さめはだ 投稿者:無口の猿
 うきゅきゅーきゅ、きゅきゅきゅ、きゅきゅきゅきゅ、うっきーきゅきゅききっー。
 きき、きゅきゅーきききっ、うきききうきゅーー。
(このお話は、久々野様、takataka様、AE様に感化されて書かれたものです。
 どうか御三方、黙って見逃してくださいませーー)
 うっき、ききききゅうきっき…
(これを、AEROの猿さんに捧げる…)
                                (意訳:花園M)
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 動物の死骸の残りカスを塗りこまれたアスファルトが、絶え間無く陽炎を浮かべる。

 怨念が、地面から湧き上がっていた。かつて、大地を闊歩していたであろう、獣たち。
 彼らの安眠を妨げた罪を、僕らは享受しなければならない。
 足元に塗り固められた彼らの怨念が、僕を焦がしはじめていた。

 このまま焼き尽くされるのもいい。
 このまま真っ黒い劫火(ごうか)に骨まで溶かされよう。
 このまま……

「祐くん!…祐くん、いきなり道路の真ん中で魂飛ばさないで〜」
「あ………沙織ちゃん」
「もう、祐くんたら根暗で影が薄くて、妄想することしか取り柄がないんだからぁ〜」
 そう言って、沙織ちゃんは拗ねたように笑う。
「ごめん、沙織ちゃん。暑いのは苦手なんだ」

「長瀬ちゃんなら、涼しくできるよ」

 そのとき、地面が『ぐにゃり』と揺れた。

「がーお、がーお、がーお…」
 ――!!
 見ると目の前に、瑠璃子さんが立っていた。でも彼女は僕の知っている凛とした深窓
のお嬢様ではなく、キングギドラの着ぐるみを着た焦点の合わない目をした少女だった。
「瑠璃子さん…それってどういう――」
「――ねぇ、祐くん、行こう! 頭のイカれた人は、祐くんだけで十分だよう」
 沙織ちゃんが僕を心配して、腕を引っ張る。

 瑠璃子さんが『パカッ』と口を開ける。
 ごおおおおお、ごごごごごおおおおおおおぉ……

 そして、瑠璃子さんの口から止めどもなく水が流れ出した。
 その水は彼女のまわりから徐々にひろがりはじめ、やがてあたり一面を水の世界へと
一変させる。
 僕はてらてらしたその輝きを、粘性により時間差の波の生まれるその光景を…

 ――正直、美しいと思った。

「いやあぁぁぁ、なにこれ? ネバネバするぅ! ――あっ! 滑っ!」
 沙織ちゃんも興奮を隠し切れない様子で、地面へと座りこむ。僕もできることなら、
沙織ちゃんと一緒にその中へ身を投じてみたかった。でも、今の僕にできることと言え
ば感動の大きさにその身を拘束され、呆然と情景を眺めることだけだった。

 瑠璃子さんの水は、さらに水量を増している。
 それにもかかわらず、沙織ちゃんはぺたりとお尻を地面についたまま動かない。

 あまりこの場に長くいるのは危険な感じがする。このままじゃ…
 このままじゃ、沙織ちゃんが風邪を引いてしまうかも知れない…。

 …どうしよう。
 どうしよう、どうしよう。

「…ひっく…冷たいよぉ…気持ち悪いぉ…」
 沙織ちゃんはグスッと涙をすする。

 僕はしばらく悩んでから、意を決した。
 やっぱり沙織ちゃんを着替えさせて、早くここから離れたほうが良い。

「――あっ! 祐くんっ! ああ、やめてっ! こんなところで…あぁ! そんな……
…あぁ、いやぁぁぁ!!」

 ふきふき。

 タオルで沙織ちゃんの身体を拭いていると、妙なひっかかりがあることに気が付いた。
 これってまさか……。
 僕の心臓が早鐘を打つ。
 今初めて、自分のしていることに気が付いたような気分だった。

「ごめん……沙織ちゃん……」
「祐くん……恥ずかしいよ……」


「沙織ちゃんって………鮫肌だったんだね」


「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」