ティーブレイクしませんか? 投稿者:無口の人


 このSSの前半(シンディさん)をアルルさんに捧げます。でも、レミィはダメれす…ふふっ。
 たまにはお姉様もよいかと…
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「シンディさんって、結構酒飲みなんスね」
 俺は芳醇(ほうじゅん)なウイスキーと、大人の香りを楽しみながら傍らの女性に視線を移し
た。
「ふふっ、シンディでいいわよ。ヒロユキ…さん?」
「俺もヒロユキでいいっす」
「そうね…」と、シンディはグラスの縁を指でなぞりながら「レミィにいつも、ヒロユキ、ヒ
ロユキって聞かされてるから、そのほうが言いやすいな…」
 何気ない仕種にも、俺はドキッとしてしまう。駅前でたまたま会った俺を、シンディさんが
誘ってくれるとは…一生分の幸運を使い果たしたんじゃないのか?いや、マジで。

「あの…なんで俺を誘ってくれたんスか?」
 ちなみにまだ、未成年なんスけど…
「そうね…知りたい?」
 シンディが口元をほころばせながら、訊いた。
「ええ、とっても」俺は多少緊張しながら「もしかしてドッキリ?なんてね」
「『沈黙は金』…よ」
「へっ!?」
 つい、すっとんきょうな声を上げてしまった。
「つまり、女性にそんなことを聞くものじゃないってこと」
「あっ………」
 ヤベェ、ついつい志保たちと喋ってる調子になっちまった。それにしても、つくづくシンデ
ィの方が一枚上手だよなあ。

「それじゃあ、ヒロユキ。そろそろ出ましょうか」
 シンディはそう言うや否や、優雅な立ち振る舞いで有無を言わせず会計を済ませてしまった。
「シンディ、俺も半分出すぜ」
 俺が金を出そうとするとシンディは、フフフッっと笑い、
「いいのよ…今日はわたしにおごらせて。そのお金は、ヒロユキの大切な人のために取ってお
いて」
 ……大切な人ねえ。

 店の外に出ると、粉雪が舞っていた。
「さみぃ〜、と思ったら雪が降ってたのか…シンディ、何なら家までついて――」
 そこまで言いかけたとき、シンディは口紅をつけた指で俺の口紅をなぞった。それ以上、何
も言えなかった。
「See you,ヒロユキ」
 そう耳元で囁くと、大人の香りを残してシンディは去っていった。

 しばらくその余韻に浸った後、
「………さて、俺も帰るか!」
 そう思って歩き出したとき、
「Hey!ヒロユキ!」
 ドンッ…おわっ、背後から何者かがタックルしてきた。……ってこんなことするやつは、俺
の知る限り一人しかいないがな。
「おい!レミィ、危ないだろうが!ヘタに転んで雪だるまにでもなったらどうすんだ」
「Oh!ヒロユキ、雪ダルーマになるの?ワタシ見てみたいね!」
 ……やっぱり、レミィだった。
「雪ダルーマじゃなくて、雪だるま…だ、ダ・ル・マ。…それよりレミィ、こんな時間に何し
てんだ?」
 って、人のことは言えないがな…

「アハハハハッ、エート…さんぽダヨ、さ・ん・ぽ」
「ほう…散歩ねぇ」
 ……雪の中を?インラインスケート履いてぇ?俺は、疑惑ありありの目でレミィを凝視する。
「ヒロユキ…人を疑うのよくないネ。『信じる者は救われる』…ダヨ」
「すると何か?この夜中に雪の中をインラインスケートで散歩してたら、たまたま俺を見つけ
たんで、ついついタックルをカマシテしまったって言いたいわけだな」
「Excellent!!サスガ、ヒロユキ。よくわかってるネ」
 ホシは、あくまでもしらを切るらしい…しかし、甘いな。

「じゃあ訊くが、その頭に積もった雪をどう説明するつもりだ?」
「What!?」
 レミイはハッ!として、手で頭を隠そうとする。ふふん、その積もりかたは立ち止まった状
態で積もったもの…さあ、白状しろ〜。
「アハハハハッ、コレハ…Well…」
 そう言いながら、レミイは後ろ向きに滑っていく…って、おいおい、そっちには…
「!!…おい、レミィ!後ろ!後ろ!」
「エッ!ナニ?ヒロユ――」

 ゴツーーーン!!

 レミイは『いい音』と共に、後ろ向きに電柱に激突した。
「おっおい、レミィ!大丈夫か?」
「うぅ〜ん」レミィはしゃがみ込みながらも「ダイジョブ、ダイジョブよ、ヒロユキ」
 …ったく、しょうがねえなあ。俺はレミィを立ち上がらせながら、
「ホントのこと言わね〜から、バチが当たったんだぞ」
「ダメネ、ヒロユキ。『沈黙は金』よ」
 またそれかよ。
「へいへい、わかりましたよ。もう訊きませんよ〜だ」
「たいへんよろしいネ。それでこそ、ニッポンダンジヨ」
 レミィはちょっとふらつきながら、親指を立ててみせた。…ったく、コイツは。
「日本男児ぃ!?どこでそんな言葉覚えたんだぁ?レミィ」
「それは、ヒミツデース。アハハハハハハハッ…」
 真夏の太陽を思わせるようなレミィの笑いにつられたのか、俺まで何か嬉しくなってくる。
「くっくっくっく…はーはっはっはっはっ…」

「おい、レミィ。寒いだろ…缶ジュースでも飲むか?」
「ウン!…でもアタシお金持ってないヨ」
「バーロー、それぐらいおごってやるって」
「ホント!?やさしいネ、ヒロユキー!!」
 加速をつけて、レミィが背中におぶさってくる。背中に当たる胸の感触に内心ドキドキしな
がらも、子供みたいなレミィをちょっと愛しく感じていた。

 …それにしてもレミィはここで、何をしてたんだろう?………まっ、いっか!

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 えっ?他のキャラと扱いが違うって?いえ、そんなつもりは…
 久々野さん、ログ増やしちゃってすみませんです。…どうかお手柔らかに。