ゴーゴー由綺ぴょん 投稿者:無口の人'
 ごめんなさい、WA『由綺』『弥生』の章を未プレイの方は読み飛ばしてください。
 額に三日月の印のあるイルカって…
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「それじゃあ、私が行ってくるね」
 そう言って、由綺が部屋を出ていってから一○分程……俺は、無言のまま気配を消した弥生
さんと、気まずい空間を創り出すことに成功していた。

 今日は大晦日、『ゆく年くる年』をザッピングしながら観ようをしていた俺を訪ねてきたの
は、由綺と弥生さんだった。それからしばらくして、由綺は俺と弥生さんの反対を押し切り、
買い物に出掛けたのだった。……たのむ由綺、早く帰ってきてくれ。お前になにかあったら、
俺……俺………弥生さんに殺られちゃうよ〜ん。

「たっだいま〜〜」
「おっおかえり〜、由――っ」
「おかえりなさいませ、由綺さん」
 弥生さんは、さりげなく俺に肝臓チョップを食らわせた後、由綺を出迎えた。
「……ぅ…ぁ…ゃょぃ…ぉ…」
「あら、どうかなされましたか? 藤井さん」
「冬弥君、よっぽどお腹がすいてたんだね」
 ――気付けよ。

「えへへ、いっぱい買ってきたよ〜」
 ごそごそと見たこともない袋を探り、由綺は俺と弥生さんの前に、見知らぬ物体を置いた。
「カレー…ヨーグルト?」
 ……イヤな予感がする。俺の第六感が警鐘を鳴らしている。鳥肌が立っている。何処かで、
キングギドラの鳴き声がする。――でも、俺はそのフタを開けた。由綺が見ているから。…そ
の無邪気な笑顔で。
「いただきま〜す」
 俺は、震える手を必死で押さえながら一杯目を口に運ぶ。……なんだ、普通のヨーグルトじ
ゃ…………ぐぎゃああああぁぁぁ……ルーが、カレーのルーが入っとるやんけ!
「とてもおいしいですわ、由綺さん」
 その言葉に顔を上げると、弥生さんがいつもと変わらない様子で、由綺に微笑んでいた。

 ――いや、違う。

 弥生さんは、鼻の頭に汗をかいていた。そう、あのクールな弥生さんが…だ。俺は改めて、
この物体が人知を超えた不味さであることを認識した。そして、目の前のライバルの凄さも。
「ああ、とってもおいしいよ。よくこんなの見つけたな〜、由綺」
 だが、由綺は渡さないぜ。勝負だ、弥生さん。
「えへへ、私結構いろんなとこに行ってるんだ。だけど、観光する時間はないからせめて食べ
物だけでも、いろんなものを探すようにしてるの。といっても私はあまり食べられないから、
いつも弥生さんに試してもらうんだけどね」
 …マネージャーって大変なんだな。

「藤井さん、気に入られたのでしたら、どうぞ私の分もお食べください」
「いやいいよ、弥生さんこそ、俺に遠慮しないでどんどん食べてよ」
「「…………」」
「「フッ」」
 俺たちは互いに(鼻で)笑い合った。


 しばらくして、由綺たちが帰る時間になった。
「冬弥君、それじゃおやすみなさい」
「ああ、またな」
 由綺がドアから出て行った後、俺は、ヘルシージャーキーをその艶(つや)やかな唇ではむは
むしている弥生さんに、問い掛けた。

「弥生さん…」
「はい、なんでしょう?」
「カレーヨーグルト、好き?」

「いいえ」

(前奏 15秒)
♪地方巡業の終わりには あ〜あ〜   未知の菓子があるのだろう〜
♪誰も見〜ない ゲテモノ菓子を〜   ヒロインは 探し求める
♪転がるほどの不味さでも あ〜あ〜  惚〜れた弱みで食うのだろう〜
♪明日の店 胸に標して        遠く 旅立つ ヒロイン〜
♪ゴーゴー 由綺ぴょん ゴーゴー 由綺ぴょん
♪ゴーゴーゴーゴーゴー 由綺ぴょ〜〜ん