「ああんんんんんんん!? 12000円も払っても家が建たない、だぁ〜? だれに向かって。モノ言っとるんじゃ、あああんんんん!? 50年前はそんぐらいで家ぐらい建ったんや! できんことないやろっっ!!」 「ひっ……でも、お客様はそのころ生まれていないんじゃあ……」 「うううううううんんんんんんん? ヘンなこと言うのはこの口かぁ?」 「いひゃい……」 「あんましふざけたことぬかすと……道頓堀に沈める出ぇぇぇぇ!!!」 「ひぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいっっっっっっっっ………………………」 春、新学期が始まる。 今日から保科さんは高校2年。 組長としての自分を隠すためにか、 彼女は成績優秀、クラスの委員長で、メガネに三つ編み、 しっかりと優等生という印象を与え続けていた。 まさか彼女が保科組のトップにいるとはだれも思わないだろう。 学校での彼女は別人なのだから…… しかし、新学年になって彼女の転機がやってきた……。 (あ……あいつは藤田浩之……) 藤田組の若頭と同じクラスになってしまった…… しかも、隣の席である。 (このオトコをなんとかモノにしたい) そう思った彼女は行動を開始した。 わざわざ藤田浩之が通りそうな時間に、部下の3人にいじめをうけているフリをする。 「よけいなこと……すんなや」 そう言われて、気にならない男がいるだろうか? ナマイキ女! 勉強オタク! 調子こいてんじゃねーぞ、バカ! ムカつき400% しんじゃえ! 保科さぁぁん(はあと) シバいたろか(笑) 大阪へ帰れ! 例の3人組にらくがきでいじめられた『フリ』をする。 1つヘンなのが混ざってるのは、岡田の仕業やろな(怒) 予想通り、藤田は彼女の作戦にかかってきた。 彼は、そういうのを放っておけないタイプの人間だったからだ。 (そこで、あえてシカトしてつきはなすんや……) ………………………………………………………………………………………………… どんどんわたしにはまってこい…… わたしのことが気になるだろ……気になって仕方がないだろ……? そして、わたしの手に落ちるんだ……藤田浩之…… いつも鬱陶しい幼なじみのことなど忘れ…… わたしのことだけ……かんがえろ……悩め……苦しめ…… ………………………………………………………………………………………………… 「おい、委員長!」 今日も無視。 「おい、聞いてるのか……」 聞こえてはいる……返事はしてやらない。 しかし、今日の藤田はしつこかった。 「ほーしーなーとーもー……」 「だぁぁぁぁああああ! 聞こえとるわ! 恥ずかしい……」 近くにいる人たちが『何あれ〜』って感じでこっち見てるし……最悪。 ゲーセンの帰りで、わたしの幼なじみのこと、両親の離婚のことを話す。 このスケベが……わたしのこと3枚で買うとか言うてきた……アホか…… だんだん彼が自分にはまっていくのがわかる…… でも……彼女自身もそろそろ気づいているはずだ…… それ以上に自分が彼にのめりこんでいることに…… 彼のことを知りたがっているもう1人の自分に…… しかし……彼女はそれを認めようとしない…… 組の天敵……藤田組の若頭を愛してしまうわけにはいかないからだ…… 「はぁふうううううう、そんな悲しそうな顔しないで…… わたしがなぐさめてさしあげます……」 「いらんわああああああああ!! どこからわいて出た、松本おおおおおお!」 ずごげしゃどぎゅめがいんん!! 「あれ〜〜〜〜〜〜〜〜、わたしは岡田ですってば〜〜〜〜〜……………」 岡田は夜空のお星様と化した…… ─────────────────────────────────────