこへやら。あっけらか〜んと言いやがる。
やっぱり、嘘泣きだな。

「ほら、早く早く」



  ガラガラ

「時間、どうだ?」
「ギリギリ、まじでやばいわよ」

 俺と志保は全力疾走していた…が、普段ほどの速度は出ていない。

「まったく、朝っぱらからガセネタいいやがって」
「なによ〜、寝起きが悪いヒロのせいでしょ〜。まったく、何の為にヒロの家に泊ったんだか」

 走りながらの喋る二人。周りから変な目で見られてる様だが、かまっていられない。
遅れたら洒落にならないからな。あ、あれは…

「へい、タクシー」

 キキー

「なに? タクシー使うの?」
「ああ、間に合わなかったら洒落にならないからな」
「それもそうね」

 バタン
 タクシーの運ちゃんが何も言わずにトランクを開けてくれる。ありがたい。

「お客さん、どちらまで」

 どうやら荷物でわかっているようだが…

「空港まで。急いでお願い」

 志保の奴がウインクしながら千円札を渡している。さすがというか、慣れてやがる。

「空港までですね」

 そしてタクシーは発進した。

「…なんとか間に合いそうね」
「ああ、そうだな」

 そう、志保は俺の家の方が空港まで近いから夕べから泊っていたのだ。

「…じゃ、しばらくお願いね。ダーリン」

 そんな志保の言葉に、俺は苦笑するしか無かった。
これが俺と志保の旅の始まりだった。

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感想です

LF98 借貸天さま
 芹香さんがでてきましたが、予想とは少し違ってしまって、そうくるか〜って感じです。
HMもでてきたし。(あと何キャラでてくるんだろ?)

野球 R/Dさま
 時速300のボール…バントすらできないぞ。量産セリオがいれば勝負になったかな?

来栖川綾香は人気者  久々野 彰さま
 同人誌ものは最近いってないんで(調べてもいない)ですけど、
たしかにありそうだな。そういう本。「彼女」っていうメールが届くぐらいだし。
(綾香SSで「彼女」っていうのがあります。実話だそうですが…)

鬼狼伝 VLAD様
 感想、ありがとうございます。ま、ご指摘のとうりだと思いますが、
基本的に綾香サイドですので。(F/Cにも入ってますし)
で、感想は…
すいません、まだ最初の方読んでないので。(リーフ図書館分)
読み終わったらぜひ。

the day of multi DOMさま
 あ、香織が覚醒して…壊れはじめた?
最初、香織は芹香そっくりに(綾香+志保+梓)/3の性格かな?
と、思い、エルクゥに魔力に格闘技? あとは電波だけかと思ったのですが。
予想がはずれ、どうなっていくんでしょうね。これから。
 「風邪」の感想をどうも。
ちょっと、綾香らしくないかも と思っていますが。