理緒ちゃんと俺 投稿者: まてつや
その1

1月1日、お正月。
俺は理緒ちゃんと、その弟の良太を連れて、神社にお参りに来ていた。
早速、おさい銭を入れることになった。
今年も良い年でありますように、と願いを込めて。
「今日は、ふんぱつしないとね」
理緒ちゃんがそう言って、サイフから取り出したのは、ある硬貨2枚だった。
その1枚を、良太に渡す。
「わあ、姉ちゃん。去年の5倍だね」
5倍、って5円玉でかっ!?
「そうよ、ずいぶんふんぱつしたでしょ」
理緒ちゃんたちの嬉しそうな台詞に、なんだか泣けてきた。

その2
1月1日、お正月。
俺は理緒ちゃんと、その弟の良太を連れて、神社にお参りに来ていた。
早速、おさい銭を入れることになった。
今年も良い年でありますように、と願いを込めて。
だが、
「良太、そこ、10円玉2つ落ちてるわよ!」
「姉ちゃん、お札だよ、さい銭にお札!!」
「いいから、さい銭箱から外れたのを、拾いなさい」
「うん」
俺は、その日以来、理緒ちゃんとつきあうのをやめた。

その3

理緒ちゃんと、スーパーに買い物に来ていた。
「今日の晩御飯はお魚にしようと思うの」
「へえ、焼き魚?」
「ううん」
と、理緒ちゃんは首を振る。
「じゃ、ムニエルとかフライとか?」
プルプルと再び首を振る理緒ちゃん。
「じゃあ、なんだろうな。刺し身かな?」
「違うよ、これだよ」
理緒ちゃんが手に取ったモノは、まあ、魚とは呼べなくともないんだろうけど、それは。
「シラス!?」
「そう、1日10匹食べても、かなり保つしね」
か、悲しすぎる。
「他の魚とか買うときはないのか?」
「うん、たまに『にぼし』とか」
涙が出そうになった。

その4
俺は委員長とゲーセンでのことを話していた。
「まあ実は、うちには時価12000円のぬいぐるみがあるんだけどな」
「12000円!? そんだけあったら家建つやんっ!!」
「建つかっ!!」
「ええっ!? 建たないのぉ!???」
マジで言ってる、理緒ちゃんの言葉に、心底哀しくなった(涙)

その5
「もし、俺が記憶喪失になったら、どうする?」
「ううん、『記憶を失う前のあなたに、50円貸してたの』って言うと思う」
50円、ってとこが理緒ちゃんらしい、というか寂しすぎた(泣)