小っ樽く〜ん、このお話はちょっぴりダークだから読み飛ばしたほうがいいよ〜ん。そのか わりに、この僕の熱いくちづけを、んん〜(爆) 知らない方はどうか読み飛ばしてくらはい(汗) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 【前章のあらすじ】 ひかりの意識が、眠りにつこうとしている。その中で彼女が見たものは、 恋人に殺されかける自分。 芹香に想いをたくされる自分。 の姿だった。しかし前者は人為的に、後者は記憶の壁により封印される。 そして、ひかりは眠る。 【西暦1990年 10月X日 引っ越した町】 少年は鳥だった。 「あら〜、とりはだがたっちゃってるね」 身体をさすってくれたのは…誰? (そうか、僕は鳥なんだ) 母鳥は、何処? (はやく、飛びかたを教えてほしい…) 「いってきます…」 「お待ち!」 少年を女が、寝起きのまま、まだ整えられていない髪を鬱陶(うっとう)しそうに掻き上げな がら、呼び止める。 「新しい学校だからって、あまりはしゃぐんじゃないよ。いいかい、なるべく目立たないよう にしな! …聞かれたことだけ答えて、余計なことを言うんじゃないよ! …それから、帰っ てきたらクラスにどんな子がいるかちゃんと知らせんだよ!」 (またか…) 「わかりましたよ…お母さま」 バシッ。女が、少年の顔を吹き飛ばす。 「…たっ、たくっ、小憎らしいガキだね! …ひっ、人をばっ、バカにして。まっ、まったく どうしたらそんなにいやらしく笑えるんだろうね!」 (だったら、ご自分の顔を鏡でごらんなさいよ、母さん。その…ゆがんだ顔をね) 「いってきます…」 「ふん…」 この町には、どれくらい居られるのだろうか…団地が立ち並ぶコンクリートの上を歩きなが ら少年は問う。 (また、悪いことをしなきゃいけないのかな?) 彼は異常とも思えるほど、頭の回転がはやい子供だった。 (どうして僕は、いつも母さんをイライラさせてしまうんだろう…) 少年は気付いていない。いつも自分が、人の心のゆがみを曝(さら)け出してしまうことを。 (僕がうまく笑えないからかな?) 母親が壊れたとき、彼もまた、心からの笑いをなくしていた。 ――そして、一ヶ月が過ぎようとする頃。 ガツッ。 「!!」 下校途中の少年に、小石が降り注ぐ。 「やーい、ちゃんと笑ってみせろ!」 (なぜこんなことをするの? みんなと仲良くしたいのに…) 辺りが静かになっても、少年はじっとうずくまったままだった。 「ははは、へんなかお〜。へんだへん」 少年が顔を上げると、女の子が顔を覗きこんでいた。 (見かけない子だな。低学年の子かな?) 「君は? …だれ?」 「だれかな〜? へへっ」 「…僕は、吉川。君の名前は?」 「う〜んとね、ぼくはいであ、いであだよ」 そう言って、女の子は手帳を見せる。…英唖? ああそうか、『ひであ』かと少年は気付く。 「いであじゃなくて、ひであですよ。それに女の子が、『僕』というのはおかしいですよ」 「おにいちゃんも『ぼく』っていったよ〜」 「僕は男だから、いいんだよ。英唖は、女の子でしょ」 「む〜〜」 英唖は、癇癪(かんしゃく)を起こして身体を硬直させる。 「わかった、わかったよ。おかしくないから…機嫌を直してよ、英唖」 「む〜、いであだよ、いであだよ、いであだよ、む〜」 「わかったよ。『いであ』…だね」 【西暦2027年 1月X日 政府直轄研究所の一室】 「イデア…」 前髪に霜を貼り付けた男が、薄明かりのなか佇んでいる。 「…もうすぐ、もうすぐだよ」 整然と並べられた、円筒形のカプセル。 「やっと揃ったんだ」 『藤田さん、お子さんが事故に逢われたとか?』 『………相変わらず耳が早いな』 『なんでも、左眼球破裂の大怪我だったとか…』 『…テメッ、なんでそれを!』 『乱暴はよくないですよ。それよりも、どうです? 私の知り合いに移植手術の専門家がいる のですが…』 『どういうことだ!』 『いえ、女の子には綺麗でいてほしいじゃないですか』 『…非合法じゃ、ないだろうな』 『ご安心を、正規の手続きを踏んでいるところですから…ウフフフフ』 「藤田には感謝しないとな」 吉川は、口元にひきつった笑いを浮かべる。 「ウフフフフ…」 2/2へつづく