『HM(X)−2000』 2/2 投稿者:無口の人 投稿日:12月21日(木)01時29分
【3.キモチノ値段】

「へぇ〜、この子が志保のクラスに来たメイドロボなんだー」
 アカリさんが+3の笑顔で、話しかけてキマス。+2の笑顔で返します。
「ヨロシクお願いシマース」
「わあ、すご〜い。マルチちゃんみたいに笑えるんだ」

「そう、そうなのよ。あたしもオドロキって感じだったわよ。確かにマルチで慣れてい
るとはいえ、だいたいのメイドロボって無表情だしさ」
 そう言ってシホさんも、+1の笑顔でアタシの背中を一拍、叩きマシタ。行動と表情
のミスマッチングを認識。
「ナゼ、背中を叩きマスカ?」
 スルト、シホさんの顔が+1の困惑に変化しました。ドウヤラ、返答に誤りがあった
ヨウデス。
「ナーンテ、アハハハハハハ」
 +3の笑顔で笑ってミマス。前回の発言をうち消しマス。

「……まったくもう、メイドロボとは思えないわね〜」
 シホは困惑+1、笑顔+1の『苦笑い』になりマシタ。状況の好転化は為されたと判
断デキマス。
「そういう意味では、マルチちゃんもメイドロボっぽくないよね?」
「…えっ? あっ、はい!」
 アカリさんがマルチさん・HMX(X)−12に話しかけると、彼女はアイマイな返答
を返しただけできちんとした肯定の意志を返しませんデシタ。

「はじめまして、マルチさん」
 アタシはマルチさんに、接触をはかりマス。彼女が試作機としてのXだけでなく、も
う一つのXを持っていると長瀬主任は言っていまシタ。それがどんな意味を持っている
かハ、どのデータベースにも載っていませんデシタガ。
 …知りたい、トテモ。その必要があると判断シマス。
「あ…あの、はじめまして、レミィさん」
 マルチさんは笑わずに、ソウ答えマシタ。

「マルチちゃん、どうかしたの?」
「なに〜マルチ、もしかして緊張してるの?」
 アカリさんとシホさんは、それぞれ+.5の笑顔で笑い合ってイマス。しかし、マル
チさんが好意的かドウカの判断がデキマセン。直接確認するのがよいと結論シマス。
「マルチさんは、アタシのことが嫌いデスカ?」
「ええ〜、そんなことないですぅ!」
 アタシの問いにマルチさんは、驚き+3で答えたあと、
「あんまり見つめないでくださいですー」
 と笑顔+3で言いました。

 アカリさんとシホさんは、アタシたちの会話を面白がっていましたガ、何故かアタシ
はマルチさんに対して処理の不整合…違和感…を認識…感じて…イマシタ。
 マルチさんの行動、言動をシミュレートできない。
 Why?

「ねぇ、ちょっとゲーセン寄ってかない?」
 シホさんが、右手の親指を2回、向かって右側へ動かしマシタ。ゲームセンターへ行
くことを提案しているヨウデス。
「いいよ。でも、志保、もしかして特訓?」
 とアカリさん。提案に対して肯定的なヨウデス。
「んっ? まーねっ! ……うふふふふ、ヒロ見てらっしゃいよぅ! …っと、あんた
たちはどうするの?」
 マルチさんとアタシにシホさんは、訊ねマス。
「よろこんでいきますー」
「ご一緒させてクダサイ」
 アタシたちは同時に答えマシタ。

 シホさんは店に入ると、最短のルートでおそらく目当てのヒトの背丈以上もある機械
の前に立ちマシタ。『体感型 北斗乃拳 ―おまえはもうブルっている―』というアミ
ューズメントマシンです。
「さあ、行くわよ〜……っと、その前に……誰か対戦してくんない? そのほうが盛り
上がるしさぁ」
 シホさんは、ウデマクリをした真剣な笑顔でアタシたちの方を見ましタ。
「えぇ〜、わたしダメだよ〜。そういうの苦手だもん」
 アカリさんは困惑+2、笑顔+1で後ずさりマス。
「そう? じゃあ、マルチかレミィはどう?」
 シホさんは笑顔+1で言いマス。期待されている、と判断シマス。
「わたしですかぁ? ええと、レミィさんはどうですか?」
 マルチさんもアタシが適任だと判断したヨウデス。

「アタシは、お金を持ってイマセンガ…」
「大丈夫、あたしが払うって! じゃあ、いくわよ、レミィ。操作方法はわかるわね?」
 すばやく説明書を解析。このゲームは1対1の格闘対戦型ゲーム…モニターの前のボ
ードに決められたパターンの指圧をすることで、相手に攻撃を与える…とのコトデス。
「ハイ、わかりマス」
「じゃあ、行くわよ! ゲーム スタートォォォ!」

『北斗剛掌波(ほくとごうしょうは)!』(飛び道具)
『天将奔烈(てんしょうほんれつ)!』(飛び道具)
『『ぐほぁぁぁぁ!!』』
 互いに放ったワザが、ぶつかり合いマス。シホさんの方に少しダメージ。
「ふふん、なかなかやるわね。このゲームは素早さと正確さがポイントなのよ。この志
保ちゃんを本気にさせたことを後悔するわよ〜」
 シホさんは、機械のような正確さでアタシにワザを放ってキマス。ジャンプをして避
けマス。
『北斗七死騎兵斬(ほくとしちしきへいざん)!』(ダイビングアタック)
『天翔百裂拳(てんしょうひゃくれつけん)!』(対空技)
 相打ちのようデス。

 コマンドインストール。こんどはもう少し長いものを指圧してイキマス。
『北斗神拳奥義(ほくとしんけんおうぎ)! 七星点心(しちせいてんしん)!!』
「――えっ?」
『ぐああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!』
 シホさんのキャラに大ダメージ。シホさんは焦り+2の顔デス。
「まさか、着地するまでの間に打ち込んだわけっ? ぐぬぬ…」
 どうやら攻めすぎてはいけないようデス。対戦のロジックに変更を加えます。

「まだまだ、志保ちゃんはこんなもんじゃないわよ〜」
『天将奔烈(てんしょうほんれつ)!』
『天将奔烈(てんしょうほんれつ)!』
『天将奔烈(てんしょうほんれつ)!』
『ぐほああああああああ……ずびぃ!!』
 シホさんの連続攻撃により、アタシのキャラは倒されマシタ。

「わあ、なんかにぎやかでしたねぇ」
 マルチさんが、感想を言いマシタ。
「志保もレミィもお疲れさま〜。なんかすごいゲームだね〜」
 アカリさんも笑顔+1で意見を述べてイマス。

「…………」
 シホさんは何も言わず、アタシの方を向きマシタ。
「なんで……なんでわざと負けんてんのよ! なんで!?」
 シホさんはそう…言いマシタ。怒り+1、悲しみ+2と判断シマス……。
「アタシは……そうすべきダト……」

「バカにしないでよぅ、フンッ!」
「あっ、待って、志保! ……あ、えっと、また今度ね、マルチ、レミィ!」
 シホさんとアカリさんは行ってシマイマシタ。
「アタシ……ドウスレバ……ヨイ?」
「レミィさん…」

 アタシの前にマルチさんが立ってイマス。
「レミィさん、何を悲しんでるんですか?」
 笑顔+.2程のかすかな笑顔。
「あの、何がイケナカッタのでショウカ?」
「う〜ん、ちょっとわかりませんです。でも、きっと、志保さんにとってレミィさんは、
メイドロボ以上のヒトってことじゃないかと思います」
「どういうことデスカ?」

「はい、わたしたちメイドロボは、人間の方に求められればメイドロボでなくなること
もできるって……ことだと思います。だって、大好きな人に求められるわけですからー」
 マルチさんは、アタシが見たこともないような+5の笑顔でソウ言いマシタ。
 …求められるモノ。

「いまから、一緒に志保さんたちのところに行きませんかー?」
 差し出された手。アタシと同じ……ハズなのに、なにか温かいデス。
「はい、よろこんで!」
 ……ありがとう、姉さん。アタシも、アタシを求めてくれるヒトを大切にシタイデス。



 ダイスキナヒトガモトメテクレルナラ…。



【4.X】
 ズゴーン、ズゴーン。
 What? …………あれは朝の祝砲の音。Dadデスネ〜。
 Good Morning.
 …それにしても、フジギな夢を見まシタ。う〜ん、アタシがメイドロボになるなんて。
でも、もしかしたら…。
 考えても始まらないデス。腹が減っては戦はできぬ、のでとりあえずダイニングに行
きまショウ!

「おはようございます、Lemmy」
「Oh! Maggie! ナンデ? ドウシテ? いつ帰ってきたのデスカ?」
 寝ぼけて冷や奴ナ頭のアタシを、マギーはじっと見てました。その表情は以前と同じ
で、やさしい笑顔デシタ。でも、どことなく以前とは違うヨウナ…気がしないでもない
デス。
 …あんな夢を見たからでショウカ?

「ねぇ、Maggie。 アタシの今のシンキョウわかりますか?」
 もしかしたら、モシカシテ…
「はい、眠そうに見えます」
「Huuuum、ソーデスカ…」
 やっぱり、マギーはマギーダネ。
「はずれですか?」
「ウウン、大正解ダヨ!」

「あら、おはよう、Lemmy」
 朝早くにもかかわらず、髪をきっちりとまとめたシンディが現れマシタ。そう言えば、
シンディに確かめるコトがありました。
「Cindy、訊きたいことがアリマス。こんどはMaggieに何をしましたカ?」
「うーん、そうねぇ。おかしいわねぇ、全然変わってないわね」
 シンディは両手でぺたぺたとマギーを触りまくり、瞳をのぞき込んだりしてイマス。
「シ・ン・ディ?」
 ネチョネチョ、コネクリマワシマース。
「わかったわよ、わかったから、納豆はやめてお願いだから…ね、Lemmy」
 コホン、と咳払いしてシンディ。
「実はね、Maggieのセンサ部を試作機で使っていたものに換えてもらったのよ。
もう、交換時期だったしね」
 シンディはマギーの髪の毛をいじりながら、そう答えマシタ。
「それだけデスカ?」
「ええ、それだけよ」
 やっぱり、アタシの思い違いだったのカナ?
「それじゃ、私はそろそろ行くから」
 右手でバイバイをしながら、シンディは出かけていきました。


「ウ――ン、今日もいい天気ダネ、Maggie」
「はい」
 窓から差し込む光は、ドコカ穏やかで、この場所だけ春が来たようデス。
「どこか、遊びに行こうヨ。学校から帰ったあとでデモ」
「かまいませんよ」

 あっ、今、アタシは期待している……マギーと遊ぶコト。

「どこに…………行こっか?」
「では…………ゲームセンターなどいかがでしょうか?」

「eXcellent! Maggie!!」

 …いつかきっと。メイドロボでないマギーと遊べる日が来る…よね。

 いつかきっと。

                                    おわり
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あとがき:
『真・真っ赤なスカーフ(ヤマトのED)』
 ♪あかり〜の編んでいた〜 真っ赤なスカーフ
 ♪誰の〜返り血 浴びた〜というのか〜
 ♪矢島のす〜がたが〜見〜あ〜たらない〜
 ♪みんな〜気づいて いな〜いふ〜り
 ♪や〜じ〜まの居場所を訊ね〜ても〜
 ♪あ〜か〜りは『ふふぅ』と笑う〜だけ〜
 ♪ララララ ララー ララララ ララー
 ♪ラ・ラ・ラ 真っ赤なスカーフ〜
                             あれっ?(汗)