その1・雅史と帰るとき 「遅いっ!」 と雅史の不意をつき、チョップを入れた。 びしっ! が、しかし。 「!?」 げげげっ! メガネごしのつり目、お下げ髪。ちがう、全然人違いだ。 「わ、わりぃ…」 キッ。女の子は厳しい目つきでオレを睨んだ。 「じょーとーやないか」 「へっ…?」 「この私につっこみをいれるとはじょーとやないか。でも若いな」 多分、同じ歳なんだが…… 「わたしが……本場のつっこみを……教えたる!!」 「えっ!?」 炎のつっこみ! 「しょーもないことすんなや!」 ごうっっ!! とても効果的だ……218ダメージ。 浩之はダウンした。 「ふん。だらしのない」 その2……いつもの学校の屋上。 「委員長、あのノートのことで頭にきてるんだろ?」 あのノートのこととは委員長のノートに書かれた罵詈雑言のことであった。 ナマイキ女! 勉強オタク! 調子こいてんじゃねーぞ、バカ! ムカつき400% しんじゃえ! 保科さぁぁん(はあと) シバいたろか(笑) 大阪へ帰れ! な、なんか1つだけ妙なのが混じってた気がするけど(汗) 「そうや! あんたのいうとおり、私はムカついてるよ!あのアホ3人組と、妙に馴れ馴れしいあんたにな!」 「なっ」 「それに1番ムカつくのは『大阪へ帰れ!』って、なんや、私は神戸出身や! バカにしよってホントに!」 「おい、委員長ピントずれてねえか? それにみんなが委員長が神戸出身って知らないのも委員長が友達作らなかったり、誰にも(俺を除いて)そういうこと言わないのが悪いんじゃあ……」 ぼぐぅ! 蹴られた、しかもみぞおち。 「はぐぅ」 「あんたも私を……神戸をバカにするんか? バカにするんか? ああん、どうなんや!」 「そ、それじゃ、まるっきりヤクザだよ……」 「ああん? うるさいんじゃボケ!! おらおらおらおらぁぁぁぁ」 ごっ…… あううう…… 俺の意識は闇に包まれた……。 その3……いいんちょを誘って、帰る。 「しゃーねぇな。そのかわりヤックだからな」 「ヤック……って、なんや。……ヤクドやろ? ヤクドナルドはヤクド。ヤックはヤッキントッシュのパソコンやん!」 「普通『ヤック行こうぜ』って言っても、パソコンは関係ないだろ!」 「せやかて『昨日ヤック買うてん』やったら、どっちかわからへんやないか! バリューセット520円のヤックとか言うたら、そんな安いパソコンあるんかい!って 勘違いしてしまうやろ!!」 「そんなこと、ねえ……って」 「そやから、関東はイヤなんや!物価とかも高いし、関東大震災は起こるし、ろくなことないやん!」 「……神戸にだって……、震災が……はうう」 げしっげしっ! 委員長の華麗な回し蹴りで……おれはノックアウトされた……。 その4……いいんちょとエッチの後…… 委員長と交代でシャワーをあびることにした。 いっしょにあびようという提案は、委員長の猛烈な反対により却下された。 ……のだが委員長に先に入らせるふりをして……俺もこっそり入る。 「……あっ、あかん言うたやないの!」 「つれないこと言うなよ、いいんちょの体……洗ってやるぜ」 と、手をのばしかけたとき……。 ゲシッ!! 胸部にすさまじい衝撃がはしった……。 よく見ると、委員長の眉毛は思い切りつり上がっていた。 「あかん言うてるやろっ!」 ズシッ!ドガッ!!ゴキャッ!!! 「あ……ぐぐ……」 ずびしっ!めきゃっ!!ごいんっ!!! 遠くなる意識の中で…… 『委員長……なんでメガネかけてないのに正確に俺をとらえているんだ?』 という疑問を残しつつ……俺の視界はブラックアウトしていった……。