藤田浩之の最後!? 投稿者: まてつや
明日の朝までに、あなたは消えます。

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「えっ……!?」
俺は、オカルト研究会の部室で、芹香さんにそんなことを言われた。
「冗談……だろ……?」

……ふるふる……

深刻な顔をして先輩は首を横に振る。
どうやら、先輩の占いでそうでているらしい。
「そんな、先輩!  なんとかならねえのかよ。俺はこのまま死にたくない」
「………」
「えっ……一つだけ方法があります……って?」

こくこく。

『絆』です。
あなたを消えないように、忘れないように
覚えていてくれる人がいたのなら……あなたは救われるかもしれません。

先輩はいつもより少し大きな声で、そう言った。

「なんか……最近、そんな内容のゲームをやったような……」

(18禁は18歳になってから!)

絆……真実の愛(ちょっと言ってて恥ずかしい)
芹香先輩に、ホレ薬を作ってもらうわけにもいかない。
しかし、今日一日で、だれかと絆を持つなんて、本当に可能なんだろうか?


「今の話、聞いてたわよ」
俺の背後で、真剣な表情を顔をした、志保がいた。
「志保……おまえ……」
志保が………、俺のこと好きだったのか?
それとも、今の話を聞いて俺の絆になろうと……いいやつだな……おまえ。

などと、思っていた俺は甘かった。

「ふ〜〜〜〜む!  これは大ニュースね。
  早速、ネットワークを駆使してみんなにひろめないと!!」
「おい、こら!  待て〜〜〜〜!!」
俺は脱兎のごとく逃げる志保を、追いかけた……




「くそ〜〜〜、志保のヤツ……どこに行きやがった……」
情けなくも、見失っちまった。
こういうときのあいつのスピードは計り知れないものがある。

「あ……藤田くん」
「あ……理緒ちゃん」
「あの……藤田くん……もうすぐ、死んじゃうんですってね」
すごく悲しそうに、理緒ちゃんはそう言ってきた。
志保のヤツ、早速言いふらしてるらしい。
「あ……あのね。最後に……藤田くんに一つお願いがあるの……」
理緒ちゃんが恥ずかしそうに、真剣な顔でこっちを見ている……

こ……これは……、もしかして。
理緒ちゃん……俺のこと……
理緒ちゃんが……俺の絆……?


「さ……最後のお願い?  いいよ、言ってくれよ。理緒ちゃん」
「うん。どうせ消えちゃうんなら、わたしに藤田くんの財産ちょうだい……」

………
…………………
……………………………………
………………………………………………
………………………………………………………………

「うわぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!(涙)」
「ああああ、どうしたの藤田く〜〜〜ん!」

理緒ちゃんなんて……理緒ちゃんなんてぇぇ……




「ヒロユキ……、明日死んじゃうんだってね」
「あ……、レミィ……」
「ヒロユキ……最後に一つお願いがあるんだけど
目の前の、レミィの瞳がうっすらにじんでいた……。

こ……これは……。
俺が死ぬのを悲しんでいてくれる証拠!
俺が、最後に絆を求める相手は……レミィなのか……?

「ああ…… いいよ、言ってくれよ……レミィ」
俺が優しく微笑むと、レミィは俺に抱きついて、耳元で囁いた。


「どうせ、明日までの命なら……アタシの的になってくれてもいいわよネ……」


………っ!???
レミィの目が妖しく輝いて……気がつけば……弓矢もってるし……

「フフフ……レッツハンティング!!」
「ぎゃぁぁぁぁあああああああ……………………」




「なぁ……藤田くん。明日までに消えるって、本当?」
「あ……、委員長」
「本当なら……、して欲しいことがあるんやけど」

……して欲しいこと……?

さっきの理緒ちゃんやレミィのような展開も考えられる……
さすがに、俺は用心深く聞き返す。
「な……なんだよ。……して欲しいこと……って?」
「うん……この前貸した、英語のノート……返してくれへんか?」
な……!?
俺が明日死ぬかも知れないって言うのに……なんて冷めてるんだ、こいつは……
「あ……それと、ゲーセンで300円貸してたっけ、まあ先月のことやし
  利子つけて、1000円でええわ」
な……なんつ〜ひで〜金利!
「あ……それとな、このまえ貸してた……」
「明日、生きてたら返すよ〜〜!」
「あ……、それじゃあ意味ないやろ!」

俺はその場を一目散で逃げ出した。




「……はぁ……、この調子じゃ、明日までに消えちまうぜ……俺」
「あれ……浩之さんどうしたんですか?」
にこにこと俺の前に現れたのは、マルチだった。
「はぁ……マルチぃぃぃぃぃぃ、聞いてくれよ〜〜〜〜〜〜…………」

そんなわけで、今までのことをマルチに説明した。

「そんなぁ……わたし浩之さんのこと好きなのに……
  本当に、明日までに消えちゃうんですか?」
「ああ。先輩の占いにそう出たんだ……
  なぁ……マルチ。最後にして欲しいこと……あるか……?」
「えっ……、あ……その。なでなでしてください」

なでなでなでなでなで……

なんでなんでなんでなんで……?

「ううう、浩之さんとお別れしたくは、ないですぅぅぅ。
  わたしにいい考えがあるんですよ。浩之さん!」

……いい考え……?
俺は今マルチに、事情を説明したということは……
俺が助かるには、絆を作るしかないわけで……
マルチと俺が絆を作るってことは……ええと……

「わたしといっしょになりましょう、浩之さん!」

マルチといっしょに……いっしょに……いっしょに……

いっしょに……合体……結合……絆……いかん……煩悩が……

「わたしといっしょの、ロボットになりましょう、浩之さんも!」

………………………………………………………はぁ……?

「長瀬主任に頼んで、ロボットに生まれ変わりましょう!
  わああああい、浩之さんとお・な・じ!」

………………………(想像中)………………………

「い……嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ………………………」
「ああ……どうしたんですか?  浩之さぁぁぁぁぁぁぁん!!!」




ああ、こんなことでは俺は本当にきえてしまうぅぅぅ……
「藤田先輩……消えちゃうって……本当ですか?」
「あ……葵ちゃん」
「わたし……先輩がいなくなったら……すごく困ります!」
葵ちゃんがいつになく真剣な顔で俺の方を見ていた。

この瞳は……マジだ!
しかも、俺が消えると……困るって、
これは……もう、葵ちゃんと絆を作るしかないぜ!

「先輩が……消えたら……わたし……わたし……
  せっかくここまでがんばったのに……」
「葵ちゃん……俺……」
「先輩が抜けたら……、せかっくここまできた……部が……
  部員が足りなくなって、また同好会にもどっちゃうじゃないですか!」


………………………はい?


「先輩、消える前にせめて代わりの部員を勧誘してくださいよ〜〜」
「あは……あは……あははは」
俺はめちゃくちゃひきつった笑いをしながら、
心の中で号泣した。

ああああああ。もうダメだぁぁ…………
このままじゃ……このままじゃあ……

「藤田先輩」
「あ……琴音ちゃん」
「聞きました、長岡先輩に……」
琴音ちゃんが、ふいに悲しそうな顔でつぶやいた。

「藤田さん自身は……一体だれが……好きなんですか?」

……えっ……?

それは、俺にとって、意外な言葉だった。
さっきから、俺のことを想っていてくれそうなコばかり当っていたけど……
俺は……一体……だれが好きなんだ?

「わたしは……藤田さんのこと好きです。
  でも、藤田さんがわたしのことを好きではなければ…… 
  本当の絆なんて出来ないと想うんです」


「藤田さん……わたしじゃ、ダメなんですか?
  一体、だれが本当に好きなんですか?
  わたしは、藤田さんに消えて欲しくない……」

本当に……好きなヤツ……ワカラナイ……

俺は……一体……だれのことが好きなんだ?

「ごめん、琴音ちゃん……。わからないよ」

俺は、琴音ちゃんに背を向けて走り出した……




もう……だれにも……会いたくない……
このまま……だれにも会わずに……明日の朝まで隠れていよう……

「浩之ちゃん……みーつけた!」
「……あかり……?」
「もう、心配したんだよ。家に電話しても出ないし、
  チャイム鳴らしても、反応がないし……。どうしたの?」
「おまえ……志保の話……聞いてないのか?」
「ううん、聞いてたよ。でも、志保の言うことの半分はウソだから
  今回のことは信じてないよ、わたし」
……本当なんだよ……今回の志保ちゃんニュースはな……
「芹香先輩の占いだって、絶対じゃないんだから……大丈夫だって、浩之ちゃん」
「……あかり……」
「だから……家に帰ろうよ……ね」

くうう……この笑顔があれば……他になにもいらん!




はぁ……。もうあとは神にでも祈って眠るしかねぇな……。
俺が家に戻って、部屋の戸を開けると……そこには……

「なんだ……こりゃあ……?」
目の前にあったのは異常にでかい袋に、
『開けてください(はあと)』
と書いてあった。

なんだろうなぁ?

ぺりぺりぺり……

と、はがすと中から出てきたのは……
「浩之〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「うわ……雅史!?」
しかも、全裸である。
「僕には浩之が消えるなんて耐えられない……。
  さあ、僕と絆を育もう!」
「嫌じゃぁぁぁぁぁぁああああああ………………………」
「ふふふ、帰宅部の浩之がサッカーで鍛えた僕から逃げられるわけがないんだよ」
そう言って、俺のベルトに手をかけ………

「嫌だぁぁぁぁぁああああああ……………z
  だれかぁ……助けてぇぇぇええええええええ!」




夜の闇に浩之の悲鳴が轟いたという……

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「はあああ、姉さんも不器用よね〜。
  あんなウソまで付いて、『わたしと絆を作りましょう』の
  肝心な一言が言えないなんて……
  今頃、あいつだれかろ絆作ってるかもしれないわよ?
  まぁ……あいつも、そこまで単純じゃないか……ウソってばれてるわよね?」

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ちゃんちゃん!

3週間ぶりくらいのまてつやでぇす。
だれも覚えってないって?  そりゃ……失礼(笑)