ふっ、あーあ。
目を覚ます。
時間は午前7時半。
いつもどおりだ。
今日は少し曇っているが、かろうじて雨は降っていない。
昼まで持ってくれるといいな。
「よっ、と」
ベッドから体を起こす。
寝間着代わりのシャツを脱ぎ、クローゼットから適当に今日の服を取り出す。
よし、これでいいかな。
した(一階)に降りる。
「おはよう、浩之」
今日は珍しく、母親が帰ってきているのだった。
「おはよ」
両親はすっかり会社近くのマンションが気に入ってしまったらしく
、相変わらずオレ一人でこの「藤田邸」を切り盛りしている。まあ、
あかりもたまには来てくれるんだけど。
さて、朝食を食べるか。
食卓には、すっかり支度ができている。
「じゃあ、浩之、私先に行くから。戸締まり、お願いね」
母親は、オレが食べ始めるとさっさと出ていってしまった。
まあ、いい。今はたべるのみ。
「‥‥‥」
さて、髪を整えて‥‥‥と。
新聞にも一応、目を通す。
「新聞も見ない者は、大学生ではない!」
例の、マス論の先生のおことばだ。
でも、特に面白い話題もないな‥‥‥。
などと思いながら、30分ほどたった。
そんなとき。
−ぴんぽーん。
「ひろゆきちゃ〜ん!」
−あかりだ。
なんだか、以前よりも元気良く聞こえるのは気のせいか?
さすがに、とてつもない大声(?)で近所もはばからず呼ぶことはなくなったが、それでも相変わらず「ちゃん」付けだ。まあ、それにもすっかり慣れちまったかな。
そんなことを考えながら、玄関に向かう。
ドアを開ける。
そこには、笑顔のあかりの姿が、当たり前のようにある。
「おはよ、浩之ちゃん」
「オッス」
「それじゃ、行こうか」
「そうだな」
がちゃ。
鍵を閉める。
オレ達は、歩き出す。
「ねえ、今日の芸能ニュース、見た?」
「あん?あれか?○○が映画、作るとかって」
「そうそう。どう思う?」
「どうって‥‥‥。まさか、お前、出てみたいとか?」
「べ、べつにそんなんじゃないけど‥‥‥」
「図星だろ」
「‥‥‥」
昔なら、ここでツッコンだものだが、もう二十歳。
大人にならなきゃ、な。
10分も歩いただろうか。
駅まではもう少し。
「あっ!電車が来るよ!急ごう!」
や、やべえ!
「お、おう!」
のんびり話してる場合じゃない。
ギリギリだ。いつもながら。
でも、これに乗らなければ絶対に間に合わない。
急げ!!
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「ふう、ふう。何とか、間に合ったね」
「おう。でも、あかり、なかなか足、早くなったな」
「そ、そうかな?別にそうは思わないけど‥‥‥」
「いや、昔に比べたら格段の進歩だ」
「‥‥‥ありがとう」
間に合った上に、幸運にも座ることができた。
いつもはダメなのに、ラッキーだな。
久しぶりに座った気がする。
でも、こうしてみると、このあたりの風景も、捨てたものじゃないな。
「どうしたの?」
そんなことを考えながら外を見ているオレに、あかりが気付く。
「いや、なんでもない」
「そう」
あかりは、何かの本を読んでる。
真面目だよな。
「次は高戸、高戸です」
さて、そろそろ着くな。
(つづく)
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今日は「朝の風景」にしてみました。
しかし、皆さん、長いですね!
自分のなど、あっという間に追いやられそうなほど(?)です。
いずれ、長編にもトライしようと思いますが、とりあえずはこの短編で我慢してやってください。
ではまた。