まにひとりひと 第五章「あの日のあと・試練の刻」 1/2 投稿者:無口の人


 あいや〜、無口の人です。なんか一章分抜けたけど、気にしないでね。
(ドッペルが書いてたけど…)<ハムスターHPのネタ
 あと、長くてごめんなさい。ダークものはちょっと…という人は、読み飛ばしてね。
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【これまでのあらすじ】
  西暦2073年、巨大な隕石の衝突により人類が壊滅的な打撃を受けてから、50年余り。
  劇的な環境の変化に伴い、人々は磁気シールドに覆われたコロニー(人工都市)に住むこと
 を余儀なくされていた。

  メイドロボであることをやめ、人間に復讐するために生きる『リヒト』。
  主人なき後も、メイドロボとして暮らしている『マニヒ』。
  とあるきっかけで知り合う二人を、突如爆音が襲う。リヒトはマニヒの中に存在するもう
 一つの人格『ドクトル・ヒロ』から、自分が狙われていることを聞かされる。
  コロニー『クルス・シチ』の地下にある、旧研究所の奥へ滑り落ちる二人…

  来栖川の旧研究所に降り立ったリヒトが出会ったもの、それはいまや巨大な知的生命体と
 なったセリオこと『ミネルヴァ・セリオ』であった。
  リヒトは、ミネルヴァ・セリオを起動するドクトル・ヒロを見て、彼が自分の中枢器官を
 マニヒに移植したことを知る。さらに、ドクトルが生体組織の産みの親だと知ったとき、リ
 ヒトは過去の悪夢に苛(さいな)まれ、逃げ出す。
  そんなリヒトを見ながら、ドクトルは過去に思いを馳せる。
  そう…自分がまだ『藤田浩之』であったときのことを…

  時を経てもなお、色鮮やかによみがえる記憶…
  仲間とのふれあい、家族のだんらん、研究のよろこび…すべての事がうまくいっているよ
 うに思えていた。
  『マルチ』に成長する身体を与えたい…。そんな思いから始めた生体組織の研究は、順調
 に進んでいた。
  だが、運命の糸を紡ぐ女神は、ときに残酷である。娘の『ひかり』と演劇鑑賞に出かけた
 浩之を、突然の暴風が襲う。ひかりを守ろうとして、鉄骨をその身に受けた浩之は気を失う。

  …長い旅が始まろうとしていた…浩之の…そして、ひかりの…


【西暦2022年 12月25日 来栖川エレクトロニクス ジオフロント研究所】

 ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…
 規則正しい電子音に、眠りの世界から呼び戻される。

 ここは、どこだ?俺は…助かったのだろうか?
 身体を起こそうとする………動かない!!腕が…脚が…指が…そこにあるはずのものが…
「…はふっ…あふっ…」
 自分では、喋ったつもりだったが、俺の口から発せられたのは…空気の抜けるような音だけだった。
「…はふっ…くはっ…くふっ、ふはっ…はふっ…くふっ…」
 くそっ!
「まだ、あまり無理をしないほうがいいですよ」
 !!…その声は、長瀬さんか?教えてくれ、俺はどうしちまったんだ!

 フゥ…と、一息ついた後、長瀬さんは話し始めた。
「二日程前、地球に巨大な隕石が落下しましてね。今、地上は酷い有り様です。どうやら、衛
生回線がほとんど使えなかったのも、この情報を隠蔽(いんぺい)するためだったようですね。
もちろん政府も、対策を講じました。サテライトレーザーを使用したんです。その結果、隕石
は分断され、人類滅亡という最悪のシナリオは回避されましたが、被害が世界中に広がってし
まいました。サテライトレーザーの誤射も、各地で起こったようです。………藤田君、君はそ
の誤射の一つに巻き込まれて、致命的な傷を負ってしまったのです…」
 サテライトレーザー?誤射?
 あのときの閃光が、そうだったというのか?

「……………」
 暫(しば)しの沈黙の後、長瀬さんは続けた。
「藤田君…どうか落ち着いて聞いてください。君は…いや、君の身体は瀕死の状態にありまし
た。それゆえ、私は君の中枢器官を、生体組織でコーティングして別な身体へと移植しました」
 !!!!!
「藤田君…私を怨(うら)んでもらってかまわない………その身体は…HMX−12型、かつて
『マルチ』と呼ばれていた身体です」

 なんだって!?
 よく…わからない………これは…夢か?
 ……………あかり…はやく俺を起こしに来てくれ…

 …夢の…中の…長瀬さんは…喋りつづける…
「…幸いにも、マルチの意識そのものは残すことができました。ですが…彼女の記憶は、その
ほとんどが失われてしまいました。バックアップを残せればよかったのですが、残念ながら複
雑化した意識を保存することに関して、現代の科学はあまりに未熟なのです…」
 学習型のマルチにとって…記憶は、自己そのもの…。記憶を失うということは、存在の消失
と同義だ。
 マルチがいなくなるなんて………これが夢でよかった…

 ぼやけていた視界が、徐々にはっきりしてくる…
 横たわる俺を覗きこむ初老の男…それは、長瀬さんだった…リアルな映像だ…
 これは…これは…まさかそんな…
「彼女は生まれ変わったのです。つらいですが…そう思ってください。君が生き延びることが、
彼女の願いだったのですから…」
 これは…これは…これは…

 コレハ…ゲンジツダ!ゲンジツダ…ゲンジツダ…ゲンジツダ…ジツダ…ジツダ…ツダ…ダ…

「彼女には、新しい名前をつけました。それは…」
 もはや、長瀬さんの言葉は耳に入らなかった。

 俺は………何故…生きているんだ………マルチを犠牲にしてまで…
 俺が………俺が…マルチを…ああぁ…あああああアァァァあぁあぁあぁああ〜〜〜〜〜

「はっく、はふっはふっ…くはっふはっふはっ…はふはふはふ…くはっふはっふはっふはっ…
ふはっくふっ…はっふ…はっふ…は〜〜〜〜〜〜〜〜」
 身体が小刻みに震える。
「精神パルス、不整。自我崩壊が始まっています!」
「いかん!セリオ、AMDS(人工精神破壊システム)精密投射」
「はい、スタンバイAMDS…ファイア!」

 一瞬、まばゆい光につつまれた気がした…再び…意識が薄れていく…
 …どこからか、声が聞こえたような気がした…
「藤田君…人は辛いときにしか…成長しない…だから…強く…生きるのです」

                                   2/2へつづく
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コウモリだけ〜が知っている ハハハハハハハハッ モア・ベターよ

 は〜い、蝙蝠のおばちゃまよ。今回ご紹介するSSは、『ワルチの話』というお話なの。作
者は、鈴木Rose静さんという薔薇の似合うダンディなおじさまなの。

 このお話はね、他人を拒むことを運命づけられたメイドロボと、純真無垢な心優しき少年の
心温まる愛情の物語なの。閉ざされた心がやさしく開かれていく様子に、おばちゃまはジンジ
ンきちゃったわ。

 一途な想いは、必ず届く日が来る…そんなことを考えさせてくれるこのお話は、モア・ベタ
ーよ。テレビの前のみんなも是非チェックしてみてはいかがかしら。えっとね、放送日時は、
『12月02日(火)01時33分47秒』からなのね。それでは、ごきげんよう〜。バサバサバサッ…