こんにちは、はぐれ神魔さん…。この話は、ダークだから読まないほうがいいかもね…。そ うね、いつまで続くのかな…ううん、独り言。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 【前章のあらすじ】 新しい身体の中で、ヒロはゆっくりと『ドクトル・ヒロ』と呼ばれる自分を確立していく。 そんなとき、ヒロは仮死状態になっている娘のひかりと対面する。そこに現れる『来栖川 芹香』――今や、世界の意志を継ぐものとなった彼女の願いを受け入れ、ヒロはひかりを改 造する。そう…メイドロボのように。 罪の意識を拭い切れないヒロ。その前に現れ、ジオフロントの奪取を宣言するかつての同 僚『吉川』。 事態はさらに変化をつづける…それは、世界の意志なのだろうか… 【西暦2023年 3月10日 ジオフロント内 来栖川総合病院 特別病棟】 「基地をいただくだと…。吉川、お前自分の言ってることが分かっているのか?」 目の前のニヤけた男は、フッっと息を洩らし、 「ええ、もちろんですよ。来栖川の頭脳とも言うべき、この基地はよい土産になりますからね ぇ。あぁそうそう、『ひかり』ちゃんは私の趣味ですがね…ウフフフフッ」 …土産ね。 「失せろ、吉川。貴様にひかりは渡さない」 「ほほう…機械人形が人間に指図するわけか」 あごを上げ、下目使いで吉川は言った。さっきまでとは打って変わった態度…ようやく本性 を剥(む)き出してきたか。 「…んだとぉ!もう一ぺん言ってみろ!」 <おい、マニヒ。聞こえるか?> 気付かれないように、俺はマニヒに話しかける。 「ふんっ、何度でも言ってやろう。所詮メイドロボなど愛玩道具にすぎん。長瀬やお前のよう な理想主義者には、世間が何を求めているのかも分かるまい」 <はい、ヒロさん。なんでしょうか?> と、マニヒ。 「…堕ちたものだな、吉川。『理想のない科学に、未来はない』…先代来栖川会長の言葉を忘 れたのか?」 <マニヒ、プロテクトレベル5でセリオに伝えてくれ。『コード Rattengift(猫 いらず)発動』ってな> <わかりました〜、ヒロさん> とマニヒ。 <あの…ところでプロテクトレベルってなんで すかぁ?> <――ったく。いつも内緒話に使ってるやつだ> <あぁ!アレですか〜。わかりました、やってみます> 吉川はしばらくの間、何かを思い出すかのように目を閉じていた。 「……ふっ、何とでも言え!もうすぐ私は、この来栖川の王となるのだからな」 そう言って吉川は、俺を睨みつけた。一方、マニヒの答えは <ヒロさ〜ん、いちおう送ったつもりなんですけど…。返事がないんですぅ> と、ちょっと頼りない。……後は運しだいか…今は信じるしかない。 「それにしても、μ(ミュー)−1にそんな使い方があったとは…驚きですな。まさか人間をメ イドロボに改造するなんて…ねぇ」 吉川は挑発的な目付きはそのままで、口元だけを歪ませている。 「くっ…」 μ−1とは、『自己制御型生体進化組織』――俺たちが生体組織と呼んでいるものの開発コ ードだ。 「ウフフフフフフッ、何もそんな恐い顔をすることはないだろう?私は嬉しいのだよ、やっと あの娘(こ)を手に入れることができるのだからな。あの…あかりさんの娘(むすめ)をなぁ!」 しつこい男だぜ。大学時代に、俺がぶっとばしてやったことを忘れたのか? 吉川は、看護カプセルの前まで歩いていき、『ロック解除』及び『OPEN』のパネルを操 作した。 プシューゥゥゥ… 現れる簡素な入院服を着せられた、ひかり。覚醒するまでには、少なくともあと丸一日はか かるだろう…それまではへたに動かすと危ない。 「何をする、吉川!…テメエ、ひかりに指一本でも触れてみろ!そんときは――」 「――そのときは、何です?」 吉川の手が、ひかりの顎(あご)から耳までをなぞっていく……ナメクジのような手が! 「っのヤロー!ぶっとばす!!」 ガシッ… 「ぐっ!ぐああああぁ…」 吉川の方へ踏み込もうとした瞬間、後ろから凄い力で押さえつけられた!俺たちの他に誰か いたのか!? ピキピキピキ…ビキッ…右腕が後ろに折り曲げられる… <あううぅ…いっ痛いです〜> !!…マッ、マニヒか? <マニヒ!俺からの感覚を全面カットして、『待合室』で待っていろ!そして、俺が呼ぶまで 絶対に出てくるんじゃないぞ> <あう…でっ…でもぅ…> ビキビキビキビキ…なんて力だ!人間じゃないのか? <いいから言う通りにしろ!> ベキンッ!…マニヒが『はい…』と言ったとほぼ同時に、右肩の接合部は破壊された。 「うぐああああぁぁぁ!!」 「…その位でいいでしょう。タカユキ、止めなさい」 背後の男は吉川の言葉を聞くと、ピタリと動きを止めた。 「どうです?私の作品は?すごいものでしょう。命令には絶対服従、限界まで引き出されたそ の怪力、さらにメイドロボなどというやたらコストの高いガラクタと違って、ちょっとした手 術だけで制作可能。素晴らしいとは思いませんか?」 思い出した…コイツの専門はたしか『脳内物質』だったはず。ということは…まさか… 「…まさか、この後ろの男……以前、お前が囲っていると噂されていた青年か?」 吉川のまわりには、いつも黒い噂が渦巻いていた…マンションに男を囲っているとか、ヤク ザとつながりがあるだとか、麻薬を売買しているとか… ・・・・・ 「くっくっくっく、まあ半分当たりですかね。ええ、その男は確かに、以前私が飼っていた男 ですがね。最近ちょっと反抗的だったので、素直にしてやりましたよ…ウフフフフフ。それに しても楽しみですねぇ。μ−1を移植すれば、不老不死も夢じゃないとか」 目の前の男…吉川は、やはり尋常ではない。コイツは人の命を、オモチャにしている。 「生体組織はそんなことのために造ったんじゃねえ」 「おやおや…それじゃあ何のためですかな?ああ、なるほど、高性能ダッチワイフを造る為で したっけ?ふははははっ」 嘲(あざけ)り笑うように吉川が言う。そして、俺の目の前でひかりの胸を弄(まさぐ)り始め た! 「テメエ!何しやがる!ヤメロ!その汚い手をどけろ!」 「どうです?自分の娘が、目の前で辱められる気分は?」 ヤメロ…ヤメロ…ヤメロ…ヤメテ…クレ… 「ヤメロ〜〜〜〜〜!!」 「まあまあ、そうカッとするな。心配しなくとも、君の娘さんは私が責任を持って立派なダッ チワイフにしてみせるからさ。そうだな…そうすると新しい名前が必要かな?では、『ひかり』 をドイツ語にして『リヒト(Licht)』なんてどうだ。そうだ!それがいい!ダッチワイフ・リヒ トの誕生だ!はーはっはっはっは…うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ……」 コイツだけは…コイツだけは…絶対許さねえ………俺は怒りが際限なく膨れあがっていくの を、もはや抑えることができなくなっていた…。 2/2へつづく −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− コウモリだけ〜が知っている ハハハハハハハハッ モア・ベターよ は〜い、蝙蝠のおばちゃまよ。今回ご紹介するSSは『いのりたまへ かなえたまへ』とい うお話なの。作者はアルルさんといって、植村直己さんのように自らに過酷な試練を求める男 の中の男なのよ。 このお話はね、一人の男性と二人の少女の出会い…そして別れを描いたものなの。何気ない 好意が、静かに…ゆっくりと少女の心に染み込んでいく描写に、おばちゃまは心がホカホカ温 められたわ。 人生の中でほんのひとときの思いが、まぶしく煌く思い出となることだってある…そんなこ とを考えさせてくれるこのお話は、モア・ベターよ。テレビの前のみんなも是非チェックして みてね。えっと、放送日時は、『01月10日(土)05時36分55秒』からなのね。それでは、ごきげ んよう〜。バサバサバサッ…