射手座に願いをかけて 投稿者:無口の人
 お願いです。どうか、あかりファンの方は読み飛ばしてください…ごっ、後生ですから〜
 あかりシナリオのパロです。未プレーの方もどうか読み飛ばしてくださいね(^^;
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 日曜日。オレはあかりに連れられて、美術館にやってきた。なんでも好きな画家の個展らし
いが……あかりのヤツにこんな趣味があったとはな。
 …………。
 口実…なんてことはねえよな。まっ、傍から見ればデートしている恋人どうし……に見える
のかな。
 オレとあかりは、二人して示し合わせたように一枚の絵画の前で立ち止まった。それは大勢
の天使が描かれた縦3メートル、横5メートル程の結構大きな作品。
「綺麗な翼だよなぁ」
「…浩之ちゃんもそう思う?」
「そりゃな。男ってのは、やっぱ翼に憧れるもんだしな」
「そうなの?」
「なかにはシッポ好きってヤツもいるけど、そんなヤツでもやっぱ、綺麗な翼にはグッとくる
もんだ」
「ふうん…」
 自分の肩甲骨を触りながら、あかりはぎこちなくうなずいた。

 次の日。
 ピピピピ…。
 カチッ。
 ちょうど、目覚ましが鳴ると同時に目が覚めた。
 ベッドを降りて、大きく伸びをする。
 うう〜〜〜ん。
 なんだか、妙にスッキリした気分。
 窓の外が、清々しい天気だからかもしれない。
 トーストとコーヒーで簡単な朝食を終え、テレビを消して居間を出る。
「行って来まーす」
 誰もいない家に向かってそう言うと、オレは玄関を出て鍵を掛けた。

 いつもと同じ時間。
 いつもと同じ景色。
 パカパッ、パカパッ、パカパッ、パカパッ、パカパッ…
 そして、いつも通り、後ろからあかりが駆けてきて……って、『パカパッ』!?
「おはよう、浩之ちゃん」
「あっ、あかり!?」
 あかりを見るなり、オレは、素っ頓狂な声を上げてしまった。
 …だって、あかりのヤツ、躰(からだ)が――。
「お前、その躰…」
「えへへっ、どうかな?」
 照れながら苦笑し、はにかむあかり。
「…躰、変えたのか?」
 見れば一目瞭然のことを、オレは口にして訊いた。…いや、頭が現実を拒否していた。
「うん。ちょっと今朝、早起きして…」
 …そういう問題か?
 背中から生える馴れない翼を触りながら、あかりは恥ずかしそうに微笑んだ。
 眩しい陽射しの中、見慣れないあかりの蹄(ひづめ)が、パカパカと音を奏でていた。
 なんだか、あかりがあかりじゃないように思えた。…当然か?
 目の前にいるのは、いつものあの、押しに弱くて、ちょっと鈍くさいオレの幼なじみじゃな
くて、半人半馬のケンタウロスにペガサスの翼をくっつけたような、街中で初めて出会ったら
『逃げる』を選択してしまうようなモンスターだった。
 思わず、本当にあかりか、と馬鹿な…いや真っ当なことを訊ねそうになる。

「ちょっとヘンかな…?」
「い、いや…(かなりだ…)」
「(尻尾の)リボンは、やめたほうがいいと思う?」
「い、いや…(根本的におかしいぞ)」
「もっと他の躰がいいかなあ?」
「さあ…(想像したくないな)」
「…どうしたの、浩之ちゃん?」
「べつに…」
 オレは目を逸らし、コホッと、咳払いした。
 あかりを目の前にして、こんなに動揺するなんて、初めてのことなんじゃないだろうか。
「……」
 恐怖に凍り付いてしまったオレを見て、あかりは、少し不安げな表情になった。
 そして、小さな声で
「…前のほうが、よかった?」
 と、訊いた。
「…あ、い、いや」
 オレは戸惑いを隠せない。
 似合っている、似合っていないという次元の問題ではないと思う。
 …ただただ、自分の知らないあかりがそこにいるという恐怖感に、どう対処していいか判ら
ないのだ。
 ――あかりはあかりに決まってるじゃないか。
 そう自分に言い聞かせる自分が、物悲しい。
「やっぱり、もとに戻そうか?」
 あかりは上目づかいにオレを見ながら、ぎこちなく微笑んだ。
 その仕種は、いつもの、オレのよく知っているあかりのものだった。もっとも、いつもは二
本足だったが。
 …やっぱりこいつは、あかりじゃないか。
 そんな理不尽なことを、理屈抜きではっきり認識できた瞬間、オレは狂気という世界の扉が
開いていくのを心地よく受け止めることができた。

「いや、その方が似合ってるぜ」
 オレは落ち着いた笑顔でそう言えた。
「…ほんと?」
「ああ、似合ってる。なんだか、いつものあかりじゃないみたいでさ、ちょっと動揺しちまっ
たぜ」
「またまた〜、そんなこと言って〜」
 …本当だぞ、あかり。


「よかったぁ…」
 にっこり微笑んで、あかりが言った。
「浩之ちゃんがそう言うんなら、しばらくこの躰でいるね」
「…………(マジ?)」
 そんなあかりの笑顔は、いつになく眩しく見えた。

「じゃあ、浩之ちゃん。背中に乗って」
「いいのか?」
「…うん。学校までひとっ飛びだよ」
「そうか? わりぃな…」
 パカパッ、パカパッ、パカパッ、パカパッ、ヒュ〜〜〜ン。

 母さん、どうやらオレは、間違った世界にきてしまったみたいです…。

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 とうとう、御三家にも手を出してしまいました…。ありがちだから、ネタがかぶってたらご
めんなさいですぅ。
 どうして、年度末ってやることがいっぱいあるんだろう。ごめんなさい、レスパスですぅぅ。
 連載は…うぅ、ごめんなさい…うぅ。

>久々野さん
 デンパマンの人気投票……柳川さんに1/2票ですぅ……がくっ。