しゅばるつばると 投稿者:無口の秘湯
 このお話はLF97のネタバレを含んでいます。そしてさらに、かなりくだらないので読み
飛ばしたほうが貴方の人生にとってよいと思われます(汗) …いや、ほんとに(爆)
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「――あっ、ごめんなさいっ」
「いいよ、別に…」
「楓お姉ちゃんもお風呂?」
「…うん」
 ラルヴァたちとの戦闘が続く毎日。そんなときでも、鶴来屋でのひとときはメンバーに以前
と変わらぬやすらぎを与えていた。…しかし、そんな彼らの身に闘いの影響が現れ始めている
ことを知る者は少ない。

 ちゃぷ。
「…ええっと、どこに置いたかな?」
 初音は、あたりをキョロキョロと見回す。
「…………」
 そして、それを無言で見守る楓。
「あっ、あったあった。楓お姉ちゃん、あのね…」
「初音、初音」
 意を決したように、妹に呼びかける楓。
「えっ、なに?」

「むなげ…」

「あははっ、ちょんちょんっ」
 まったく動揺しない初音。
「…ふふふっ。…あのねぇ、楓お姉ちゃん。これ入浴剤。昨日買っておいたんだ」
「むなげ?」
 楓も意地だ。
「たぶんきれいなグリーンだよ。マルチちゃんも使ってるんだって」
 初音は得意げだ。
「ほら、楓お姉ちゃん、前に髪を染めたいって言ってたでしょ? いいんだって、これ。…入
れる?」
「むなげ」

「それじゃ。――えいっ…と。さらさら…」
 さらさらさら…。はたして初音はどうかしてしまったのだろうか? それとも、どうかして
しまったのは自分の方なのだろうか? 楓は、自問する。そして…

「…今度は黄色いむなげになっちゃった」

 考えるのを止めた。

「うふふふ」
 初音が、軽やかに笑う。

 薄れゆく理性が、楓の長年の疑問――なぜ、自分の妹が金髪なのか?――を解き明かす。し
かし、今の楓にはそれがむなげ隠しだったことなど、どうでもいいことだった。

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おまけ『柏木家の危機的状況』

「あの…柳川さん、今回はどういった御用件で?」
 3人の妹たちが物音ひとつさせずに、千鶴と柳川のやりとりを伺っている。
「ふっふっふ、奥さん」
 ぎらぎらとした瞳を隠すかのように眼鏡をかけ直しながら、柳川は口元を僅かにほころばせ
る。

「まあ、奥さんだなんてぇ! そんな、耕一さんとはまだ結納もすませてな――」
 ガシュ! 柳川チョップ!
「痛っ! な、なにするんですか!」
「――そんなことより、借金はちゃんと返せるんだろうな」
「そっ、それは……」
 ひざの上でこぶしを握り締める千鶴。

「千鶴姉、うちってそんなに危なかったの!?」
「土瓶蒸し」
「千鶴お姉ちゃん、わたしたちも手伝うから!」

「ほら、かわいい妹たちもああ言ってるようだし」
 柳川は立ち上がり、千鶴に、そして妹たちに舐るような視線を向ける。
「そんなっ! やめてください、妹たちには、まっ、まだ早すぎます!」
「黙れ、柏木千鶴。借金が返せないときは……わかっているだろうな」

 バサッ。柳川の衣服が舞い上がる。

「ほーら、かわいいカメだろう!」

「いっ、妹たちの前でなんてことを! …ああ、かめ」
 力なく、崩れる千鶴。
「ああ、千鶴姉! …この柳川の破廉恥野郎! はやくその亀をしまえ!」
「かめ…(ぽっ)」
「ああ〜ん、助けて、耕一お兄ちゃん!」


 …こうしていきさつで、『鶴来屋恒例 ミュータント・タートルズショー』が開かれるよう
になったことを、知る者は…少ない。